まもなく、大学駅伝シーズンが開幕する。10月10日の出雲駅伝、11月7日の全日本大学駅伝、来年1月2、3日の箱根駅伝。熱いドラマを盛り上げるキーパーソンは誰なのか。注目すべき10人のランナーをピックアップして紹介する。

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田澤廉
(たざわ・れん/駒澤大/3年)

 大学1年時からチームの主軸として活躍。ルーキーイヤーは出雲3区で区間2位(区間新)、全日本7区で区間賞、箱根3区で区間3位という成績を残した。昨季は全日本の最終8区で区間賞。東海大、青学大とのアンカー決戦を制して、6年ぶりの日本一をもたらしている。

 昨年12月の日本選手権10000mで8位(27分46秒09)と健闘するも、そのダメージが箱根に影響。2区で区間7位と不満の残る走りになったが、7人抜きを演じて13年ぶりの総合優勝に貢献した。今季は5月の日本選手権10000mで日本人学生歴代2位の27分39秒21をマークして2位に入るなど、さらにパワーアップ。「学生長距離界のエース」と呼ばれる男がチーム悲願の駅伝3冠を実現させる。

鈴木芽吹
(すずき・めぶき/駒澤大/2年)

 駅伝の名門・佐久長聖高出身で、大学1年時は5000m13分43秒07、10000m28分23秒87秒をマーク。日本インカレ5000mでは3位に食い込んだ。全日本は3区を区間5位、箱根は5区を区間4位。両駅伝前は調子を崩しながらも、主要区間をしっかりと務めた。

 今季は5月の日本選手権10000mで田澤とともに優勝争いに加わり、日本人学生歴代3位の27分41秒68で3位に入った。7月のホクレン・ディスタンス網走大会5000mでは田澤、関東インカレ2部の長距離2種目で日本人トップを奪った唐澤拓海(駒澤大2年)を抑えて、日本人学生歴代9位の13分27秒83をマークしている。スピードがありながらタフで起伏にも強い。どんな区間でも任せられる最強のオールラウンダーだ。

嶋津雄大
(しまづ・ゆうだい/創価大/4年)

 暗くなると目が見えにくくなる「網膜色素変性症」という難病を抱えながら、大学で急成長。2年時の箱根は10区で区間賞(区間新)を獲得し、創価大に初めて「シード権」をもたらしただけでなく、区間賞を獲得した選手のなかで唯一ナイキ以外のシューズ(ミズノ)を履いていたことでも注目を浴びた。今年の箱根は4区を任されると、区間2位(日本人トップ)の快走でトップを奪取。創価大の往路初優勝、総合2位に大きく貢献した。

 今季は10000mで28分34秒40の自己ベストをマーク。9月の日本インカレでは10000mで6位(日本人2位)に食い込んだ。初出場となる出雲ではアンカーを、箱根は復路のエース区間である9区を熱望しているが、"ドラマを巻き起こす男"が今季も学生駅伝を盛り上げるだろう。

松山和希
(まつやま・かずき/東洋大/2年)

 学法石川高3年時の全国高校駅伝1区で区間2位。ルーキーイヤーだった昨季は5000mで自己ベストを2度塗り替えて、全日本は2区で区間7位と好走した。箱根では花の2区に抜擢されると、高速レースにしっかりと対応。日本人1年生歴代2位となる1時間7分15秒の区間4位で走破して、9位から5位に順位を押し上げた。

 今季は故障の影響でトラックシーズンは精彩を欠いたが、夏合宿では徐々に調子を上げている。主将・宮下隼人(4年)が全日本8区と箱根5区の候補に挙がるだけに、三大駅伝では前半のエース区間での活躍が期待されている。2年目の学生駅伝は周囲のペースに乗るのではなく、自ら突っ込んでいく攻めの走りを目指す。

近藤幸太郎
(こんどう・こうたろう/青山学院大/3年)

 愛知・豊川工高の出身で、高校時代は全国大会の活躍はなかったが大学で飛躍。昨季は全日本2区で区間13位に沈んだものの、箱根は7区で区間3位と好走。今季は5000mで22人が自己ベストを更新している青学大のなかでも、突出したタイムを叩き出している。4月に10000mで青学大記録の28分10秒50をマークし、5月の関東インカレは2部10000mで6位(日本人4位)。7月には5000mでも13分34秒88の青学大記録を打ち立てた。

 9月の日本インカレは5000mを制して、長距離種目では青学大初のチャンピオンに輝いた。1年時に学生駅伝で活躍した岸本大紀が完全復帰して、西久保遼が台頭するなど3年生たちが充実しているだけに、「新エース」近藤の活躍次第では"アオガク時代"が再来するかもしれない。

石原翔太郎
(いしはら・しょうたろう/東海大/2年)

 倉敷高3年時の全国高校駅伝1区で区間5位と好走。東海大ではルーキーイヤーから駅伝でインパクトのある活躍を見せた。昨年、全日本4区で区間賞を奪うと、順大・塩尻和也(現・富士通)が保持してきた区間記録を28秒も更新。箱根は3区で区間賞の走りでトップに立っている。

 今季はトラック種目で大躍進。5月に5000mで13分30秒98(U20日本歴代3位)をマークすると、関東インカレの1部10000mではケニア人留学生と真っ向勝負を演じて、28分05秒91(U20日本歴代2位)で3位(日本人トップ)に食い込んだ。6月に故障があったものの、夏合宿からチーム練習に復帰。駅伝シーズンでもエースとしての走りを披露してくれるだろう。東海大は2年生世代に好選手がそろうだけに近未来が楽しみだ。

中谷雄飛
(なかや・ゆうひ/早稲田大/4年)

 佐久長聖高時代は3年時にインターハイ5000mと国体少年A5000mで日本人トップ。全国高校駅伝1区で区間賞を獲得するなど"世代トップ"に君臨した。早大進学後も1年時から主力として活躍。学生駅伝にはフル参戦している。1・2年時の箱根はともに1区を任されて、区間4位と同6位。昨季は全日本の3区でトップを奪い、区間賞を獲得した。チームは6区の途中までトップをひた走っている。

 昨年12月の日本選手権10000mでは、同大学の太田直希(4年)と揃って27分台に突入。箱根は3区で区間6位と不発に終わったが、最後の駅伝シーズンは世代トップと名門・早稲田大のエースとしてのプライドを見せてくれるだろう。

三浦龍司
(みうら・りゅうじ/順天堂大/2年)

 3000m障害で高校記録、U20日本記録、学生記録、日本記録を保持する。今夏の東京五輪には日本の学生長距離選手として唯一出場。男子3000m障害の予選で日本記録を8分09秒92まで短縮すると、決勝では日本人初入賞(7位)の快挙を達成した。

 昨年は箱根予選会で、大迫傑が保持していたハーフマラソンのU20日本記録を更新。全日本は1区で区間賞・区間新をゲットしたが、箱根は1区で区間10位に終わった。今季は3000mで7分48秒07(日本歴代4位)のU20日本記録を樹立。7月には5000mで13分26秒78(日本人学生歴代8位、U20日本歴代2位)の好タイムをマークしている。学生ナンバーワンのスピードを学生駅伝でも爆発させる。

藤木宏太
(ふじき・こうた/國學院大/4年)

 箱根は3年連続で1区を任され、2年時は区間2位と快走し、チームは過去最高の3位と躍進した。2019年の出雲は1区で区間5位と好走してチームは初優勝。しかし同年の全日本は3区で区間12位と苦戦して、チームも6位にとどまった。藤木の走りがチームの浮沈を握っている。

 昨年の日本インカレは10000mで6位。今季は5月の関東インカレ2部10000mで自己ベストの28分10秒30をマークして5位に入るなど、実力は年々アップしている。今季の國學院大は「2年計画」の2年目。島﨑慎愛(4年)、木付琳(4年)、中西大翔(3年)も10000mで28分台前半のタイムを持つなど戦力は整っているだけに、エースが突破力のある走りを見せることができると面白い。

丹所健
(たんしょ・けん/東京国際大/3年)

 箱根は2年連続で1区を担い、区間13位と同15位。上位校と僅差でタスキをつなげて、花の2区に起用されたエースたちの快走をアシストした。昨年の全日本は2区で区間8位。13位から8位まで順位を上げている。

 今季は5000m13分46秒17、10000m28分19秒17と自己ベストを短縮。9月の日本インカレ5000mでは3位に食い込んだ。6月の全日本関東選考会は丹所とイェゴン・ヴィンセント(3年)が入った最終4組で一気に順位を上げ、トップ通過を決めている。箱根の2区と3区で区間記録を持つヴィンセントという"超大砲"がいるだけに、日本人エースが快走すれば、東京国際大がトップを走るシーンが見られるだろう。

著者:酒井政人●文 text by Sakai Masato