ステファニー・ギルモアが2022年CTで遂に8度目のワールドタイトルを獲得した。

2018年に7度目のワールドタイトル獲得でレイン・ビーチェリーに並んでから4年。

CT通算優勝記録ではすでに上回っていたが、ワールドタイトルは新たな女王として台頭してきたカリッサ・ムーアやコロナ禍に阻まれ、今年で34歳という年齢を考えると記録更新となる8度目は難しいのでは?と言われていた。

2022年シーズンのステファニーを振り返るとパイプラインでの開幕戦は新型コロナウイルスの感染により欠場。
その影響もあってかQF止まりのイベントが多く、今年から採用されたミッドシーズンカットでさえギリギリでクリアするようなシーズン前半だった。

後半もエルサルバドルで優勝はしたものの、次のブラジルでは9位。「Rip Curl WSL Finals」進出も5位と不利とされていたローシードでの参加になった。

しかし、「Rip Curl WSL Finals」では最初のヒートでブリッサ・ヘネシーを土壇場で逆転したのを皮切りにタティアナ・ウェストン・ウェブ、ジョアン・ディファイとヒート毎にハイスコアを伸ばしながらカリッサとのタイトルマッチまで勝ち上がり、2ヒート先行で勝利した。

(ストライダーの一声をきっかけに感情が爆発した瞬間)
PHOTO: © WSL/Pat Nolan

8度目を決めた後、カリッサとハグを交わし、インタビュアーのストライダー・ヴァシレフスキが近寄っても放心状態だった。
ストライダーが「OK?」と問いかけると堰を切ったように「OK」と叫び、正気を取り戻してインタビューに答えていた。

8度目までの軌跡

(2007年に初のタイトルを獲得)
PHOTO: © ASP/Kirstin

ステファニーのCTキャリアは2007年からスタートする。

いや、正確には2005年にワイルドカードで出場した地元ゴールドコーストでのCT開幕戦での優勝が初で、更に2006年のマンリーでもワイルドカードで優勝とクオリファイ前にすでに2勝と信じられない新人だった。

スナッパーロックスで培った優雅なスタイルはメンズでも憧れの対象として見上げるほどで、2007年のルーキーイヤーは4勝でワールドタイトル獲得。19歳、史上初のルーキーのチャンピオンになった。

この年から4年連続でワールドタイトルを獲得。
これは11度のワールドタイトルを持つケリー・スレーターでさえ達成していない快挙だが、ここである事件が起こる。

PHOTO: © WSL/Pat Nolan

2011年に向かうオフシーズン、トラブルに巻き込まれて全治6週間の怪我を負ってしまうのだ。

この事件で精神的にも影響があったのか、2011年は3位に終わり、前年にCT入りしてきたカリッサ・ムーアが初のワールドタイトルを獲得。
ここから10年はカリッサ、2011年にCT入りしたタイラー・ライトとの3人のライバル関係が続く。

ステファニーがウィメンズサーフィンのレベルを飛躍的に上げることに貢献したことは揺るぎない事実だろう。

2012年には復活して5度目を決め、2014年、2018年に6度目、7度目を獲得。

そして、2022年の「Rip Curl WSL Finals」で8度目のワールドチャンピオンになった。

ちなみに背番号の88は映画「キルビル」のキャラクター・クレイジー88にちなんで付けた。
彼女にとって8は縁起の良い数字だそうだ。

ステファニーと五十嵐カノア

PHOTO: © WSL/Beatriz Ryder

8度目のワールドタイトルを獲得したステファニーに関係する人物は沢山いるが、特にこの一年多くの時間を過ごしたのは五十嵐カノアだ。
二人は2021年から元CT選手のトム・ウィタカーのコーチの元で戦うチームメイト。
全てが決まった後、大勢が見守る中でハグを交わしていた。

「一年間、クイーンの活躍をすぐ側で見ることができたことを光栄に思っているよ。あなたは本当に特別で、次の世代のための素晴らしいお手本さ。チームにとって素晴らしい1年だった」

ステファニーとケリー・スレーター

PHOTO: © WSL/Pat Nolan

ケリーがキングならステファニーはクイーン。
きっとこの構図はずっと変わらないだろう。

駐車場までの距離があるトラッセルズではカートを使用するが、そこにはケリーが同乗していた。

「まだステファニーが少女だった最初のゴールドコーストでの試合と優勝を初めて見た時から波の上での力の抜けた優雅さと美しいスタイルで、現代で最も偉大な女性サーファーになる運命にあると感じていたよ。数年前、彼女がまだ競技を続け、世界タイトルを獲得しているとは思ってもみなかったことでしょう。今年の彼女のスタートは混乱からだったけど、競技とは面白いもので、思いもよらないタイトルを獲得した。カリッサを大絶賛しながらも8つめのタイトルを手に入れたんだ。カリッサは彼女の背後に迫っており、競い合うことは間違いないでしょう。ステフは生まれ持った才能があるけど、カリッサのような強い挑戦者がいなければ、ここまで強さを深く掘り下げることはできなかったと思う。二人とも素晴らしいサーファーで、見ていて惚れ惚れするよ。カリッサがタイトルを獲得できなかったことがどれだけ辛かったか想像できる。でも、彼女は潔く負けを認め、プロとして対処したんだ」

34歳という年齢を考えると記録更新の今年で引退の二文字も見えてくるが、オリンピックでの金メダル獲得という目標も残っている。
ともかく、サーフィン界に金字塔を打ち立てたステファニーを心から祝福しよう。

(空海)