大手各社の“ほうじ茶”飲料

ほうじ茶飲料が年々成長を続け、2020年の販売動向も1月〜8月累計は前年比約6%増(数量ベース)で推移している。

コロナ禍の清涼飲料市場で販売好調なカテゴリーは、炭酸水や野菜飲料などがあり、そのカギは自宅で作りにくく、健康感があり、気分転換できることが挙げられる。無糖で香りの高いほうじ茶飲料は、特に健康感や気分転換の価値で選ばれているようだ。

ただ、他の無糖茶飲料に比べるとブランドで選ばれるケースが少なく差別化ができていないため、大手各社は新商品やこだわり原料、レンジの加温対応などに取り組み、“どれでも一緒”のイメージ克服にチャレンジしている。

ほうじ茶は、甘香ばしい香りや緑茶に比べて苦渋みが少ないことが特徴。そして、和素材としての安心感に加え、直近ではスイーツやラテなどで活用されていることから、上質・嗜好品のイメ―ジの和〜洋まで楽しめる新素材として期待されている。

ほうじ茶飲料の市場拡大は、コンビニエンスストアが2015年頃から牽引してきたといわれている。その後、生活者のほうじ茶飲料に対する味覚・品質への期待が高まり、売り場もスーパーやドラッグストアなどにも広がってきたため、ここ数年は大手各社がほうじ茶飲料へ注力するようになってきている。

〈「生茶 ほうじ煎茶」新登場、ブランド推しで指名買いねらう〉
2020年秋は、キリンビバレッジが「生茶」ブランドとして5年ぶりの新商品として投入する「生茶 ほうじ煎茶」(525mlPET他、9月15日発売)が注目されそうだ。「ほうじ茶に、生。」をテーマに、生茶葉がひきたてる上品な香り・あまみの濃さ、雑味のないすっきりと広がる余韻を実現したという。コミュニケーションは、「生茶」のキャラクターである満島ひかりさんと吉沢亮さんの二人を起用し、大型商品らしい登場感を醸成する。

キリンビバレッジ・マーケティング部の松井のり子ブランドマネージャーは、「生茶ブランドの強みを活かし、ネーミング・パッケージ・味覚すべてで独自性のある提案をします。生茶葉をまるごと搾った“まる搾り生茶抽出物”により、しっかり濃いのに、後味がすっきり軽やかな新しいおいしさを目指しました。ほうじ茶に“生”という、新しく、感動的なおいいさのニュースを伝達していきたいです」と話す。「生茶」ブランドならではの取り組みで、指名買いにつなげる考えだ。

〈「お〜いお茶 ほうじ茶」レンチン対応でいつでもホット〉
カテゴリートップの伊藤園は、30年以上前からほうじ茶飲料(缶)を販売している。同社によれば、日本ではお茶の生産地から離れている地域などを中心に、ほうじ茶を飲む文化は昔からあったという。伊藤園「お〜いお茶 ほうじ茶」の特徴は、100%一番茶を使用していること。3種類の焙煎茶葉をブレンドし、抽出も工夫することで苦味を出さず香りを引き立て、ほうじ茶独特の甘香ばしい「しあわせの香り」(同社担当者)が楽しめる。今秋に向けては、コールド商品で秋を感じられる紅葉をデザインした秋パッケージを8月24日から販売し、9月7日からホット対応の商品を発売した。

すべて電子レンジ対応ペットボトルにしており、温かくても冷たくても、おいしく飲める味わいに仕上げたことが特徴だ。常温で購入し、自宅の電子レンジで温めることができ、冷めても手軽に再加温できるという。同社は、「元々、ホットのほうじ茶の甘香ばしい香りが好評でほうじ茶が見直されたことも、ブームになるきっかけのひとつでした。秋冬時期にさらなるほうじ茶の飲用拡大に期待しています」とする。

〈「綾鷹 ほうじ茶」止渇ニーズも意識し若年層開拓へ〉
コカ・コーラシステムは、2018年6月から「綾鷹 ほうじ茶」を発売し、2019年からホット商品も導入している。今年も昨年の販売実績を上回っており好調だ。日本コカ・コーラ社の担当者は、「止渇系茶飲料の一つとして飲用者が増えており、特に20代から30代といった若い世代の広がりが顕著と見ています。飲用シーンは、コールド商品は従来からのリラックス目的だけでなく、止渇系として幅広いシーンで飲まれるようになりました。一方、ホット商品はリラックス目的がメインのままです」と話す。

今後は、「ブレンド茶や麦茶などの止渇系飲料のニーズも捉えることをより意識して、年配層だけでなく若い世代も意識したマーケティング活動を強化する」(コカ・コーラシステム)としている。

〈ポッカサッポロは「加賀棒ほうじ茶」で原料自体の魅力を訴求〉
ポッカサッポロフード&ビバレッジは、2015年秋に発売した「加賀棒ほうじ茶」が市場に定着し、今年も主力の500mlPET商品が2ケタ増で推移している。石川県焙煎茎茶を100%使用し、浅煎りの“棒ほうじ”を使用することで、香ばしくすっきりとした上品な味わいに仕上げていることが特徴。

2020年春のリニューアルでは、“再デビュー”をテーマに取り組み、加賀出身の香りの良い棒ほうじ茶であることを、プロモーションと製品パッケージで改めて訴求した。その結果、ターゲットの30代から40代有職女性に刺さり、販売増加につながったという。秋以降のプロモ―ションでは、石川県で実際に「加賀棒ほうじ茶」の茎を焙煎している生産者の声をWEB動画などで配信し、原料そのものの良さを伝えていく。同社担当者は、「お菓子など、最近のほうじ茶のカテゴリーカラーは、われわれのパッケージである赤と黒が増えており、当社ブランドが浸透してきたのではと考えています」とする。

〈「伊右衛門 焙じ茶」は今春から年間通じて販売へ〉
サントリー食品インターナショナルは、2020年4月に「伊右衛門 焙じ茶」をリニューアル発売している。昨年までは、季節ごとに数量限定で販売していた「伊右衛門 焙じ茶」を、四季に合わせた味わいは継続しながら年間を通して販売する。今年は、「伊右衛門」本体(緑茶)の好調もあって「伊右衛門 焙じ茶」も好調に推移している。

秋に向けては、「伊右衛門 焙じ茶」を「伊右衛門 焙じ茶 〈秋の味わい〉」へ8月18日にリニューアルし、「寝かせ茶葉」と「釜炙り茶」を使うことで、深みとコクがありながら軽やかな香りにした。パッケージは、京友禅の老舗「千總」のデザイナーによる伝統的な和柄を採用し、華やかで心躍る贅沢な秋の情緒を表現したという。

ほうじ茶飲料は、なじみがあって安心して買える健康に良いリラックス飲料として、コロナ禍でますます存在感が高まるだろう。飲料各社は、安心感や飲みやすさだけでない価値を提案することで、市場活性化に取り組んでいる。