東大大学院・山口慎太郎教授に聞く

 政府が来年4月発足を目指す新官庁「こども家庭庁」は、子育て支援や少子化対策も担当する。2021年の出生数は約84万人と6年連続で過去最少を更新したが、子ども関連支出の国内総生産(GDP)比は先進国平均を大きく下回ったまま。出産、子育てなどを経済学の考え方で研究する東京大大学院の山口慎太郎教授は「子ども政策は消費ではなく投資。子ども政策に使えるお金を増やし、それをいかに有効に使うかが重要になる」と指摘する。


山口慎太郎教授都


GDP比1.79% フランスの約半分

 経済協力開発機構(OECD)の調査によると、各国の子ども・子育て支援に対する公的支出(2017年)は、日本がGDP比で1.79%と、OECD平均の2.34%を下回る。政策対応で出生率を引き上げたフランス(3.6%)と比べると半分の水準だ。支出比率が高い国は出生率も高い。山口教授は「3%超は必要だ」と話す。

 こども家庭庁の設置で安定財源の確保が期待されるが、注視すべきはその使い方だという。子ども関連支出は主に、児童手当などの「現金給付」と保育・幼児教育などの「現物給付」で構成される。いずれも出生率を引き上げる効果はあるが、保育所整備や幼児教育の充実といった現物給付のほうがより有効との研究結果がある。

 山口教授は「現金給付を増やせば経済的余裕は持てるが、必ずしも子どもを増やす方向ではなく、一人あたりの教育投資を重視する方向に向く傾向もある」と指摘。幼児教育をより良くするなど「子育て環境の充実に振り向けた方がいい」と話す。

保育所利用が生むさまざまな好影響 

 山口教授は政府の調査などをもとに、保育所利用が子どもの発達に及ぼす影響を評価した結果、子どもの言語発達を促すことが分かった。保育所で多くの保育士や他の子どもたちと関わりを持つことで、多くの言葉の刺激を受けるためだ。

 さらに社会経済的に恵まれない家庭で育つ子どもの多動性や攻撃性を減らすこともわかった。保育所に通うことで特に母親が仕事をしやすくなり、家計所得が増えるため金銭面での不安が減る。さらに四六時中の子育てから解放されることで、親の精神面が安定し、親子関係が良好になることが要因とみられる。

 少子化克服により有効な施策を見極めるには、こうした実証分析の積み重ねが欠かせない。山口教授は「政策と成果の検証はセットでやる必要がある。一時的にコストをかけてでも取り組むべきだ」と強調した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年5月5日