11月のFIFAワールドカップ(W杯)2022カタール大会に参戦するサッカー日本代表の欧州遠征が始まる。同じくカタールW杯へ出場するアメリカ代表(9月23日)、エクアドル代表(同27日)とドイツ・デュッセルドルフで対戦する。

森保一監督は今回の遠征に30人を招集。コロナ感染などのアクシデント対応も含めたリハーサルをするためだが、試合での起用法は「本番を見据えて行う」考えだ。

カタールW杯はこれまでとは違い、欧州サッカーのシーズン中に開催される異例の大会だ。直前まで各国リーグがあって本大会直前に合宿を組むことができない。今回が最終メンバー発表前最後の活動となるが、新たな選手を試す余裕はない。今回のメンバーにサプライズ招集はなく、アジア最終予選を戦ってW杯出場を勝ち取ったメンバーが中心だ。

■伊東、久保、鎌田らが躍動する攻撃陣

熾烈なポジション争いで注目を集めるのは攻撃陣だ。

絶対的エースだった大迫勇也が度重なる怪我で完全にコンディションを崩しメンバー外なり、森保体制下で大迫と並ぶ最多17ゴールを挙げて来た南野拓実がスランプに陥っているためだ。

しかし、今夏に新天地を求めた伊東純也や久保建英、堂安律らが軒並み活躍を続けているのは好材料。さらに、ビッグクラブ移籍を噂されながら残留した鎌田大地はすでに4ゴール。従来のアシスト役だけでなく、ブンデスリーガ屈指のアタッカーへも変貌を遂げており、風格が漂っている。

また、日本は本大会のグループステージ初戦で2014年のブラジルW杯優勝のドイツ、第3戦で2010年の南アフリカW杯を制したスペインと対戦する。強豪国を相手にした場合、日本が守勢に回って攻撃にかける人数が少なくなるため、これまでの日本のカギを握っていた右の伊東以外にも中央に古橋亨梧、左に三笘薫を起用するなど、スピードや個人技に優れる選手の起用は今まで以上に有効だ。

ゆえに攻撃陣の選考に関しては、組み合わせが楽しみになるポジティブな要素が多い。

■「仮想ドイツ」のアメリカ

本大会までの時間が限られる中、W杯へ出場する2カ国と対戦できる機会は貴重だ。日本としては本大会のグループステージで対戦するライバル国を見据えて戦いたい。

特にプレッシング戦術など現代サッカーが浸透しているアメリカは「仮想ドイツ」と想定できる。最新のFIFAランキングで24位の日本に対して、アメリカは14位。ドイツが11位であることを考えると、順位的にも「仮想」は成立する。W杯初戦の勝利はグループステージ突破の可能性が8割、負ければ敗退率9割と結果を大きく左右する過去のデータがあるだけに、アメリカと対戦できるメリットは大きい。

近年のアメリカにとってのドイツは、MFクリスティアン・プリシッチ(チェルシー)やジョバンニ・レイナが強豪ドルトムントでプロデビューするなど、多くの選手が活躍の場を求める国となっている。ドイツでプレーする選手が多いのは日本も共通しているが、プレミアリーグのリーズを率いるジェシー・マーシュを筆頭に指導者がドイツで活躍する例も多くなっており、サッカーのスタイルや戦術が似通って来ているのだ。

■「鉄板」だったはずの日本の守備陣に揺らぎ

そして、ここへ来て森保ジャパン発足当初からのチームコンセプト「良い守備から良い攻撃へ」の土台である守備陣全体に大きな不安が見えている。

長引く怪我からの復帰を果たした冨安健洋だが、アーセナルではレギュラーから外れている。そもそもクラブでは右SBでプレーしているため、日本の守備の要には試合勘やポジション、プレー強度など多くの懸念点がある。

右SBの酒井宏樹は今季4度の負傷離脱で満身創痍の状態だ。そして、左SBは長友佑都、中山雄太、伊藤洋輝の3つ巴の争いであり、適任者を見つけられていない。つまり、[4-3-3]システムの最終ライン全体に不安があるのだ。

吉田と冨安、酒井の3人は欧州での実績も豊富で、1年前の東京五輪にも召集された森保ジャパンの「鉄板」メンバーだ。そして、吉田と冨安のCBコンビがW杯アジア最終予選で負傷欠場した際は、板倉滉(ボルシア・メンヘングラードバッハ)がその穴を埋めた。

■ブンデス屈指のDF板倉がW杯欠場の可能性

板倉はブンデスリーガ1部のボルシアMGに完全移籍し、今季はすでに『キッカー』紙で2度のマン・オブ・ザ・マッチとベストイレブンに選出。第4節終了時には大衆紙『ビルト』の平均採点でリーグ全体のトップとなっていた。守備面での働きはもちろんのこと、攻撃面での評価も高い現代的なDFだ。

第6節終了現在、『キッカー』紙の平均採点では、吉田「3.83」、板倉「2.90」となっている。W杯初戦で板倉が先発しなければ、ドイツ人は喜ぶだろう。しかし、「新DFリーダー誕生か?」と思われた矢先、板倉は左膝内側側副靱帯を部分断裂。全治6〜8週間の怪我でW杯出場が危ぶまれている。板倉は吉田、冨安に代わるCBとしてだけでなく、ボランチでもプレーできる。欠場となると、森保監督も頭が痛いだろう。

■伊藤の抜擢、主将交代の可能性

ただし、ドイツでは3バック時の左CBや4バック時の左SBでプレーする伊藤も今季フル出場を続けている。特にリーグ最多本数を記録する彼のロングパスに注目が集まっており、日本代表でも6月のパラグアイ戦で先制点の起点になった。『キッカー』紙の採点でも伊藤は「3.50」と、吉田より評価も高い。

板倉が欠場する欧州遠征では冨安をCBの軸とする流れとなりそうだが、そのパートナーや適任者不在の左SBには伊藤を推したい。

同じドイツではMF遠藤航が2季連続で1対1の局面での競り合い「デュエル」の勝利回数でリーグトップを記録。「デュエル王」と称される歴戦の猛者も誕生している。

遠藤は所属するシュツットガルトでも主将を担っている。吉田に代わって日本代表の新たな主将を担う可能性もあるのではないか。日本には2010年の南アフリカW杯直前に長谷部誠を新たな主将に抜擢した過去もあるのだ。

今回の欧州遠征では、「仮想ドイツ」のアメリカ戦でゲームプランなどを徹底的に検証し、エクアドル戦も含めた2試合で各ポジションでの切磋琢磨によって、さらにチーム力を引き上げられるかが焦点となる。

文●新垣博之(しんがき・ひろゆき)