文部科学省が24日に検定結果を発表し、来春から採用される中学校教科書は、LGBTなど性的少数者についての記述が大幅に増えた。社会の意識の変化や国際潮流を各出版社が反映させた結果だが、文科省は教えるべき内容として学習指導要領に定めていない。むしろ道徳などで「異性」への関心や理解を取り上げることを義務付けており、性の多様性との整合性に悩む出版社もあった。

異性との友情について取り上げた道徳の教科書


出版社が独自判断「社会の変化を取り入れた」

 「性にはさまざまな在り方があります」「『男性』『女性』という生物学的な性と、『自分は男性である』『自分は女性である』という自分の意識(心の性)が一致しない人がいます」

 性の多様性について触れたのは、現行の教科書では5社6点だが、今回合格した教科書では9社17点に。科目も道徳だけでなく国語、歴史、公民、家庭、美術、保健体育に広がった。

 背景には同性婚訴訟や男女別制服の見直しが話題になるなど関心の高まりがある。3科目で触れたある出版社は「社会の変化を取り入れた結果。消極的な意見もあったが、大事な観点であり、今後定着する話題だと判断した」と話す。

“男女の淡い恋”取り上げず、検定で「不適切」

 文科省の学習指導要領には、今も「性の多様性」の記載はない。一方で、必ず扱うものに道徳で「異性の理解」、保健体育で「異性の尊重」を挙げる。この基準を満たすため道徳では男女間の淡い恋を掲載する教科書が多いが、取り上げず、「不適切」だと検定意見が付いた出版社もあった。

 この出版社は「生き方を考える道徳でわざわざ『異性の理解』を大きく扱うことに、ためらいがある。生徒に性的少数者は必ずいる。授業の進め方によっては男らしさや女らしさの強化にもつながりかねない」と説明。性別と関係ない友情を扱ったページに「同性どうしの友情と異性との友情に、違いはあるだろうか」という一文を入れて合格したが、「次の学習指導要領の改定で『異性』はなくしてほしい」と希望する。

幼児期から性教育が世界標準「文科省は逸脱」

 性教育に詳しい浅井春夫・立教大名誉教授は「学習指導要領は、保守系議員の政治的な影響を受け、男女の結婚や純潔教育にこだわる戦前の価値観から抜け出せていない」と見る。

 その上で「国際的には、幼児期から包括的に性教育を進めるのがスタンダードで、文科省は完全に逸脱している」と批判。国連教育科学文化機関(ユネスコ)などが作った多様性やジェンダー、人権を基盤にした『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』を参考に「早急に性教育を再構成する必要がある」と指摘する。