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「産後ママSOSプロジェクト」スタートを前にオンラインで実施されたイベントの模様



 コロナ禍で妊娠中や出産直後の女性が孤立し、「産後うつ」のリスクが高まるなど、出産後の女性の支援は急務だ。産後女性の不安や悩みを社会課題として広く発信し、解決する「産後ママSOSプロジェクト」も今月から始動。事前イベントに登壇した専門家の提言から、必要な視点を整理した。 

防衛医科大教授・助産師 西岡笑子さん「育児の協力者と精神的に支える人、両方が必要」

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防衛医科大教授・西岡笑子さん


 妊娠、出産、そして産後にかけ、母親の心身はダイナミックに変化します。

 体調面で最優先するのは産道や骨盤底筋、子宮の回復。出産で傷ついた体に必要なのは体を休めること。「できる」と思っても、家事を全部一人でやるなど無理は禁物です。昼間も赤ちゃんが寝ている時は一緒に休むようにし、抱っこもできる限り周囲の人に代わってもらえるようにしましょう。

 産後の気分はジェットコースターのように浮き沈みします。理由はホルモンバランスの急激な変化。出産は、女性ホルモンが激減する一方で母乳を生成するホルモンが作用し始めます。この変化が心身に大きく影響し、本人も自分であって自分でないような制御しづらい精神状況になるのです。

 そんな中、授乳は昼夜を問いません。3時間に1回、おむつを替えて授乳し、げっぷをさせて、と一連の行為で30〜40分かかります。次の授乳まで2時間くらいしか休めません。

 産前産後は、育児に協力してくれる人と、精神的に支えてくれる人、その両方が必要です。一時的に抑うつ症状があっても、睡眠をとって、心身の疲労を取り除くことができれば徐々に回復します。

 父親も生後1週間以内に赤ちゃんと接触を持つことで、その後も積極的に子どもと関われるようになります。最近は母性や父性を親性(おやせい)とも言いますが、どちらも学習で培われます。育児や家事の負担はママ一人では背負いきれないと夫婦で理解することが大切です。産後の生活をイメージしながら負担を夫婦で分かち合えるよう、話し合ってください。

精神科医 江村和世さん「対話を続けて、夫婦と子の”正三角形”をキープ」

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精神科医・江村和世さん


 夫婦で産後の関係を話し合おうとしても、お母さんは体がしんどければイライラしたり、きつい言葉が出たりします。まずはお母さんの体の回復が第一です。

 大切なのは「対話」。情報交換や合意が目的の「会話」と異なり、不要不急で一見無駄にみえます。が、対話のキャッチボールを続けることで、ユーモアが出てきたり、互いを許すことができたりします。ちょっとしたボディーランゲージでも対話になります。

 恋愛中の2人は1対1で向き合ってきたと思いますが、産後は赤ちゃんを挟んで、三角形を描いて。お父さんとお母さんが赤ちゃんの方を向けば、安定した形になります。3人のうち2人がくっつきすぎず、正三角形を保っていくことがうまくいくコツです。

社会福祉法人理事長 井上従子(よりこ)さん「行政は需要をキャッチしてほしい」

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社会福祉法人理事長・井上従子さん


 法人が運営する子育て支援センターは利用人数を制限しながら開いています。利用率はとても高く、支援の必要性を痛感しています。

 最近、1カ月健診を待たずに、産科医や助産師がお母さんの心の状態をみる取り組みを国が制度化し、導入を始めた自治体もあります。産後うつなどが心配されるお母さんは、精神科医につなぐなどのフォローもしています。

 そこまででなくても、産後の時期、調理や家事のサポートを望む家庭は多いはず。行政が需要をキャッチしてサービスにつなげる仕組みができると良いですね。

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プロジェクトには東京すくすくも参加。イベントで今川綾音・副編集長がすくすくに寄せられた親たちの声を紹介した