政府が進める18歳以下の子どもへの10万円相当給付を巡り、昨年9月以降に離婚した世帯では子どもを実際に育てている親ではなく、別れた元配偶者に入金されたという報告が、ひとり親の支援団体に相次いでいる。特にシングルマザーにしわ寄せが及んでいる。政府と自治体は救済策を本格的に検討すべきだ。

政治部・我那覇圭記者


昨年8月末のリストを使用 離婚直後の親子が受け取れず

 「どん底に突き落とされた」「悲しい気持ちになる」「理不尽な結果を招いた」−。ひとり親を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」には昨年12月以降、給付が届かなかった女性らから切実な声が寄せられている。離婚直後で暮らしも安定しない中、給付されるはずの現金が受け取れないひとり親や子どもの心境を思うと、胸が締め付けられる。

 政府は今回の給付を迅速に進めるため、既存の「児童手当」に目を付けた。中学生以下の子どもを持つ世帯で、一定の所得を下回るなどの条件を満たせば、対象となる子どもの数に応じて現金を支給する制度だ。自治体が対象者や振込先を既にリスト化しており、活用できると判断した。給付に関する自治体の新たな事務負担が生じないというメリットも考慮した。

 児童手当は支給月が法律で決まっており、昨年11月に閣議決定された今回の給付では、その直前の8月末に確定したリストが使われた。このため、昨年9月以降に離婚した後の状況が反映されないという問題が顕在化している。児童手当の振込先が男性に設定されていたケースも多く、しんぐるまざあず・ふぉーらむによれば、「元夫が給付をギャンブルに使った」という訴えさえある。

明石市は救済策「子どもの手元に届くまで責任を果たす」

 内閣官房の担当者は取材に「給付の仕組みとして完全ではなかったが、迅速性を優先した」と釈明した。その上で、子どもを育てていない親に現金が渡っていれば、父母らで話し合って対応を検討するように呼び掛けた。自治体には今後、国からの交付金を使って現金を給付するように促す代替策も提示している。

 しかし、離婚後の父母らの話し合いが円滑に進むとは限らない。家庭内暴力(DV)があったり、音信不通になったりしていることは少なくない。交付金も使い道が自治体に委ねられているため、市町村ごとに給付内容が変わる可能性は否定できない。

 支援を必要としている全てのひとり親と子どもに等しく10万円相当を支給する方法はどうあるべきか。自治体によっては、元配偶者に給付金を振り込んでしまっても、子育てをしている親に給付金相当額を立て替え払いした上で、元配偶者から回収する方針を打ち出した兵庫県明石市のような事例もある。

 泉房穂市長は先日、国会内で開かれた会合で「10万円がしっかりと子どもの手元に届くまで責任を果たす」と強調していた。政府や全国の自治体にも改めて胸に刻んでほしい言葉だ。(政治部)