夢を抱いて日本を飛び出した24歳。泣きながらブリスベンを去った33歳。引き寄せられるように舞い戻った36歳。どうしてこの国は、こんなにも私の心を掴んで離さないのだろう……。暮らし旅ライター金子 愛がつづる、美しくも苦いオーストラリアでの日々。第8話は「生まれて初めてバックパッカーズに泊まる」の巻。


これまでのあらすじ>>>【私のオーストラリア物語】

ビーチ天国ゴールドコースト




時は2006年、ブリスベン移住生活を始めて約1週間が過ぎたある日のこと。突如海が見たくなり、やってきたのはゴールドコースト。日が暮れるまで海を堪能した筆者、気づけばサーファーズ・パラダイスの街には明かりが灯り始めていました。軽く夕食を済ませ、街を散策したら、足早に今宵の宿バックパッカーズ・ホステルへ。


バックパッカーズ・デビュー





世界中から旅慣れたバックパッカー達が集う「バックパッカーズ・ホステル」。通称バッパーと呼ばれる安宿で、アメニティーは最低限。キッチン・トイレ・バスルームは共用です。今回、予約したのはドミトリーと呼ばれる4人用の相部屋。



部屋の扉を開けると聞こえてきたのは、「グ〜、グ〜」どうやら既に誰かが眠っている様子。電気をつけるわけにもいかず、手探りで空いているベッドを探す筆者。時間はまだ21時を回ったところ、荷物を置きひとまず共有エリアへ行くことに。


旅人たちの交差点





ビール片手にビリヤードを楽しむ男性客達、ほとんどがヨーロッパ出身と見受けられます。バッパー初心者の筆者は、どう振る舞えば良いのかさっぱりわからずソワソワ。



そんな中至極自然な趣きでその場に溶け込む、日本人女性客を発見。聞けば彼女はラウンド(車でオーストラリア各地を一周)中だそう。ここ数カ月はあちこちのバッパーを転々としているとのこと。そんな彼女の旅話は、実に刺激的なものでした。


ラウンド中の大ピンチ





車で「エアーズロック」を目指していた時のこと。荒野のど真ん中で、車がまさかのガス欠。灼熱の太陽の下、なす術もなく途方に暮れること数時間。偶然通り掛かった給油車に助けられ、窮地を脱したのだそう。どうやらそこは地元民すら使わない道だったらしく、給油車が1週間に一度、月曜日に通るだけ。運よくその日だったから助かったものの、そうでなかったら……。当事者でない筆者が想像しただけでも身震いがします。



しかし「苦労して辿り着いたエアーズロックからの眺めは、涙ものの絶景だった」。そう語る彼女の笑顔はどこか誇らしげ。すっかり旅の武勇伝に魅了された筆者、部屋に戻りベッドに入った後もなかなか寝付けません(いつか私も……)。まだ見ぬ素晴らしい景色に想いを馳せながら、眠りについたのでした。

バックパッカーにはなれそうもない





翌朝目覚めると、目の前に広がっていたのは荒野ならぬ荒屋(あらや)。ところどころ剥がれた壁紙、ボロボロのベッド、気のせいか何だか体が痒い気がする。極め付けはシャワールーム、お世辞にも清潔とは言えず、裸足では歩けないほど。そうか、昨夜は暗くて何も見えなかったんだ……。

何というか、夢から一気に覚めたような感覚です。そして気づいてしまった、私は潔癖症だということに。リュック一つで世界を旅するバックパッカーに憧れを抱きつつも、自分には無理かもしれないと悟った日。記念すべきバッパーデビューを飾ったばかりではありますが、これを機に引退となるやも知れません。

注意)キレイで清潔なバックパッカーズも、たくさんあります。

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