スポーツをする子どもたちの精神的な成長と技術の向上などを目的に「スポーツノート」を取り入れた指導が広がっている。試合や練習への取り組みや感じたことなどを「書く」という作業を通して、子どもたちが自分の状態を客観視し、主体的に競技と向き合う効果などが期待されるという。

子どもに芽生える目的意識を生かす

 大阪府池田市の小中学生向けバレーボールスクールIVSでは、子ども全員に「バレーボールノート」を持たせている。「書き方は自由。バレーボールのことをぎっしり書いてくる子もいれば、身の回りのことを日記のように書いてくる子もいます」。指導者で元Vリーグ選手の酒井恵さん(37)はこう話す。スクールは、元日本代表の夫・大祐さんと運営している。

 その日の練習内容や自分ができたこと、できなかった課題のほか、指導者への質問や自分がやってみたいプレーなど、子どもたちは思い思いにノートを付けている。「熱心に書く子は、次はこうしてみよう、こういうことができるように、といった目的意識が芽生えてくる。私たちも子どもが考えていることをつかみ、指導に生かしています」

自問自答で気付いたことを反すう

 「ノートの一番の目的は、自分と向き合い自問自答すること」。専修大スポーツ研究所(川崎市)顧問で、書籍「ジュニア選手のための夢をかなえる『スポーツノート』活用術」(メイツ出版)を監修した佐藤雅幸教授(65)は、意義を強調する。

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佐藤雅幸教授


 試合では、選手自身が状況を判断し、次のプレーを決めなければならない。佐藤さんは「コーチに言われるがままではなく、自分でやるべきことができるかが重要。その点、自分と向き合って、気付いたことを反すうできるノートを生かすのはいいこと」と話す。

メンタル面も成長 継続が自信に

 ノートに「こうでなくては」というひな型はない。自分一人で見返すものと、指導者らとやりとりするものを別にしてもいい。ただ、書くこと自体、ハードルが高いと感じる子どももいる。「最初のうちは、ほんの数行書いて終わり、でもOK」。佐藤さんは、選手が書いた内容について、あえて気付いていないふりをして「よく気づいたね、それってどういうこと?」と問い掛け、「教えてもらう」スタンスで書くことを引き出したこともあるそうだ。

 継続すること自体が自信となる効果もある。「途中で書かなくなることもよくある。そんな時、書いておこうと思ったことがある日だけ書く、一週間に一度だけ書く、といった形でもいい」。絵や、気持ちを表すマークだけでもよいという。「何かのタイミングでノートを付けていてよかった、と思えれば、あとは続けていけるでしょう」

 「上達する選手は、みんな悩みを抱えている。悩みを『書く』という行為で、すでに解決に向け一歩踏み出している」と佐藤さん。ノートは、メンタル面の成長にも役立つという。「スポーツには勝敗がつきものだが、負けが悪いのではない。書くことは、自分の中で折り合いをつけるための手助け。短期間で劇的にうまくなるわけではない。でもその積み重ねは、学業や仕事などその後の人生のいろいろな場面で役立つはずです」

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書籍「ジュニア選手のための夢をかなえる『スポーツノート』活用術」