東京競馬場を舞台とした5週連続のGIシリーズも、残すところ安田記念(6月3日/東京・芝1600m)のみとなった。

 これまで東京で行なわれた4つのGIのうち、NHKマイルC(5月6日/東京・芝1600m)が単勝12.8倍のケイアイノーテック、ヴィクトリアマイル(5月13日/東京・芝1600m)が同19.4倍のジュールポレール、日本ダービー(5月27日/東京・芝2400m)が同12.5倍のワグネリアンと、3つのレースで単勝10倍以上の馬が勝利。しかも、そのうち2戦が今回と同じマイル戦とあって、安田記念も波乱ムードが膨らんでいる。

 出走メンバーは、かなり豪華な顔ぶれがそろった。日刊スポーツの太田尚樹記者が語る。

「今年の安田記念は、中距離、マイル、スプリントと各距離の”王者”が名を連ね、トップクラスの牝馬に、香港馬まで加わって『異種格闘技戦』といった趣(おもむき)を感じます。適性と能力差の見極めがカギになるでしょう」

 確かに今回は、GI大阪杯(4月1日/阪神・芝2000m)の覇者スワーヴリチャード(牡4歳)に、昨年のマイルCS(京都・芝1600m)の勝ち馬ペルシアンナイト(牡4歳)、そして昨年、一昨年のスプリンターズS(中山・芝1200m)を制したレッドファルクス(牡7歳)と、各距離のチャンピンオンが集結。さらに、アエロリット(牝4歳)、サトノアレス(牡4歳)、リアルスティール(牡6歳)、レーヌミノル(牝4歳)と、GI馬(※海外も含む)は7頭にも上る。

 そのうえ、各路線で結果を出してきた勢いのある上がり馬も加わって、ハイレベルかつ熾烈な争いになることは必至。実績馬同士の組み合わせであっても、人気の盲点をつけば、高配当をゲットする可能性は大いにありそうだ。

 好メンバーがそろうなか、人気を集めそうなのは、前走の大阪杯で「苦手」と言われる右回りを克服し、初のGIタイトルを手にしたスワーヴリチャードだ。得意の東京コースに変わって、さらなる前進が見込まれる。

 だが、太田記者はこの上昇一途の4歳馬に疑問の目を向ける。

「スワーヴリチャードの能力の高さは疑いようがありません。4戦4連対と好相性の舞台を狙っての参戦で、同馬を管理する庄野靖志調教師も『前走でも後半1000mを56秒台で走れている。その脚力を生かせれば』と前向きな見通しを持っています。

 ただ、今回は初のマイル戦。ゲートの速い馬ではないですし、流れに乗れるかどうか、という不安があります。マイル戦では、前走のような捲(まく)る競馬も難しいですから、適性面での疑問は拭いきれません。

 ちなみに、前走が2000mのレースだった馬は最近10年で12頭出走して、2009年のディープスカイと2013年のショウナンマイティの2着が最高。イメージほど、成績はよくありません」

 翻(ひるがえ)って、このスワーヴリチャードを含めて、8頭が出走する「4歳勢の力関係の見定めがポイント」と言うのは、スポーツ報知の坂本達洋記者。現に、8頭のうち5頭がGI馬で、残る3頭もそれらと遜色のない実力の持ち主だ。

「初距離のマイルに矛先を向けてきたスワーヴリチャードが、混戦に一層拍車かける存在となっています。ただ、大阪杯の勝利で現役屈指の力があることは明白ですが、はたしてマイルの流れにうまく対応できるかどうか、わかりませんからね。その点に目を向けると、同じ大阪杯2着からここに臨むペルシアンナイトのほうが、マイル戦での実績から信頼は置けますよね。

 また、充実著しい馬を挙げれば、前走のマイラーズC(4月22日/京都・芝1600m)でコースレコードをマークして快勝したサングレーザー(牡4歳)。目新しい存在がいない5歳以上の顔ぶれを見ても、レース検討においては4歳勢を中心に見て、その実力比較に力を注ぐべきでしょう」

 まずは、馬券予想における要点をそれぞれ示してくれた太田記者と坂本記者。そこから、太田記者はヴィクトリアマイルで2着となったリスグラシュー(牝4歳)を穴馬として挙げた。

「前走のヴィクトリアマイルでは、上がり32秒9の末脚を駆使して惜しくもハナ差の2着。管理する矢作芳人調教師は『枠(8枠16番)が響いた』と嘆いていました。

 東京マイルでは3戦3連対と抜群の相性ですし、3走前の東京新聞杯(2月4日/東京・芝1600m)では、牡馬相手に早め先頭で押し切る、強い内容で勝っています。今回もスローペース濃厚で、瞬発力勝負になりそうですから、この馬の決め手が生きるのではないか、と見ています」

 坂本記者も、同じく4歳牝馬を穴馬に推奨する。前走ヴィクトリアマイルでは4着だったアエロリットだ。


強豪牡馬相手でも一発の期待が膨らむアエロリット

「前走のアエロリットは、運がありませんでした。道中はイメージどおりに好位で運びながら、直線ではジリジリとしか伸びず、いつものようにスピードに乗った走りが見られませんでした。というのも、スタート直後に左前脚を落鉄したため。やはり、やや重の柔らかい馬場では、その影響が大きかったと思います。

 しかも、この馬は今年に入って2戦連続で馬体重が500kgを超えています。加えて、もともと跳びが大きい馬なので、パンパンの良馬場でこそ、持ち味が生きるタイプ。前走でひと息だったのは仕方がありません。

 また、『ヴィクトリアマイルのあと、疲れが残るようだったら不安もあったが、そこで走り切っていない感じなので』と菊沢隆徳調教師。ダメージはなく、今回のレースを迎えられるのはプラスでしょう。だいたい前走は不利があって、勝ち馬とコンマ1秒差の4着。人気が落ちるようなら、牡馬相手でも一発ありますよ」

 アエロリットについては、太田記者も「気になる存在」と警戒する。

「前走は、最後は上位2頭の切れ味に屈しましたが、2番手からそのまま押し切るか、という内容でした。何より、今回はペースが遅くなりそうですし、オークスやダービーの結果を見ても、今の府中は前が残りやすい馬場だと思います。展開や馬場の恩恵が受けられそうなうえ、2カ月半ぶりを叩いて状態の上積みも見込めますから、侮れない1頭と言えます」

 そして最後に、坂本記者が”大穴”として2頭の馬をピックアップ。「4歳勢が中心」としながら、展開面を踏まえて推すのは、善戦を続ける年長馬だった。

「先週からCコースとなって、日本ダービーも目黒記念も上位馬は内を突いて抜け出してきました。『馬場は荒れていても、路盤が硬くて時計が出る』という声がジョッキーからも聞かれますし、ロスなく内を回って粘り込むパターンも頭に入れておく必要があるでしょう。

 ウインガニオン(牡6歳)が逃げる展開で、隊列はすんなり決まって前半の流れは落ち着きそうです。そうなると、狙いはウインガニオンの次の位置で競馬ができる組。面白いのは、好位でレースを運ぶことができそうな、ウエスタンエクスプレス(せん6歳)とキャンベルジュニア(牡6歳)です。

 ウエスタンエクスプレスの実力は一級品。これまでも日本で結果を出している香港馬と同様、日本の馬場への適性もありそうです。日本のレースに積極的に挑んでくるサイズ調教師の”刺客”を甘く見てはいけません。

 キャンベルジュニアには前走の京王杯スプリングC(5月12日/東京・芝1400m)で、外枠で出遅れという致命的な不利がありながら、僅差の2着。内容の濃いレースを見せました。陣営によれば、今年は昨年に比べて状態がすこぶるいいとのこと。決して侮れません」

 人気薄での好走が目立つウエスタンエクスプレスに、過去10年でモーリス、ストロングリターン、リアルインパクトと3頭の勝ち馬を出している堀宣行厩舎が送り込むキャンベルジュニア。押さえておいて損はないかもしれない。

 GI5週連続開催のフィナーレは、どんな結末になるのか。望むのはもちろん、ここに挙げた4頭がビッグな配当を運んできてくれることだ。

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