「日本人の食事摂取基準」が4月に5年ぶりに改定され、食塩の摂取目標量が前回の改定に続いて引き下げられた。特に、子どものころからの生活習慣病予防を強調。休校や外出自粛が長引き、インスタント食品などを利用する機会も増えることが予想される中、専門家は「家庭でともに過ごす時間も増える中、親子一緒に減塩に関心を持って」と呼び掛ける。

日本人の摂取量は、WHO推奨の2倍

 基準は、健康を保つためにとるべきエネルギーと34種の栄養素の量の目安。厚生労働省が定め、学校給食や病院食などの参考にされている。

 5年ごとに見直され、今回の改定では食塩の摂取目標量を15歳以上で1日当たり、男性は8グラム未満から7.5グラム未満に、女性は7グラム未満から6.5グラム未満に。1〜2歳の男性を除き、0.5〜1グラム引き下げた。

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 世界保健機関(WHO)の推奨する食塩摂取量は成人(16歳以上)で1日5グラム未満。一方、2018年の国民健康・栄養調査によると、日本人の20歳以上の摂取量の平均は10.1グラムで、大きな開きがある。

子どもは大人より体の負担が大きい 

 改定に携わった滋賀医科大の三浦克之教授(56)=公衆衛生学=によると、日本人の食塩摂取量は減少傾向にあるが、国際的にみると高い。しょうゆ、みそ、漬物、塩ザケなど、日本の伝統的食材に高塩分のものが多いことが理由の一つという。塩を取りすぎると、血液中の塩分濃度を一定に保つために血液量が増え、血圧が上がる。血圧が上がると、血管が破れたり、詰まったりしやすくなる。

 三浦教授が代表を務める国の研究班は、1980年の国民栄養調査に参加した人の世帯全体の食事記録をもとに、世帯の食塩摂取量を算出。24年間の追跡調査で、1000キロカロリーあたりの食塩摂取が2グラム増えると、参加者の脳卒中での死亡率は12%、急性心筋梗塞など冠動脈疾患での死亡率は25%増えることがわかった。

 三浦教授は「食塩を多く取る世帯の人ほど脳卒中などでの死亡率が高い」と指摘。「大人より体格が小さい子どもは食塩の取り過ぎによる体への負担が大きい上、濃い味に慣れると、大人になっても取り過ぎが続く。家族で減塩に取り組むことが重要」と話す。

子どもの頃から減塩を意識するために 加工食品の表示をチェック

 子どものころから減塩を意識するには、どうしたらいいのか。愛知県栄養士会副会長の上原正子さん(68)はまず、加工食品の栄養成分表示を親子で見ることを勧める。
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栄養成分を見て「1袋で1グラムだね」

 2015年に食品表示法が施行され、容器包装に入れられた加工食品には原則、1食分や100グラムなどの単位当たりに含まれる食塩相当量の表示が義務づけられた。食事摂取基準では10〜11歳は6グラム未満などと年齢に応じて1日の目標量が決められ、比較しやすくなった。

 例えば「これを1袋食べると1グラムだね」と話したり、1日の食事を絵日記で記録し、塩分量を足し算してみたりすると、子どもでも塩を取りすぎていることを自覚しやすい。

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おすすめはしょうゆスプレーとコーン缶

 食卓の道具を工夫することも。子どもは、刺し身に少しだけしょうゆを付けて食べるような力の加減が難しく、ベッタリと付けてしまうこともある。そんなときは、スプレー容器にしょうゆを入れて吹くと、少量で済む。

 調理法も生かせる。スープは食塩が多くなりがちだが、固形ブイヨンの代わりに昆布でだしを取るのも工夫の一つ。具は野菜の種類を多くし、コーンの缶詰を入れると甘みが増し、薄味でもおいしく食べられる。

 休校や自粛生活が長引き、社会全体で買い物の回数も減らす動きがある中、上原さんは「手軽に食べられ、長持ちするインスタント食品の利用が増えると考えられる」と指摘。「どの程度の食塩が含まれているのかを確認し、親子で減塩を考えるきっかけにしてほしい」と話す。

[元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年5月13日]