中米最小の国、エルサルバドルは長く続いた内戦や、貧困、政治汚職の蔓延など危険な国のイメージを払拭するため、2019年に就任したブレケ大統領の主導で「Surf City」政策を推進。

2021年には東京五輪の最終選考を兼ねた「2021 Surf City El Salvador ISA World Surfing Games」、2022年は18歳以下の世界一を決める『2022 Surf City El Salvador ISA World Junior Surfing Championship』の開催地に選ばれ、世界中のサーファーにエルサルバドルにハイクオリティな波があることを誇示していた。

満を持して開催されたCT第7戦『Surf City El Salvador Pro』はISAイベントが開催された「エル・スンサル」「ラ・ボカナ」から東へ約5km離れた「Punta Roca(プンタ・ロカ)」で行われ、現地時間6月17日に終了。
パーフェクトとは言えないながらも、プンタ・ロカらしいロングショルダーが姿を現した日もあり、まずまずのコンディションでイベントは幕を閉じた。

グリフィンが今季2勝目

(グリフィン) PHOTO: © WSL/Thiago Diz

ミッドシーズンカットを経て、後半戦のセカントイベントになった『Surf City El Salvador Pro』はインドネシアの後に左膝のMCL断裂を発表したジョン・ジョン・フローレンス(HAW)を始め、ケリー・スレーター(USA)、セス・モニーツ(HAW)、タイラー・ライト(AUS)が欠場。

一方、開幕戦を最後に欠場が続いたキャロライン・マークス(USA)がワイルドカードで復帰してカリッサ・ムーア(HAW)を倒す活躍を見せていた。

メンズサイドのQFではグリフィン・コラピント(USA)と五十嵐カノア(JPN)がエルサルバドル戦のベストヒートと言われるほど熾烈な争いをしてグリフィンが勝利。
同じカリフォルニアで育った二人はコンテストの世界で競い合って成長してきた仲間であり、余計な駆け引きなしの素晴らしいヒートだった。

その他、このラウンドではガブリエル・メディナ(BRA)、ジャック・ロビンソン(AUS)のカードもあり、ガブリエルがG-Landのリベンジを果たした。
また、ファイナルデイに残った4名の内、グリフィン以外はブラジリアンというこの後に控えているブラジル戦が他国の選手にとって脅威になるような展開となり、最後はグリフィンとカレントリーダーのフィリッペ・トレド(BRA)が対戦。

(プンタ・ロカ)
PHOTO: © WSL/Thiago Diz

公式3-5ftレンジのオンショア 、エアリアル向きのコンディションで最初に火を噴いたのはフルローテーションエアー、ブローテイル・エアーを1本の波でまとめて9.70を出したフィリッペ。
しかし、ポルトガルでのCT第3戦『MEO Pro Portugal』で優勝して勢いがあるグリフィンもエアーこそなかったものの、インサイドまでフローした演技で9.00をスコア。
中盤は両者共にミドルスコアでほとんど差がなく、後半にはタイスコアとなり、シングルスコアが上回るフィリッペがリードしていたが、ラスト3分でフィリッペが優先権を持ちながらもグリフィンに乗せてしまい、その波でテールハイ・リバース、フィニッシュもエアーリバースをメイクして8.00。
グリフィンが見事な逆転勝利で今季2勝目、ランキングでも3位まで浮上した。

「クレージーだね。同点に追いつかれた時は本当に参ったよ。このままでは終われない、何とかしなければと思ったさ。逆転は夢のようで本当に嬉しかったね。フィリペとは何度か対戦している、G-Landでは彼に負けていたから、ここでリベンジを果たせたのは嬉しい。彼は本当に凄いし、あの9.57はフィリッペらしいと思った。今回のファイナルはポルトガルよりも良い感じなので、勝利の余韻に浸っているところさ」

ポルトガルではカリフォルニア出身の選手として2009年のボビー・マルティネス以来のCT優勝を決めたグリフィン。
もし、ワールドチャンピオンになれば、カリフォルニア出身の選手として1990年のトム・カレン以来となる。

トップはフィリッペが維持

(今年は誰よりもコンスタントなフィリッペ)
PHOTO: © WSL/Thiago Diz

3xワールドチャンピオンのガブリエル・メディナ(BRA)がツアーに戻ってきたとはいえ、今シーズン最も強いブラジリアンの座は譲らないフィリッペ。
7戦中、ファイナル進出が4回、優勝1回と驚異的な成績でランキングトップの座も維持している。

「ここでの全てのサポートと愛に感謝している。最高の気分だよ。今のポジションにいることに謙虚な気持ちなんだ。この1年はとても楽しい。ブラジルに戻って充電するのもいい気分だね。そして、また勝てるように頑張りたい。やるべきことは沢山あるけれど、今のところ順調さ。この舞台にいることを幸せに思うし、家族にも感謝している。支えてくれているチームのみんなにも感謝しているよ」

6月23日〜30日にブラジル・リオデジャネイロのサクアレマで開催されるCT第8戦『Oi Rio Pro』は過去3度も優勝している得意なイベント。
熱狂的なブラジリアンサポーターの前で誰も止められないフィリッペの姿を見ることができるのか?
コロナ禍で3年ぶりの開催になることもあり、フィリッペを始めとした母国の選手が勝ち上がれば物凄い盛り上がりになるだろう。

CT第7戦『Surf City El Salvador Pro』結果
1位 グリフィン・コラピント(USA)
2位 フィリッペ・トレド(BRA)
3位 ガブリエル・メディナ(BRA)、イタロ・フェレイラ(BRA)
5位 ジャック・ロビンソン(AUS)、五十嵐カノア(JPN)、カラム・ロブソン(AUS)、イーサン・ユーイング(AUS)

『Surf City El Salvador Pro』終了後のランキング
1位 フィリッペ・トレド(BRA) 40,040pt
2位 ジャック・ロビンソン(AUS) 39,905pt
3位 グリフィン・コラピント(USA) 32,150pt
4位 イタロ・フェレイラ(BRA) 28,300pt
5位 五十嵐カノア(JPN) 28,110pt

ウィメンズはステファニーが今シーズン初優勝

(CT通算33勝目を決めて笑顔のステフ)
PHOTO: © WSL/Thiago Diz

ウィメンズサイドはSFでキャロライン・マークス(USA)、ファイナルでレイキー・ピーターソン(USA)を倒したステファニー・ギルモア(AUS)が自身のCT最多優勝記録を塗り替える33勝目。
7xワールドチャンピオンのステフはホームのスナッパーロックスに似たプンタ・ロカでハイスコアを重ねていた。
今回の優勝でランキングも7位から3位に上がり、「WSL Final」出場の条件であるトップ5入りを果たしている。

(際どいセクションをメイクしてスコアを伸ばしたステフ)
PHOTO: © WSL/Pat Nolan

「ムーチャス・グラシアス(スペイン後でどうもありがとう) 本当に嬉しいわ。キャロラインに勝ったことが凄い自信になり、優勝も可能だと思ったわ。レイキーは素晴らしいサーファーだからファイナルは厳しい戦いになると思った。これ以上のことはないわ。私は本当にコンテストで勝つことが大好きだし、このスポーツが大好きなのよ。旅にも行けるし、楽しい波にも乗れる。これこそ、’pura vida’(コスタリカの挨拶で素晴らしいという意味を持つ)だわ。道のりは長いけど、再びワールドタイトルが欲しい。まだコンテストは沢山残っているし、やるべき仕事もあるわ。でも、今はこの場所にいることが幸せだし、素晴らしい経験になっている」

五十嵐カノアがトップ5を維持

(五十嵐カノア)
PHOTO: © WSL/Thiago Diz

QFではグリフィンと素晴らしい戦いをして強い印象を残したカノア。
今季4度目の5位でランキングは1つ落としながらもトップ5を維持している。
ブラジル、J-Bay、タヒチと「WSL Final」まで残り3戦。
今年こそはトラッセルズでワールドタイトルを争って欲しい。

CT第7戦『Surf City El Salvador Pro』結果
1位 ステファニー・ギルモア(AUS)
2位 レイキー・ピーターソン(USA)
3位 ジョアン・ディファイ(FRA)、キャロライン・マークス(USA)
5位 サリー・フィッツギボンズ(AUS)、コートニー・コンローグ(USA)、カリッサ・ムーア(HAW)、イザベラ・ニコルス(AUS)

『Surf City El Salvador Pro』終了後のランキング
1位 カリッサ・ムーア(HAW) 36,840pt
2位 ジョアン・ディファイ(FRA) 35,065pt
3位 ステファニー・ギルモア(AUS)
3位 ブリッサ・ヘネシー(CRI) 32,930pt
5位 レイキー・ピーターソン(USA) 31,650pt

WSL公式サイト
http://www.worldsurfleague.com/

(ファイナリスト)
PHOTO: © WSL/Pat Nolan

(空海)