昨季まで2年間オリックス・バファローズでプレーしたアダム・ジョーンズが米メディア『プレイヤーズ・トリビューン』に手記を寄稿。日本での生活やシアトル・マリナーズ時代にチームメートだったイチローとの逸話などを披露した。その上で、現在無所属の36歳は、このまま現役引退となる可能性を示唆した。

■日本シリーズでの代打本塁打は「一生忘れない」

「人生の第二章」というタイトルで掲載された手記は、2021年ヤクルトとの日本シリーズから始まる。

「考えれば考えるほど、プロ野球選手としての最後のスイングが、日本でのひと振りになるかもしれないなんて、自分らしいと思う。しかも、何もかもが完璧だった。あの瞬間は一生忘れない」とつづったジョーンズ。

その瞬間とは、日本シリーズの第5戦。東京ヤクルト・スワローズのスコット・マクガフから放った代打決勝アーチのこと。スタンドには夫人と2人の息子が来場していたそうで、「ベンチに戻るとスタンドで叫ぶ妻の声が聞こえた。子供たちも大はしゃぎ。チームメートとハイタッチを交わし終えると、家族はダッグアウト近くまで降りて来ていた。もう大興奮。飛び跳ね、叫びまくっていた」と会心の一撃を振り返った。

2006年にマリナーズでメジャーデビューしたジョーンズは、メジャーで計14年プレー。1823試合に出場し、1939安打、打率.277、282本塁打、945打点、97盗塁を記録。11年から7年連続で25本塁打以上を放ち、13年にはシルバースラッガー賞を受賞。さらに中堅手としてゴールドグラブ賞を4度受賞し、オールスター・ゲームにも5度選出されるなど輝かしい実績を残した。

それでも、ジョーンズは「どの瞬間もオリックス時代を上回ることはない」と断言。その理由として、「人生で一度きりの冒険を妻と子供たちと経験できたからで、間違いなく生涯に残る時間を過ごせたからだ」とした。手記には、日本シリーズでの本塁打だけでなく、コロナ禍を家族で団結し乗り越えたこと、メジャーと異なる練習に戸惑いつつも順応したこと、家族(特に子供たち)が日本での生活を心から堪能した様子が書かれており、それらを踏まえて「オリックス時代を上回ることはない」という思いに至ったようだ。

■イチローからは「俺に突進してくるなよ」

また、イチローとの交流も回想。06年のマリナーズ時代、ジョーンズはポジションを遊撃から中堅に移したが、ちょうどその時、右翼を守っていたのがイチロー。「キャンプ開始から数日の練習はキツかった。捕球やスローイングに苦しんだからではない。外野陣の中心である中堅手として、イチローに声掛けしないといけなかったから。でも、できなかった」と当時を振り返り、結局は最高の外野手であるイチローにすべてを任せてしまっていたという。しかし、ある時イチローにグラウンドの脇へ連れて行かられ、「あのな。捕れるなら声掛けしてくれよ」と言われたという。

その一言で心が楽になったが、さらにイチローは「お願いだから俺に向かって突進してくるなよ。俺にぶつかってくるなよ、OK?」と続けたという。ジョーンズは笑ってうなずき、2人の間に信頼関係が生まれた日を「万事解決した瞬間」とした。

現役続行を希望しつつも、「ヤクルト戦の本塁打が最後になるならそれでもいい」としたジョーンズ。日本を愛した男が、ユニフォームを脱ぐ日は迫っているようだ。

文・SPREAD編集部