今回は、こちら『特殊詐欺被害』についてお伝えしていきます。今年に入っても多くの特殊詐欺被害のニュースを耳にします。今や他人事ではなくなってきました。
「深刻な被害」特殊詐欺の実態は
まずは、こちらの数字をご覧ください。この数字は、去年一年間、宮城県内で起きた特殊詐欺被害の件数と被害額です。被害件数は323件、被害額はおよそ5億円にのぼりともに過去5年間で最悪の数字となりました。今年(1月〜4月)に入ってもすでに110件の特殊詐欺事件が発生しています。

今回、tbcでは、実際に特殊詐欺の被害にあった方に話を聞きました。そこで明らかになったのはその巧妙な手口です。
「すり替え型の特殊詐欺」の手口
仙台市青葉区に住む70代の女性です。4月、特殊詐欺グループにキャッシュカード2枚をだまし取られ現金80万円を引き出されました。

被害女性:
「その時は、ただただ電話に応じてしまった。何にも疑うことをしなかった」
始まりは「特殊詐欺防止センター」を名乗る女から固定電話にかかってきた電話。被害女性が出るまで番号を代え繰り返しかかってきたといいます。

被害女性:
「表示圏外という文字が画面に表示されて、その後、042・044の市外局番から電話がきた。詐欺グループでよく使われる名簿に(名前が)載っている郵便局と銀行から現金が引き落としされている」

その後、電話は県警の担当者と名乗る女へと繋がれました。
被害女性は、不正に引き出された現金を戻すために必要な手続きの説明を受け女から次のように指示されたと言います。
被害女性:
「(メモに)それぞれのカードの暗証番号を記入してください。それがないとあなたの引き落としされた金額は補償されない。そのメモはなくさないでください」
女性は、電話の指示通り自宅を訪れた警察官を装った男にキャッシュカードと暗証番号が書かれたメモを手渡すと、男は女性の目の前で封筒にいれたと言います。そして…。

被害女性:
「届け出印が必要になるので、届け出印ありますかと言われて」
男はそういうと女性が印鑑を取りに言っている隙に別な封筒とすり替えました。
被害女性:
「寄り添ってくれる感じの話し方だったり、安心して聞いていられるような対応だった」

これは、キャッシュカードすり替え型の特殊詐欺だということです。
すり替えられた封筒の中身は「トランプ3枚」
改めて流れをまとめると、まずは自宅の固定電話に表示圏外や知らない市外局番から何度も電話がかかってきたということです。

電話に出ると特殊詐欺防止センターを名乗る女から説明を受け、その後、県警の担当者と名乗る女に電話をまわされました。そこで「補償するためには警察官がキャッシュカードを確認する必要がある」などと言われたということです。
また、この警察官を名乗る女とのやりとりでは、自宅の間取りの情報なども聞かれたということです。

そうした話をしている最中に警察官を装った男が自宅を訪問。被害女性によりますと自宅を訪れた警察官は、私服で警察手帳は提示されなかったということです。

警察官を装った男は、キャッシュカードと暗証番号が書かれたメモを受け取ると封筒に入れ、被害者に印鑑を取りに行かせているうちにすり替えたということです。
すり替えられた封筒の中身はトランプ3枚だったということです。

こうした中、県警は先日、別の特殊詐欺事件で逮捕した男のスマートフォンの中にあった特殊詐欺グループの犯行マニュアルを公開しました。
被害者は「客」キャッシュカードは「板」
特殊詐欺マニュアル:
「本部から連絡があったら客宅へ向かい板のすり替え、キャッチしたら銀行へ」

被害者を「客」キャッシュカードを「板(いた)」と表現する文書県警が公開した特殊詐欺の犯行マニュアルです。
マニュアルには、「すり替え」と呼ばれる巧妙な手口が記されています。
特殊詐欺マニュアル:
「キャッシュカードを受け取り封筒に入れる」
「このとき封筒は客に渡さない、絶対に封筒から手を離さない」

封筒を受け取ると、相手に印鑑やボールペンなどを取りに行かせその間に、別の封筒とすり替えます。そして、別の封筒を相手に渡し自宅に保管するよう伝え、キャッシュカードが入った封筒を持ち去る手口です
現在分かっている特殊詐欺グループの構成です。
高齢者で固定電話がある自宅が狙われやすい
特殊詐欺グループには嘘の電話をかける「かけ子」、実際に自宅を訪問しキャッシュカードを窃取する「受け子」、それから現金を引き出す役の「出し子」などがいます。この「受け子」や「出し子」は、SNS上のいわゆる「闇バイト」で募集されていたり、リクルーターによる勧誘を受け特殊詐欺グループに加担しているのが現状です。

特殊詐欺にはキャッシュカードを窃取する以外にもオレオレ詐欺や還付金詐欺、架空料金請求詐欺などがあり、被害者の8割が65歳以上の高齢者で固定電話がある自宅が狙われやすいとみています。

県警では、こうした詐欺被害を減らそうと、4月から仙台市内の6つの署に特殊詐欺プロジェクトチームを発足させ、啓発活動にあたっています。
高齢者だけじゃない!幅広い世代で増えるサポート詐欺被害
仙台市内の各署に設置された特殊詐欺プロジェクトチームでは、特殊詐欺を未然に防ごうと高齢者の自宅を訪問し、手口の説明などを行いました。

警察官:
「手口としては、市役所職員や警察官を語って自宅の固定電話に電話かけてきて、医療費の還付がありますとかキャッシュカードとるという被害が増えています」

特殊詐欺は、高齢者の自宅の固定電話を狙った犯行が多く、県警は注意を呼びかけています。
仙台北警察署生活安全課 三浦仁志課長:
「今、まさに固定電話が狙われている状況です。5月1日から電話会社では70歳以上の方を対象に、相手の番号が分かるサービスや非通知の着信を拒否するサービスが無料となるので、そういった防犯効果の高いサービスを利用したり、常に留守番電話設定にするなど、この機会に各ご家庭で固定電話対策を積極的に講じていただきたい」

被害に合うのは高齢者だけとは限りません。現在、パソコンでインターネットを閲覧中にウイルス感染したかのような嘘の画面を表示し、遠隔操作ソフトをダウンロードさせるなど、サポートの名目で金銭を騙し取ろうとするサポート詐欺の件数は増えていて、幅広い世代で被害が確認されているということです。

詐欺被害にあわないためにも不審に思ったらまず警察や親族に相談してほしいとしています。
