東京都町田市立小学校6年の女子児童=当時(12)=が2020年11月、いじめを訴える遺書を残して自殺してから間もなく1年となる。今年3月に始まった町田市教育委員会の第三者委員会による調査は進展がみられず、市は近く市長直轄の第三者委を設置して再調査する。だが、女児の両親は市からこうした対応の説明を受けておらず不信感を募らせたままだ。両親に寄り添い、いじめと自殺の因果関係解明に全力を注ぐべきだ。
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服部展和・立川支局長


複数の児童の名前を記したメモ

 「真実を知りたいんです」。4月に初めて女児の自宅を訪れた際、両親は絞り出すようにそう口にした。祭壇には、ほほ笑む女児の遺影が飾られていた。スポーツが得意で空手教室に通い、明るく活発な性格…。話を聞くにつれ、「この子がなぜ死を選ばなければならなかったのか」との思いを強くした。

 女児が亡くなったのは昨年11月30日。自室の机の引き出しから、複数の児童の名前と「おまえらのおもちゃじゃない」などと記したメモが見つかり、両親はいじめの被害を知ることに。その後、仲間外れにされたり、悪口を言われたりしていたとの証言が同級生から寄せられた。「(女児の名前)のころしかた」と記されたノートの存在も明らかになっている。

タブレットのチャットで「死んで」

 両親が特に問題視するのは文部科学省の「GIGAスクール構想」の先進事例として、学校が児童1人に1台ずつ貸し出したタブレット端末がいじめに使われた可能性があることだ。児童同士が端末のチャット機能で女児の名前を挙げて「きもい」「死んで」などと書き込み端末を借りた女児がそれを見たとされる。

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調査のやり直しを求める要望書を町田市教委や市に提出した後、記者会見する女児の父親=4日、東京都内で


 こうした実態は、学校や両親による児童への聞き取りで判明した。ただ、書き込みの履歴は確認できておらず、学校が共通のパスワードや他人が推測可能IDを使うなどずさんな管理をしていたこともあり、再調査で明らかにできるか不透明な部分は多い。

把握していたのに 伝えたのは死後

 学校は昨年9月のアンケートで女児へのいじめを把握していたが両親に伝えたのは女児の死後だった。当初は関係する児童が女児に謝罪したことで「解決済み」と処理し、いじめ防止対策推進法が定める「重大事態」として町田市教委に報告したのは2月だった。その後、両親が市教委に説明を求めても「十分な回答はなかった」という。

 「真実を明らかにしてほしい」。両親が求めているのはこの一点だ。10年前、いじめを受けた大津市の中学2年の男子生徒=当時(13)=が自殺した問題では、遺族が推薦する委員も加わった第三者委が調査した。町田市の石阪丈一市長は「第三者委に遺族の意見が入ることはない」と否定的だが、その考えも両親に伝えていない。新たな第三者委を設置しても信頼関係がなければ調査の難航は必至だ。まずは両親への丁寧な説明から始めるべきではないだろうか。