比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者の筆者が、世界の情勢を考える人気シリーズ。今回は、回復する旅行需要のなかにおいて、中国との緊張関係が続く台湾への渡航を考えてみる。※写真はすべてイメージです

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徐々に旅行が楽しめるように。しかし意識すべきリスクも



予断は許さない状況ではあるが、日本内外でも新型コロナウイルス・オミクロン株の感染拡大が落ち着きを見せ始め、昨今は外国人旅行者の入国が再び開放。日本人の海外旅行も勢いを取り戻しそうな雰囲気だ。


仮に、日本人の海外渡航も復活すれば、台湾を訪れる日本人も必然的に増加することだろう。台湾は非常に親日的で、タピオカやゴン茶などデザート絡みで若者の人気が絶えず、日本から距離も近く人気の観光地だ。

しかし、海外旅行・海外渡航にはリスクがあるのも事実である。そして、今日、台湾を巡っては国際社会で大きな問題が浮上している。いわゆる台湾有事を巡る問題だ。


中国との緊張関係が続く「台湾」



近年、台湾と中国との間では政治的な緊張が続いており、中国がいつ台湾に軍事侵攻するかについて内外で議論が活発化している。台湾の現政権は台湾独立を強く意識し、米国を中心とする欧米との関係を強化している。

しかし中国は長年、台湾を不可分の領土と位置づけており、台湾の独立を巡る動きには武力行使も辞さない構えだ。そして、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻があり、台湾市民の間では有事への懸念が拡がっている。

たとえば、台湾のシンクタンク「台湾民意基金会」が3月に発表した世論調査結果によると、台湾有事に際に米軍が台湾を助けると回答した人は34.5%となり、昨年10月の65%から30%あまりも急落した。米軍がウクライナに直接派遣されなかったことから、中国が侵攻してきても米軍は何もしないのではと、台湾市民の間で心配が拡がっているとみられる。



台湾有事が現実的な問題にも



最近、台湾政府も中国による軍事侵攻に備えて民間防衛に関するハンドブックを初めて市民向けに公表したり、軍事訓練義務の期間を現行の4カ月から延長する可能性を示唆したりするなど、台湾有事を現実的な問題を受け止めている。

また、2022年5月30日に、中国軍の戦闘機や電子偵察機、早期警戒機など延べ30機が台湾南西部の防空識別圏に進入したが、中国軍による威嚇は既に常態的なものになっており、台湾軍も周辺で中国を想定した軍事訓練を実施している。


旅行の際に注視すべきこととは



台湾有事がすぐに発生するわけではない。これは中長期的問題だと考えられる。しかし、台湾渡航を検討する際、台湾有事のことは頭の片隅には入れておくべきだろう。仮に有事なれば、その影響はウクライナの比ではない。

ロシアが侵攻しても、ウクライナは陸続きであり、ポーランドやモルドバなど隣国に避難することが可能だ。しかし、台湾は島であり、退避することは難しい。台湾への渡航はついては、今後の中台関係の行方を注視する必要があろう。

 
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