卓球のパリ五輪第6回選考会「2023 全農CUP 大阪大会」が25日、26日、大阪府のAsueアリーナ大阪(大阪市中央体育館)で行われた。熾烈を極めた女子で優勝を果たしたのが張本美和である。

■伊藤のサーブに苦しむも対応

今大会は来年1月開催の全日本選手権と並び、パリ五輪選考メンバー決定の重要な位置を占めたなか行われた。なかでも女子は2位の平野美宇、3位の伊藤美誠によるシングルス2位争いは最大の注目となっていた。

そんななか存在感を示したのが張本。大会前までの選考ランキングでは6位に位置していた張本だが、国際大会では急速に力をつけ日進月歩で成長を続ける。21日発表時点の世界ランキングでは5位の早田ひな、10位の伊藤美誠に次ぐ14位。日本勢3番手につける15歳はもはやダークホースとは呼べないものに変わりつつあった。

その評判通りの姿を見せ、1回戦では日本有数のカットマン橋本帆乃香相手に粘られる時間もあったが4−1で勝利。次に待ち構えたのが選考ランキング3位の伊藤。準々決勝で迎えた戦いで、序盤は伊藤に押し込まれる展開もあった。伊藤のサービスに対し、「最初は優位に立てなかった」と語った張本だが、「4ゲーム目からは自分の攻めるプレーも活かせたし、相手に打たせて取るという戦術から通用した」と中盤以降に持ち直しての逆転勝利を振り返った。

■9度目の挑戦で初勝利

準決勝では長﨑美柚も撃破した張本を決勝で待ち構えたのが選考ランキング首位の早田ひな。今や日本のエースと呼べる存在で、来年のパリ五輪でもメダル候補に挙がる。早田に対し、張本はこれまで選考会や国際大会で対戦し、8戦8敗。「唯一対戦した選手のなかで勝っていない。私を超える存在が早田選手と思う」と本人も語っていたように、超えられない壁として張本の前に立ちはだかっていた。

今大会の早田はパリ五輪出場を実質手中に収めていた中でエントリー。中国トップ3への勝利と世界一を狙い、「これまでの読みや駆け引きを捨てて勝負にいく」「今後もしかしたら負けていく回数も増えるかもしれない」と、リスクも承知の上新たなレベル到達に向けスタイルチェンジを図っていたなかでの勝負となった。

そんな試合で張本は、第1ゲームを8−11で落とす展開に。これまでの早田との違いについて、「巻き込み系でいつもはあまり出さないサーブが来た」と語っていた張本だが、第2、3ゲームを取り返しリズムに乗る。

優勝を掴むにあたりカギを握ったのがデュースでの攻防。早田はフォアドライブ中心とした技術に加え、僅差の競り合いに強いメンタルも持ち味。実際に第4ゲームは10−12で早田にゲームを奪われた張本だが、続く第5ゲームでも訪れたデュースで奮起。「(デュースを取れたのが)勝因のひとつ。気持ちの面で成長した」と述べたように意地を見せ、14−12で奪いきる。そのまま第6ゲームも勝ち取り優勝。「本当に嬉しいですし、今後の自信にもつながる」と、9戦目にしての早田超えとタイトル奪取に素直に喜びを表した。

■五輪3人目選出の可能性は

伊藤、早田という卓球界をけん引する“黄金世代”を撃破しての優勝を成し遂げた張本は、パリ五輪選考ポイントでも100点を加算して5位にランクイン。12月には名古屋で行われる「WTT女子ファイナルズ」にも出場する張本は、来年1月の全日本選手権でも飛躍が期待される。団体戦に出場するパリ五輪3人目は協会推薦で決まることもあり、成長を加速させる張本が候補に挙がってくる可能性もある。

五輪については「順調にいけば平野選手か伊藤選手に可能性がある」と意識せずに「1個1個ランキングを上げたい気持ちがある」と目の前一戦一戦の勝利と、自分の成績向上に意識を集中させている。日本トップにも通用する戦術眼と冷静さを兼ね備える15歳がここからさらなる経験を積み、世界でも有数の選手に成長していくかは対中国を掲げる日本女子陣のなかでもカギを握ってくる。

選考レース終盤で迎えた第6回選考会で、パリ五輪シングルス出場を狙う伊藤、鬼門であった早田も倒して優勝してみせた張本。大阪の地で絶大なインパクトを放った15歳がここからどのような成長曲線を描き、将来の日本を背負っていくのか。「一つひとつの質を上げて戦術が悪くてもラリーに持ち込む。どんな状況でも得点につなげられるようなものを見つけていきたい」と語った張本のさらなる飛躍には期待がかかる。

取材・文●井本佳孝(SPREAD編集部)