東日本大震災発生からから13年となりました。元JNN三陸臨時支局長の龍崎孝さんが、2月、宮城県南三陸町歌津を訪ね、自分たちが住んでいるまちに、にぎわいを創出しようと奮闘する夫婦を取材しました。

龍崎さん、歌津を訪れる

南三陸町歌津、震災で津波などによる甚大な被害があった町です。

TBC

元JNN三陸臨時支局長 龍崎孝さん:
「歌津の漁港ですね。震災の時気仙沼にいましたが、志津川に向かう途中で南三陸の入り口が歌津、ここもすごい被害だって驚きながら通った記憶がありますね」

TBC

町の商業施設、南三陸ハマーレ歌津で龍崎さんが待ち合わせをした女性は…。

高橋美由紀さん:
「こんにちは、高橋です。きょうは遠くからありがとうございます」

TBC

高橋さんは、夫の大吾さんと『ワジアンカフェ アイマキ』を町内で営んでいます。店の名前は、歌津に“愛の種まきを”という意味です。

南三陸の食材をふんだんにつかった、地元では珍しい本格タイ料理店。

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カラッと揚げたバジルとスパイスが香るガパオ炒めは、県外からその味を求めて訪れる人も多い人気のメニューです。

震災の津波で自宅を失う

歌津出身の大吾さんは震災前、岩手県一関市にレストランを開いて歌津の自宅から通っていました。しかしあの日、津波で自宅を失いました。

TBC

高橋大吾さん:
「震災の時は上の娘が(町内の)保育所にいたので、(保育所の)先生が裸足のまま、子どもたちを抱えて逃げた」

高橋美由紀さん:
「海の近くだったんですね、保育所が下の子がちょうど妊娠が分かった頃でした」

高橋さん夫婦

幼い娘たちを抱えながらの再スタート。長女に「歌津にいたい」と言われたことで、大吾さんは決心。2017年、今の自宅兼店舗として歌津の高台に店を開いたのです。

TBC

高橋大吾さん:
「子どもたちが帰ってくる受け皿じゃないですけど、みんな仙台とか東京行っちゃって帰ってこないというのが多いので。それだったら魅力あるまちにして、子どもたちを雇用できて、それで人口が劇的に減らない、みなさんが暮らしやすいように」

町の中心部に公園ができた

大吾さんが懸念する町の未来。歌津の中心部、南三陸ハマーレ歌津前は、震災から10年以上、更地の状態でした。しかし去年、町によって公園が整備されました。

TBC

龍崎孝さん:
「最近できたんですか?」
高橋美由紀さん:
「そうなんです。やっと待ち望んで去年の春、ふわふわドームっていう名前で(できました)。こどもがぴょんぴょん、とにかく跳ねるのが好きで、天気のいい日は結構ここで跳ねてますね。お母さんたちはそれを寒いって言いながら眺めている」
龍崎孝さん:
「でもね、震災からの復興っていうと、どうしても生活のことが優先になっちゃうので」
高橋美由紀さん:
「やっとそれが落ち着いてからこういうのに多分、作る余裕がまちにできたのかなっていう感じもありますよね」

TBC

二人は公園から、美由紀さんの思い出の場所へ移動しました。

あの頃の歌津は…

震災前の写真が残っています。

TBC

高橋美由紀さん:
「神社のところからずっとこう生活道路が一本、がーっと通って、商店街の。一番歌津では活気があった道路がここにあったんですね」
龍崎孝さん:
「このまんまですね」

TBC

高橋美由紀さん:
「見事に家が並んでましたよね。夏はここで夜市をやったりとかして子どもたちと楽しんだ覚えがありますよね」
龍崎孝さん:
「歌津のにぎわいの中心がこの目の前の場所だったんですね」
高橋美由紀さん:
「ハマーレ歌津もできましたけど、手付かずな感じがちょっとあったような感じで何もない(更地の状態)時間が10年以上あったので、もうみんな、ここは変わらないのかなっていうぐらいのイメージだったと思うんですけどね。少しでもにぎわいを、あのね、写真のようにね、戻ればうれしいですよね」

TBC

歌津に新たなにぎわいの拠点を

歌津をにぎわいのあるまちに。その一心で美由紀さん夫婦は2022年、南三陸ハマーレ歌津前の「町の土地活用」の公募に手を上げました 。 公募に手を挙げたのは高橋さん夫婦だけでした。

構想は2年半。クラウドファンディングや国の補助金などで資金面の課題を乗り越え、ついに、歌津の新たな拠点となる建物が設置されました。

龍崎孝さん:
「素敵な建物ですね。どんなお店なんですか?」
高橋美由紀さん:
「飲食、雑貨の販売もあり、観光情報の紹介スペースもある店になります」

TBC

その名も、「歌旅人(うたび)」。歌津の人も、旅人も、くつろぎ、交流の場になればと願いを込めました。

龍崎孝さん:
「私こういう中見るの大好きなんですけど、ちょっとこれ、わくわくする感じが」高橋美由紀さん:
「これからだって感じしますよね」

TBC

店を作る前、およそ100人にアンケートをとった美由紀さん。「ひとり用のソファが欲しい」「子どもも一緒に時間をすごしたい」「テイクアウトできる商品が欲しい」など、快適な空間づくりは、地元の人の声に応えたものになりました。

TBC

龍崎孝さん:
「真ん中のビジネスっぽい感じ。目の前、海じゃないですか」
高橋美由紀さん:
「これを大事にしたくて、窓を大きくしました」
龍崎孝さん:
「明かりも光もはいってくる」

TBC

高橋美由紀さん:
「特等席のイメージでつくりました。この景色を見てほしいっていうのがすごくあった。歌津の人は、ずっと小さいころから切り離せないものだと思うんですよね。良いも悪いも、ずっと海とかかわりを持って生きていくっていうのはどうしてもついてくるものなので。
『海と一緒に生きていきましょう』っていう意味も込めつつ、やっぱり海をただ見ているだけで癒されるところがあるじゃないですか」

お店の名物は、志津川産のタコを使ったかき揚げドッグです。龍崎さんが試食します。

TBC

龍崎孝さん:
「いますね、タコさん!うん!タコの弾力とかき揚げのパリッとした感じ。そしてパンのもちっとした感じ。絶妙ですね!南三陸の恵みがぎゅっと凝縮した新しい名物」
高橋美由紀さん:
「(名物)になるといいですね」

TBC

メニューは公園でも食べやすいよう、テイクアウトも充実。美由紀さんのこだわりです。

歌津の人たちの熱量が夫婦を突き動かした

夫の大吾さんは近くのタイ料理店「アイマキ」で腕を振るい、美由紀さんは「歌旅人」で訪れた人をもてなします。夫婦それぞれの場所で歌津を盛り上げています。二人の想いは―。

TBC

龍崎孝さん:
「よくそういう新しいチャレンジ大変だと思うけど、お二人に手を挙げさせた強烈な想いはどこにあったんでしょう?」
高橋大吾さん:
「もちろん地元なので、自分の生まれ育ったところがさびれたら嫌ですし、もっと盛り上げていきたいので、自分のできる限りのエネルギーを注ぎたいと思います」高橋美由紀さん:
「クラウドファンディングで、思った以上に歌津のことやこの辺のことを考えている人がいたっていうことがわかったので、それが結構後押しになって。進めていくうちに何回もやめればよかったなと思ったことも沢山あったんですけど、このみなさんの熱量みたいなものをいただきながらここまで来たと思います」

TBC

2022年に行ったクラウドファンディングでは、目標の380万円を超えるおよそ400万円の支援がありました。

龍崎孝さん:
「歌津の方がこのお店を作ってくれたということでしょうかね」
高橋美由紀さん:
「これからもそういうことになりますよね」

 新しい交流の拠点「歌旅人」は、2月中、テイクアウト限定で営業していましたが、3月10日にグランドオープン(イートインを開始)しました。

【tbcテレビ ひるまでウォッチン!より】