「一刻者〈白〉ハイボール」「魂の芋」「白岳KAORU」「白金乃麦」「獺祭 焼酎」

芋焼酎と言えば、かつてはいわゆるおやじの飲み物という位置づけで、特徴的な芋臭さこそが魅力だった。その後の焼酎ブームを経て、現在では女性でも飲みやすい、すっきりとした芋焼酎が主流となっているが、「物足りない」という昔ながらの焼酎ユーザーも少なくない。

たとえば薩摩酒造(鹿児島県枕崎市)は2017年に、現在の飲みやすい芋焼酎の流れに逆行するように、無濾過の本格芋焼酎「芋屋波平」を福岡エリアで限定発売し好評を博している。その一方で、トレンドとなりつつあるのは、従来の焼酎にはなかった日本酒の吟醸酒のようなライチやメロンなどと表現される香りを持った焼酎だ。今年の新商品を見ても、芋、麦、米の各原料で、香りを切り口とした“フルーティー焼酎”が目立っている。

香りの差別化で先鞭をつけたのは、宝酒造(京都市伏見区)が昨年6月に限定発売した全量芋焼酎「一刻者」〈白〉。芋麹を含めて原材料は白芋(ジョイホワイト)100%の本格焼酎だ。希少な白芋原料と手間暇かけた造りによって、柑橘系の爽やかな香りが広がる。今年も香りを訴求したデザインにリニューアルした上で、夏季限定で発売している。また、同商品は香りが際立つ炭酸割りの飲み方提案を行っているが、全量芋焼酎「一刻者〈白〉ハイボール」を新たに投入。手軽に炭酸割りを楽しむ機会の拡大を目指す。

業界に大きなインパクトを与えたのは、昨年9月に浜田酒造(鹿児島県いちき串木野市)が発売した「だいやめ〜DAIYAME〜」だろう。独自の熟成技術を用いた香熟芋で仕込むことで、ライチのような香りを実現。香料や果汁などを一切使わず、さつまいもと米麹のみでこの香りが出ていることに、試飲会でも驚かれるという。

今年の新商品でも、香りを切り口にした商品に注目だ。本坊酒造(鹿児島県鹿児島市)は本格芋焼酎「魂の芋」を新発売した。同社が初めて黄麹を使用した熟成タイプの焼酎で、白ぶどうやメロンを連想させるフルーティーな香りが特徴となっている。

高橋酒造(熊本県人吉市)は、フルーティーで華やかな吟醸香と、米由来の深みのある味わいを両立させた「白岳KAORU」を新発売する。従来の焼酎には手を出さなかった層や、日本酒の中でも人気の高い吟醸酒を好む人の引き込みを狙った商品だ。

白金酒蔵(鹿児島県姶良市)は7月1日、同社が初めて商品化する麦焼酎「白金乃麦」を新発売した。既存の麦焼酎と差別化を図るため、吟醸酵母で仕込んだ減圧蒸留の特徴ある商品を開発した。

主要原料に比べると数量は少ないが、吟醸香が豊かな酒粕を用いた酒粕焼酎も日本酒メーカーから発売されている。オエノングループの秋田県醗酵工業(秋田県湯沢市)「Black Stone」や、旭酒造(山口県岩国市)「獺祭 焼酎」、天山酒造(佐賀県小城市)「七田 吟醸酒粕焼酎」などがそうだ。近年では農口尚彦研究所(石川県小松市)が昨年の9月に単式蒸留焼酎の免許を新たに取得したほか、今年5月には「いずみ橋」の泉橋酒造も新規で免許を取得するなど、日本酒メーカーが提案する“フルーティー焼酎”の動向にも目が離せない。