非常食や衣料品などが詰め込まれ仕分けがいらない備蓄品のセットが、宮城県石巻市で考案されました。きっかけは震災で、避難所を運営した職員の経験でした。

仕分け不要の災害支援備蓄セット

石巻市の福祉作業所「みどり園」です。

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この日、作業所の利用者と職員が食料品や衣類などの箱詰め作業の手順を確認しました。箱の中に入れられるのは、飲料水やレトルト食品、生理用品など合わせて75品目。これらを1つの段ボール箱に詰め込んだのが「G(ガーディアン)72BOX」です。被災者にすぐに届けることができ避難所生活で必要な物資が1箱で3日間分、入っています。

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また、物資の仕分けの負担を大幅に軽減させることが期待されています。

きっかけは震災での経験

きっかけは、13年前の東日本大震災で物資の仕分けを担当した石巻市職員・鈴木公美さんの経験でした。

石巻市市民生活部 鈴木公美次長:
「当時、支援物資を担当していて、その時に仕分け事業がとても大変だった」

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鈴木さんは震災発生直後、市役所へ避難してきた住民の窓口として避難所の運営に奔走しました。避難先案内市役所には、多い時にはおよそ300人の住民が身を寄せあったといいます。

石巻市市民生活部 鈴木公美次長:
「みんな何も持たずに濡れた状態で来ていたので、私たちも心のケアを含め何か支援をしなくてはいけないなと思って対応していた。夜になるとみんな不安になっていた。その日の夕方に食べるものもなかったので」

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元々、市役所は指定避難所ではなかったため食料品などの備蓄は十分ではありませんでした。そこで、震災直後には職員が協力して、庁舎1階にあったスーパーから運べるだけの食料品をリレーで2階へ運んだといいます。

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石巻市市民生活部 鈴木公美次長:
「(2階へ食料を)上げてる途中にどんどん津波が入ってきて、危険があるということで中断したので、全部は上げきれなかった」

日記に記された極限状態

鈴木さんが当時のことを記した日記。避難してきた住民のケアにあたる職員としての苦悩と、いち被災者としての不安が刻まれていました。

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鈴木さんの日記:
「物資、食料、水の手配に追われる」

家族の安否すら確認できない中、避難所での業務に追われました。

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石巻市市民生活部 鈴木公美次長:
「『夜中、仕事の疲労と家族の安否が不安で胸が苦しくて大泣きした。実家の被害も大きくてなんとかみんな助かってほしい』と書いてある」

食料品は住民優先で、一方職員は…

庁舎2階に運んだ食料品は避難してきた住民に優先的に配りました。

石巻市市民生活部 鈴木公美次長:
「歩くのがやっとなくらい段ボールを積み上げて、そこから役所の庁舎に避難してきた人に配っていた。1人では大変だったので、3人くらいで私が取って次の人に手渡していた。賞味期限もあったので確認しながら」

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一方で、職員全体には十分に行き渡らなかったといいます。

石巻市市民生活部 鈴木公美次長:
「一番食べ物の近くで仕事をしていたのですが、なかなか口に入れることはできなかったですね。とにかく避難してきた人を第一優先に対応にあたっていた記憶があります」

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支援物資の仕分けを何とかしたい

その後もほかの自治体などから届く支援物資の仕分けに追われた鈴木さん。

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被災者に平等に配るためには、物資の内容や数を把握する必要がある…。

鈴木さんは、当時の負担の状況を以前から付き合いがあり、災害事業などを展開していた有馬朱美さんに相談しました。有馬さんが被災者や自治体に聞き取りを重ね「G72BOX」を開発、2012年に事業化しました。

ガーディアン72 有馬朱美社長:
「石巻市の職員の思いからプロジェクトが生まれた。障害のある方々に大活躍してもらい今度は災害現場で人を助ける」

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去年11月には石巻市の社会福祉協議会と梱包作業の委託契約を結びました。ボックスの保存期間は5年。食料品を始め、期限のあるものは5年以上の猶予があるか確認します。梱包作業では、有馬さんの会社から福祉作業所に1箱当たり350円の報酬が支払われます。作業所では1か月あたり最大1000箱の梱包を目指しています。

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ガーディアン72 有馬朱美社長:
「障害のある方たちにどんどん参加してもらって、『自分たちが作ってるよ』という(過程)を災害時に色んな人たちのを底支えする位置づけになってもらいたい」

「G72BOX」に寄せる期待

梱包されたボックスは作業所から直接、協定を結んだ全国25の自治体の公民館や体育館に備蓄されます。

石巻市市民生活部 鈴木公美次長:
「有馬さんが形にしてくれたおかげ」

ガーディアン72 有馬朱美社長:
「思いがなかったら、これも生まれなかったから」

過酷な経験から生まれた「G72BOX」に、鈴木さんは期待を寄せています。

石巻市市民生活部 鈴木公美次長:
「どのような時に災害が起きても、(避難所)に行けばボックスがあるという安心だけでも助かる命がたくさんあると思う全国に広まっていけば」

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災害時に被災者を救い職員の負担を軽減する「G72BOX」。鈴木さんの教訓を全国へ広げる取り組みは続きます。

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「G(ガーディアン)72BOX」の商品名は、人命救助のタイムリミットとされる「被災後72時間」を支援しようと名づけられたということです。
ボックスに梱包されているのは、お湯を用意できない状況でも食べられるレトルト食品のほか、化粧落としや水のいらないシャンプーなど避難所生活でも体や髪をきれいに保てる物資が詰め込まれています。