FIFAワールドカップ2022カタール大会が開幕する。

4年に1度のサッカーの祭典は、開催国カタールが南米の伏兵エクアドルを相手にするカードで日本時間20日25時にキックオフされる。

ここではサッカーの枠を超えたスポーツ界最大のコンテンツを過去全21大会の記録から振り返り、「W杯七不思議」をピックアップ。W杯にまつまる有名なトリビアとジンクスから、優勝国予想のシミュレーションした。

過去全21大会から見るべき「W杯七不思議」 1. 出場枠の増加で優勝争いも変化 2. 開催国は優勝できない 3. 新王者が誕生しにくい 4. 前回王者は優勝できない 5. 欧州大陸以外の開催では南米勢圧倒的有利 6. 前年度バロンドール受賞者は優勝できない 7. 新王者誕生12年周期説

■出場枠拡大が続くも、優勝は8大国のみ

1930年に第1回ウルグアイ大会からスタートしたW杯は、第2次世界大戦前後は開催がなく、1950年の第4回ブラジル大会までは世界情勢も含めた理由で辞退国も出ていたため、出場国数も安定しなかった。1954年の第5回スイス大会から1978年の第11回アルゼンチン大会までは出場枠16のフォーマットが続いたが、その後は段階的に増やしている。「出場枠の増加で優勝争いも変化」しているため、分けて考える必要がある。

その第11回大会までで開催国が5回も優勝している。準優勝2回、3位も1回となっており、優勝率が約46%、3位以上が約64%だ。「サッカーの母国」イングランドは1966年に地元開催の第8回大会が唯一の優勝であるように、W杯の招致は優勝の大きなアドバンテージになっていた。

ところが、1982年の第12回スペイン大会から出場枠を24に増やして以降、開催国の優勝は1998年のフランスのみ。このフランス大会からは出場枠が32まで拡大されたため、24カ国制では開催国の優勝はなかった。よって、出場枠を拡大して以降の開催国優勝率は1割。「開催国は優勝できない」傾向にある。

ちなみに、フランス大会では日本が初出場。出場枠拡大の恩恵を受けた形だが、今大会まで7大会連続出場となっている。ただ、次回大会からは48カ国へとさらに出場枠が拡大されるため、大会自体のクオリティの低下が危惧されている。

参加国数を拡大させてきたものの、W杯の優勝国はいまだ8カ国しか誕生していない。最多は5回のブラジルで、次点が4回のイタリアと(西)ドイツ。以降は2回のウルグアイ、アルゼンチン、フランスと続き、同1回のイングランド、スペインとなっている。いずれも世界中が認めるサッカー大国ばかり。出場の門戸を拡げても、「新王者が誕生しにくい」ことで、大会の権威を維持している。

振り返るべきは出場枠が16だった時代にしか優勝できていない国が存在すること。ウルグアイとイングランドはこれに当たり、イタリアは今大会の欧州予選で敗退して未出場。よって、今大会の優勝争いはブラジル、アルゼンチン、ドイツ、フランス、スペインの5カ国に絞ることができる。

■キーワードは、「連覇」「開催地」「バロンドール」

W杯は1962年のブラジル以降、連覇がない。それどころか直近5大会での前回王者は4カ国もグループリーグ敗退に終わっている。2002年日韓大会の王者ブラジルが2006年のドイツ大会でベスト8に残ったのが最高成績だ。

歴代最多優勝国である「サッカー王国」ブラジルにとってのベスト8は失態。フランスやイタリア、スペイン、ドイツのような大国がGL敗退に終わるのは「前回王者は優勝できない」ジンクスゆえだ。このジンクスにより、前回ロシア大会の覇者フランスが優勝争いから脱落する。

今大会で日本とGLで対戦するドイツとスペインは残る。日本がグループ突破すれば、どちらかの優勝も消えるので、果たしていかに。

さらに、ここでは「欧州大陸以外の開催では南米勢圧倒的有利」を挙げたい。W杯のトロフィーは過去21大会中、欧州勢が12回、南米勢が9回と2大大陸で分け合って来た。しかし、欧州勢の優勝12回中の10回は欧州で開催された大会であるのに対して、南米勢は欧州以外で7回も制覇しているのは大きな違い。このジンクスにより、ドイツとスペインが消える。

ジンクスで残されるのは、ブラジルとアルゼンチンの南米2強。

過去のW杯前年バロンドール受賞者とW杯本大会の成績

ここで「前年度バロンドール受賞者は優勝できない」を忘れてはいけない。

「バロンドール」とは、世界で最も権威のあるフランスの老舗専門誌「フランス・フットボール」が毎年選出している年間世界最優秀選手賞のことだが、昨年度はアルゼンチンのエースであるリオネル・メッシが受賞。これまでW杯前年度のバロンドール受賞者のいる国は1度も優勝できていないため、このジンクスは最も有効だ。

よって今大会は、ブラジルの優勝で幕を閉じる。これがトリビアとジンクスによる予想だ。

■「新王者誕生」か…

しかし、最後に気になるジンクスを紹介したい。いったんは否定しながらも、「新王者誕生12年周期説」だ。

前述のように1998年のフランス大会から出場枠が32となったが、そのフランス大会でフランスが初優勝。12年後の2010年南アフリカ大会ではスペインが初優勝し、今回がその12年後になる。出場枠32も最後となるため、今大会は初優勝国が誕生しそうな雰囲気がある。

フランスやスペインは自他ともに認めるサッカー大国であるため、新王者も大国から生まれる可能性が高い。とはいえ、欧州で「5大リーグ」と呼ばれる国はすでに優勝しているので、それに準ずるポルトガルかオランダが初優勝国候補となる。オランダは前回大会の欧州予選敗退で出場を逃しているが、1998年のフランスもその前回大会出場を逃している。

オランダは戦術的な現代サッカーの起源である「トータルフットボール」の発明を始め、攻撃サッカーの発展を王国ブラジルでも評価されるが、毎回守備陣に問題があると指摘され続けて来た。今大会は近年の「世界最強センターバック」と評されるフィルジル・ファン・ダイクマタイス・デ・リフトを擁するため、課題も克服。

また、ポルトガルもクリスティアーノ・ロナウドは今回が最後のW杯となる公算が高く、ブルーノ・フェルナンデスルーベン・ディアスといった攻守にタレントを擁しており、初優勝をもぎ取るというシナリオも残る。

本命はブラジル、対抗する新興勢力がオランダ、ポルトガル。「W杯七不思議」は今大会でも継続となるのか、この観点からも興味深いカタールW杯となりそうだ。

文●新垣博之(しんがき・ひろゆき)