幼いころの写真を見つめる航平さん=鈴木みのり撮影(一部画像処理)


 LGBTQ(性的少数者)の周知が少しずつ広がる中、子どもの当事者が、男女を区別する文化が根強い学校現場で苦しむケースが目立つ。支援団体の調査によると、中学生の当事者の5人に1人はこの1年で不登校になった。トランスジェンダーで千葉県在住の高校1年航平さん(16)=仮名=は「学校がずっとつらかった。不必要な男女区別は減らしてほしい」と訴える。

性別記入欄があると書く手が止まる

 航平さんは女性として生まれたが、2歳ごろから性別への違和感を感じ始め、小学3年の時に周囲にカミングアウト。高学年の時に性別違和の診断を受けた。胸が膨らみ、生理が始まったのもそのころ。周りの男子が声変わりをする中、どんどん女性らしくなる自分の体を受け入れられず、乳房切除も考えた。

 小学校で男女分かれて整列する際、2つの列の間に立った。中学校での学ラン着用を希望すると、市側が「前例がない」と難色。母親(45)が1年以上交渉し、入学直前に認められた。

 学校の書類に性別記入欄があると書く手が止まる。「何で普通に生きないの」「男なの? 女なの?」といった心ない言葉に傷つき、「いじめられるのでは」との恐怖を感じた。「死にたい」と何度も思った。母親は「自分の体の成長に苦しみ、毎晩泣いている息子を見ると、このまま死んでしまうのではないかと思ったこともある」と明かす。

毎年4月に新学級でカミングアウト

 航平さんは毎年4月、クラス全員の前でカミングアウトをする。「皆さん、LGBTって知ってますか。僕はそれです。女性の体ですが男性として生活しています」。涙で言葉が出ないこともある。

 カミングアウトの後、友人から「私、実は同性が好き。勇気出してくれてありがとう」と言われたこともある。「言い出せないだけで、性的少数者の子どもはもっといる。理解してもらうことは難しいかもしれないが、こういう子もいるんだと知ってほしい」と航平さんは言葉に力を込める。

 認定NPO法人「ReBit」が10月に公表した調査では、この1年で不登校を経験した性的少数者は、中学生は22%、高校生が15%。2020年度の文部科学省の調査と比べ、中学生が5倍、高校生が11倍高かった。

自殺未遂も4倍 きめ細かな配慮を

 また同じNPOの調査でこの1年、自殺を考えた10代の性的少数者は48%、自殺未遂をしたのは14%。昨年の「自殺意識調査」(日本財団)と比べると、割合はいずれも性的少数者の方が4倍高かった。

 文科省は2015年、学校できめ細かな配慮を求める通知を出した。自認する性別の制服着用や多目的トイレ利用を認めることを支援の事例として記載している。

 通知の作成に携わったGID(性同一性障害)学会の中塚幹也理事長は「学校現場で通知の認知度は年々下がっているように感じる」と指摘。男女区別が起こる修学旅行や水泳の授業などで、トランスジェンダーの子どもが特に生きづらさを感じやすいとする。「学校で生きづらさを抱えて中退し、就職でも困難を抱える負のスパイラルが起こっている。先生や周囲の子どももLGBTQの知識を持ち、当事者が生きやすい環境をつくることが必要だ」

性的少数者とは

レズビアン(女性同性愛者=L)、ゲイ(男性同性愛者=G)、バイセクシュアル(両性愛者=B)、トランスジェンダー(出生時の性別と自認する性別が異なる人=T)、クエスチョニング(性自認や性的指向が特定の枠に属さない人ら=Q)らの総称。英語の頭文字をとってLGBTQとも言われる。1998年11月、米国でトランスジェンダー当事者が殺害された。これを悼み、11月20日はトランスジェンダー追悼の日として、世界各地で当事者の尊厳を考える催しなどを行う日となった。


元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年11月6日