タイトルカット 子どもの目の健康

 子どもの視力低下が問題になっています。新型コロナウイルスの影響で在宅時間が増えたことや、遠隔教育やこれからの時代への対応に欠かせないタブレットなどのデジタル機器の使用で、目を酷使する機会が増えています。近視の人は目の病気にかかる確率が高いことも分かってきました。

子どもの視力は悪化傾向

 文部科学省が毎年実施している調査で、裸眼視力が1.0未満の小中学生の増加傾向が明らかになっています。新型コロナウイルス対策で巣ごもり生活やオンライン授業などが広まり、スマートフォンなどのデジタル端末を見る機会が増えていることも一因とみられています。

グラフ 裸眼視力1.0未満の子どもの推移

目の構造は「カメラ」

 目はカメラのような構造で、色や形を光の情報として取り入れます。レンズに当たるのが角膜と水晶体で、フイルムが網膜です。

図解 目の構造は「カメラ」

 角膜は目の外側にある透明な膜で、光を取り入れるとともに屈折(方向を曲げる)させます。水晶体はピントを合わせます。網膜は眼球の内側の面にある膜で、ここで像のピントが合い、物の形や微妙な色具合や明暗を見分けます。目は角膜から映像を取り入れ、水晶体でピントを調節、網膜でその映像を映し、大脳で認識しています。

両目でよく見える

2つの目があることで、自然に遠近感や立体感を得ることができます。片目で見るより両目で見たほうが視力も良くなります。

図解 両目でよりよく見える


近視とは? 近くがはっきり、遠くはぼやける

 近視は、眼球の形が前後方向に長くなって、目の中に入った光のピントが合う位置が、網膜より前になっている状態です。近くものははっきり見えますが、遠くのものがぼやけます。

図解 眼球の正常な状態と、近視の状態

なぜ近親になるの?

近視には、遺伝と環境の影響があるとされています。

図解 なぜ近視になるのか 遺伝と環境

 親が近視でその程度が強いほど、近視にならない生活習慣に配慮する必要があるのです。

近視は将来、目の病気になりやすい

 近視はメガネなどで矯正すれば視力が出るので、以前はあまり問題視されていませんでした。しかし最近では、近視が大人になった時に目の病気になりやすいことが分かってきました。

図解 近視は将来、目の病気にかかりやすくなる

 通常の近視(単純近視)は、一度発症すると20歳ごろまで進行します。低年齢で発症すれば、強度近視になる可能性は高くなります。

 小さい頃から近視にならない生活習慣を心がけることが重要です。

近視を防ぐための生活習慣

図解 近視を防ぐための生活習慣 近くを見るとき、デジタル端末を見るとき

近くを見るときは

 読書や書き物をするときは十分な明るさを保って(200ルクス以上)、少なくとも30センチ以上離して作業します。30分に一度は20秒以上遠くを見て、連続させないようにしましょう。

デジタル端末には注意を

 画面を見つめるとまばたきの回数が減り、目が乾燥して眼精疲労を生じる可能性があります。目を休ませることを心がけましょう。反射防止フィルムなどで映り込みを防ぐのも有効です。

イラスト 外で遊ぶ子どもたち

1日2時間の外遊びを

 1日2時間は屋外にいることが有効です。学校の昼休みや休憩中に外で遊び、校庭で行う体育の授業がある日は、2時間程度は外にいる時間が確保できます。建物の影の中や木陰で遊ぶのも有効です(照度計で1000〜3000ルクス以上)。

目がよく見えない…こんな可能性も

 弱視、遠視、乱視といった場合も目がよく見えなくなる可能性があります。

イラスト 弱視は早期発見を

弱視 早期発見で視力を伸ばせる

 生まれたばかりの赤ちゃんは視力がほとんどなく、いろいろなものを見ることによって目が刺激を受け、視力が成長していきます。3歳までに急速に視力が発達し、就学までには子どもたちの視力は1.0に成長します。強い遠視や乱視の屈折異常があると弱視になりやすく、3歳児健診でしっかりと弱視を見つけることが大切です。3歳ぐらいから眼鏡をずっとかけて視力の成長を促せば、就学時には視力は獲得できます。

遠視 ピントを合わせるのに疲れ

 「遠くが見える目」ではなく、遠くにも近くにもピントが合わない目。このため疲れやすくなります。子どもの場合は近くを見ることに疲れてしまい、読書が苦手になるケースもあります。

乱視 縦と横でピントが異なる

 主に角膜の表面の縦と横のカーブが違っていて、縦方向と横方向でピントの合う距離が異なる目。ぶれて見えることが多いです。ほとんどすべての人が乱視を持っているので、弱い乱視なら問題ありません。強い乱視があると視力低下や眼精疲労の原因になります。


画面を見るときは30cmの距離を。30分近くを見たら20秒遠くを見ましょう

◇日本眼科医会 常任理事 柏井真理子(かしいまりこ)さん

写真 柏井真理子さん

 文部科学省の学校保健統計調査によると、視力1.0未満の児童・生徒が右肩あがりに増えています。多くはおそらく近視による裸眼視力の低下が考えられます。

 近視とはいったいどのような状態なのでしょうか? 近視は目の前後径が伸びて焦点が網膜の前に合ってしまう状態で、いったん近視になると元に戻すことは不可能です。背が伸びる成長期に近視が進みやすいといわれています。

 近視は「メガネやコンタクトレンズをすれば見える」として、これまで大きな問題とは認識されてきませんでした。ところが、近視の人は、将来、さまざまな目の病気にかかる確率が、近視がない人と比べて高いことが分かってきました。生涯にわたり、良好な視力を維持するためには小児期に近視の発症と進行を予防することが、いかに大切かが分かります。

 近視は遺伝的な要素と環境的な要素があるといわれておりますが、最近の研究では環境的な要素のほうが影響大との指摘があります。「30センチ未満の距離での近見作業、30分以上の連続近見作業は近視進行を助長する」と多くの報告があります。読書をするとき、ゲームをするとき、スマホを見るとき、デジタル画面を見るときなどは必ず30センチ以上の距離をとること、30分続けて近くを見たら、20秒以上遠方を眺める。学校でデジタル機器を活用しての授業が開始されましたが、目の健康に気をつけながら適切に使用してください。

 また近視の進行抑制には屋外活動、すなわち太陽光を浴びることが日陰であっても有効であるという諸外国からの報告もあります。学校での休み時間や授業においても紫外線や熱中症に注意を払いながら屋外で過ごす時間を少しでも積極的に確保してください。

 一方、睡眠直前までデジタル画面を見続けることは、眠りを誘うホルモンの低下により睡眠障害になりやすいです。睡眠1時間前のデジタル機器使用は控えましょう。ブルーライトカット眼鏡については眼科の専門6団体で「子どものブルーライトカットレンズの使用」は慎重にするよう注意喚起しております。

 日本眼科医会では「自分の目は自分で守ろう」という健康リテラシーを重要視し、子どもたちが興味を持てる啓発資料「ギガっこ デジたん!」を文科省とともに作成しました。日本眼科医会のサイトからダウンロード可能です。

(参考文献:日本眼医学会、文部科学省などのホームページや資料)