2023年4月に当時54歳の父親を殺害した罪などに問われている次男と長男の妻の裁判員裁判。11月11日は、次男の実の母親に対する証人尋問が行われた。被告らのグループが当初殺害しようとしていたのは父親ではなく母親だったことがこれまでの公判で明らかになっている。実母が語ったのは、敦子被告との異常な関係性。

敦子被告らは実母に売春をさせ、保険金目当てで、ある男性との再婚まで持ちかけていたという。
(#1、#2 、#3、#4、#5 全5篇の#4)
直哉被告の母、敦子被告とは20年来の仲
起訴状などによると、村上直哉被告と村上敦子被告は2023年4月17日未明、宮城県柴田町西船迫1丁目の住宅の玄関で、村上隆一さんを刺身包丁で刺して殺害したうえ、敦子被告の元夫らに依頼し、刺身包丁などを処分させた罪などに問われている。

直哉被告は殺害された隆一さんの次男で、敦子被告は隆一さんの長男の妻である。
今回の証人尋問に出廷したのは直哉被告の母親だ。敦子被告とは20年以上前に、通っていたパチンコ店で知り合ったという。直哉被告はまだ幼く、直哉被告の兄、すなわち敦子被告の夫は、小学校高学年だった。
なお、直哉被告の母は、売春や美人局を行ったことがあると認めているものの、立件はされていない。
敦子被告らに売春を強要される、きっかけは入院代
直哉被告の母は、被告らがいる法廷ではなく別室からカメラ越しに証言をした。まず語られたのは、敦子被告らに強要された売春についてだった。

検察:
「売春をはじめたきっかけは」
直哉被告の実母:
「敦子に『お前が私の母にかぜをうつした。病院代を払え』と言われた。最初は断っていたが、敦子の当時の交際相手に詰め寄られ、支払うと約束した」
検察:
「お金はどう作ったのか」
実母:
「出会い系サイトを使って私が売春をした」
検察:
「頻度は」
実母:
「ほぼ毎日。敦子らに稼ぎのノルマを決められ、朝から夜遅くまでかかることもあった」
多いときは1日13万円の稼ぎを要求されることもあったという。稼いだ金はほとんど敦子被告に渡していた。
検察:
「ノルマを達成できなかったら」
実母:
「次の日のノルマに加算される。稼げない日が続くと敦子らに暴行されるのは当たり前だった」
ある時は、敦子らにダイニングテーブルで殴られ頭から出血。病院で頭を縫う治療を受けたが、その後敦子被告が無理やり抜糸したという。
検察:
「抵抗はしなかったのか」
実母:
「敦子には『霊能力』があると思っていた。何をしてもばれる、余計なことはしないと決めていた」
売春を続けたのは、架空の人物「サヤマ」存在
検察:
「売春をつづけた理由は他にあるか」
実母:
「付き合っていたと『されている』男の借金返済のため」
検察:
「付き合っているとされているとは」
実母:
「一度も会っていない」
検察:
「会っていないとはどういうことか」
実母:
「やり取りはメールだけ。感じの良いメールを送ってくるので、付き合うことになった」
検察:
「どうして知り合ったのか」
実母:
「敦子の周りの人と聞いた。『サヤマ』という名前だった」
これまでの公判で『サヤマ』が架空の人物であり、実母の恋愛感情を利用して売春を続けさせていたことが分かっている。
売春で家を空ける実母「直哉の面倒をみられなかった」
実母が売春を始めたころは、直哉被告はまだ小学生だった。隆一さんとも離婚をしていて、実母と直哉被告の2人で暮らしていた。
検察:
「小さいころの直哉被告ら兄弟は」
実母:
「長男(敦子被告の夫)は既に高校生で敦子と生活していた。直哉被告は家に一人だったので、お金を渡してコンビニでご飯を買ってもらっていた」
検察:
「直哉被告の面倒はみなかったのか」
実母:
「面倒をみたくてもみる時間がなかったんです…直哉は私を許せなかったと思う」
実母が語った敦子被告との歪んだ関係性。後に実母は当時を「洗脳」されていたとも振り返った。また、直哉被告の生い立ちについても明かされた。証言を通して徐々に分かってきた被告らの人間性はこの後に続く実母の再婚にまつわる話でさらにはっきりとする。
再婚、敦子被告から「保険金受け取れるのでは?」
直哉被告の実母には、殺害された隆一さんの他にも結婚した男性がいる。敦子被告の勧めで、なんと一度ならず二度もこの男性と結婚しているというのだ。
実母:
「敦子に男性を紹介された。『大手企業の下請けをしているので金がある。結婚してはどうか』と言われた」
検察:
「恋愛の気持ちはあったか」
実母:
「なかった」
2人は結婚するも2013年に離婚し、その後再婚している。
検察:
「再婚の経緯は」
実母:
「男性が胃がんを患ったと知り、敦子に話したら『再婚したら?』と提案された」
検察:
「なぜ再婚を勧められた」
実母:
「生命保険の受取人になれるのでは、と言われた」
男性が契約していた生命保険は2つ。再婚後にはどちらとも実母が受取人になったという。男性は2018年に亡くなり、実母は保険金などあわせて2000万円ほどを受け取った。
検察:
「受け取った保険金はどうした」
実母:
「敦子に手渡した。証拠を残さないために手渡しを選んだ」
検察:
「生命保険目的で再婚したことに抵抗はなかったか」
実母:
「人の命に対しての抵抗感はあったが、敦子の地雷を踏みたくなかった」
敦子被告に言われるがまま保険金目当てに再婚し、受け取った約2000万円もの保険金を敦子被告に渡した実母。ここでも敦子被告への異常な「忠誠心」が垣間見えた。
そして話は、敦子被告らが企てた実母の殺害、それを知った実母の逃亡計画へと移っていく。
聞かされた自分の殺害計画「死ぬまで崖から突き落せ」
2022年4月ごろ、直哉被告の実母は被告らからの逃亡を決意した。
検察:
「なぜ逃げようと思ったのか」
実母:
「敦子たちといるのが嫌になった。あとは敦子の実姉から、敦子たちが私を殺そうとしていると聞いたから」
敦子被告の実姉は、被告らとともに美人局をして2023年12月に詐欺と詐欺未遂の罪で執行猶予付きの有罪判決を受けた。被告らと近しい関係の実姉だが、危険と分かりながらも実母を助けようと動いたのだ。逃亡する資金が足りなかった実母は、元夫の隆一さんに助けを求めた。
検察:
「どのように頼んだ」
実母:
「敦子の実姉の家に隆一くんを呼び、私と隆一くん、敦子の実姉夫婦の4人で話をした。そこで私を殺そうと敦子たちが相談しているところの録音を聞いた」
検察:
「録音の内容は」
実母:
「『旅行に誘い、そこで崖から突き落とそう』『それでもヒクヒク生きているなら死ぬまで繰り返そう』と話していた」
実母は、自分が殺される理由として「美人局の口封じ」や「保険金目当て」を挙げた。隆一さんから20万円ほどを受け取り、2022年5月7日、実母は県外に逃亡した。逃亡先では仕事を見つけ、貧乏ながらも普通の生活を送れていることが「幸せ」と実母は語った。実母が逃亡した約1年後、隆一さんは殺害された。
敦子は「いつも安全な場所にいるずるい人」
検察は最後に、被告らへの思いを尋ねた。
検察:
「敦子被告に言いたいことは」
実母:
「あなたは自分の安全のために周りの人を『駒』にしていた。あなたはずるい人です。頭が良い人でもあったが使い方を間違えていた」
直哉被告の実母は声を震わせ、ところどころ言葉を詰まらせ、直哉被告への思いを口にした。
検察:
「直哉被告に言いたいことは」
実母:
「隆一くんは直哉をとてもかわいがっていた。そんな父親に対して…、なんてことをしたのか。自分の罪に向き合って立ち直って欲しい」

実母が話す間、敦子被告は落ち着いた様子で前を向いたままだった。それと対照的に直哉被告は、実母の話を聞きたくないのだろうか、耳をふさいだり、頭を抱えたりと終始落ち着かない様子だった。後の公判で直哉被告は「実母の話は嘘ばかりで悔しかった」と話していた。
公判の争点「敦子被告が殺人に関与したか」
改めてこの裁判の争点を整理したい。初公判で直哉被告は隆一さんの殺害を認めた一方で敦子被告との共謀は否定した。敦子被告は、「共謀も殺害もしていない」と否認した。すなわちこの裁判の争点となるのは「敦子被告が殺人に関わったのか」という点だ。今回の証人尋問で直哉被告の実母は「周りの人を『駒』に自分は安全な場所にいる」と口にした。敦子被告にとって直哉被告は『駒』だったのか。これからの公判で真実は明らかになるのか。
判決は11月25日に下される。


プロバイダならOCN













