コラム「アディショナルタイム」
 子どもたちにとって、プロスポーツ選手と話ができる機会は貴重な体験です。それが憧れの選手なら、なおさらでしょう。今回はバスケットボール男子のBリーグが企画した中学生との交流について。運動、栄養、休養のことを楽しく学んだ特別授業の内容を紹介します。
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オンライン授業に参加した子どもたちと千葉ジェッツの富樫選手(右) ⓒB.LEAGUE



試合前日の夕食 控えたいメニューは?

 この特別授業は1月14日に「バスケに卒業はない」と題して、オンラインで行われました。緊急事態宣言の影響でオールスター戦が中止。Bリーグでは社会責任活動「B.LEAGUE Hope」の一環として、コロナで大変な思いをしている子どもたちを元気にしたいと、試合会場だった茨城県内でバスケ部に所属する計90人の中学生と6人のトップ選手をつなぐ催しを企画したというわけです。

 大塚製薬の協力で行われた授業はクイズ形式でスタート。第1問は「試合の前日の夕食に控えた方がいいものは次のうち、どれでしょう?」でした。

①とんかつ定食
②たっぷりきのこの和風パスタ
③ゴボウとナッツの甘辛炒め

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元気に質問する子どもたち ⓒB.LEAGUE


 答えは①のとんかつ定食…かと思ったら、全部だそう。大塚製薬によると、①は揚げ物の油が消化によくないこと、②③は食物繊維が多く含まれるため、消化がしにくく、試合前日には控えた方がよいとのこと。宇都宮ブレックスの比江島慎選手は「だまされた〜(笑)。とんかつだと思った〜。勉強になります!」。明るい反応に緊張気味だった子どもたちもすぐに笑顔になりました。

最高のパフォーマンスに必要な健康管理

 第2問は「どうしても眠れないときにはどうしたらいいか?」

①テレビやスマホを見ながら眠くなるのを待つ
②布団に入り気合で眠る
③適度に退屈な本を読む

 千葉ジェッツの富樫勇樹選手は「①じゃないですか。無理して寝るのが一番ストレスだから」と答えましたが、正解は③。頑張って眠ろうとすると、逆に脳が起きてしまうので、適度に退屈なことをするのがベスト。また、スマホを使うと「ブルーライトが目に入り、脳が休んでいなかったりする」ので、お薦めできないとのことでした。

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左から時計回りに篠山選手、ベンドラメ選手、比江島選手、平尾選手、富樫選手 ⓒB.LEAGUE


 食事や睡眠をクイズにしたのは、理由があります。司会者は「アスリートが最高のパフォーマンスを出すには、健康管理が大事。運動と栄養と休養、この3つがちゃんとしてないとコンディションは整わない」と説明。サンロッカーズ渋谷のベンドラメ礼生(れお)選手は中学時代にお茶わん7杯分のご飯を食べていたことを明かす一方、「今日、習ったようなことを中学生の時にもっとやっていたら」と育成世代にコンディショニングの重要性を訴えました。

質問タイム 自信を持つにはどうすれば

 クイズの後は選手への質問タイム。まず、手を挙げたのが男子生徒。「自分のプレーに自信を持つにはどうしたらいいですか?」。これに対し、茨城ロボッツの平尾充庸(あつのぶ)選手は「練習でやったことしかコートの中では表現できない。まずは練習で自分のプレーに自信が持てるようにすること」とアドバイス。

 「周りの選手の身長が高いとき、何を考えればいいのですか?」という質問には、富樫選手が「気にしすぎないのが一番かな。自分のいいところ、シュートだったり、パスだったり、それを最大限に生かせばいい」。

 「チームの絆を深めるためにはどうしたらいいですか?」という質問に、川崎ブレイブサンダースの篠山竜青(りゅうせい)選手は「バスケットは関係ないところでチームで決めたことをやってみるといい。例えば、皆で夜9時以降のスマホはやめてみようよとか、チームで8時間睡眠にチャレンジしようよとか」と提案。子どもたちはプロの言葉に真剣に頷いたり、メモを取ったりしていました。

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パソコンを使って子どもたちと交流する茨城ロボッツ・福澤選手 ⓒB.LEAGUE


 印象的だったのは、「最近、シュートが入らなくて困っています。どうしたらいいですか?」という女子生徒への答え。篠山選手は「バスケット始めて20年たつ僕もいまだにシュートが入らないときもある。どんな選手でもシュートは入るとき、入らないときがある。大事なことは入るまで打ち続けること」とポジティブなメッセージを送っていました。

トップ選手の考え方 子どもに伝わった

 篠山選手は以前、あるテレビ番組でこんなことを話していました。「いろいろあるけど、下を向いていても、何も落ちてない。バスケットのリングは上についているし、常に上を向いてプレーしないと。下を向いていても何もない」

 トップ選手に共通するのは、どんな困難にも打ち勝ってやろうという意志と、そのために何事も貪欲に吸収しようとする力です。この日の授業で子どもたちにもそれが伝わったのか。参加した石井息吹くん(中3)は「プロの選手と話ができてよかった。自分もそういうところに立ってみたいなとあらためて思いました」とうれしそうでした。

 いかがでしたか。今回の最後は篠山選手が子どもたちに向けたエールで締めくくりたいと思います。「僕自身、中学のときに栄養とかコンディションの話を知っていれば、もっとバスケがうまくなったと感じています。皆さんも、これを機会にバスケに対する意識とか行動をちょっとずつ変化させてください。日本のバスケットはこれからもっと進化していきます。皆さんもその一端を担っています。Bリーグや日本のバスケットを盛り上げていきましょう。ぜひ、一緒に戦っていきましょう!」

「アディショナルタイム」とは、サッカーの前後半で設けられる追加タイムのこと。スポーツ取材歴30年の筆者が「親子の会話のヒント」になるようなスポーツの話題、お薦めの書籍などをつづります。