シリーズSDGs「つなごう未来へ」です。宮城県気仙沼市の会社が始めた新たな取り組みです。それは、ある生き物の肉や骨を使った「ペットフード」の開発です。海の恵みを余すことなく活用しようという企業の挑戦とは。
わんちゃんが夢中で食べているのは?
仙台市内のドッグカフェです。イヌたちが夢中になって食べているこの「おやつ」。いったい何から作られているのでしょうか。

石渡商店 石渡久師社長:
「こちら、サメの軟骨です。(Q これはサメのどの部分の骨なんですか?)これはサメの中骨です。肉がついているのをきれいに削ぎ落して角ばっている部分をカットしていく」

そうです、サメの肉や骨から作られていました。商品は、サメ肉のジャーキー、サメの骨のスティック、そして、エサにかけるふりかけです。

では、このペットフードを作っている会社はどこなのでしょうか。
フカヒレ製造会社がサメ肉でペットフードを製造
それは、気仙沼市で60年以上に渡ってフカヒレの製造、販売を行ってきた石渡商店です。

石渡商店 石渡久師社長:
「サメは捨てるところがなく、ほとんど使われている。気仙沼にサメが集まる理由というのはフカヒレ屋さんがいて、サメ肉屋さんがいて、それでも残ってしまった部分も肥料に変えたりすべて使っているが、私たちはもっとサメのいいところを引き出す方法がないかというところで有効活用を考えてきた」

主力商品のフカヒレ。

原材料となるヒレ部分はサメ全体の10%ほどで、肉などの他の部位はこれまで加工業者などに引き取ってもらっていました。そのサメ肉や骨などを自社で活用する方法を模索する中で考えたのが、ペットフードでした。

5月に完成した専用工場では、ひと月あたりおよそ8トンを生産できます。
では、なぜサメ肉はペットフードに適しているのでしょうか。
サメ肉はペットにとって低アレルギー!
石渡商店 石渡久師社長:
「サメの一番の特徴は低カロリーで高たんぱく、低脂質、さらに、糖質がゼロでほとんどのイヌ、ネコは、サメを食べたことがないので低アレルギーなんです。人間への海の栄養素をイヌにも供給できるのではないかということで、栄養素を活かした商品づくりを(している)」
サメ肉のペットフードはほかのメーカーでも販売していますが、石渡商店のフードは「新鮮さが強み」だと言います。水揚げから加工、販売までを気仙沼で行うため鮮度が落ちると製造過程で発生するアンモニアのにおいも抑えられるということです。
ウィズドッグ中野栄駅前店 櫻井美香店長:
「みんな食いつきがよくてすごく食べてる。ワンちゃんの足腰にもすごくいいんじゃないかと思う。タンパク質はすごく大事だと思う」

増子華子キャスター:
「サメ肉のジャーキーです。イヌにも大人気なんですが人間も食べることができるので、私も一緒にいただきます。香ばしいです。スルメイカのような食感。言われなければサメとは分からない」

石渡商店は、震災の津波で本社工場が被災、震災翌年には山間に工場を移転し経営を続けてきました。

ペットフード事業にたどり着いたのは、震災後の全国からの支援がきっかけだったといいます。
「イヌの喜ぶ顔と飼い主の喜ぶ顔が増えればいいな」
石渡商店 石渡久師社長:
「震災後に地元のことや会社のことについて様々な協力をしてくれる方が気仙沼にきてくれて、サメの活用について考える時間がたくさんあったのですが、人向けの商品しか頭になかったものが、いろいろなアイデアをもらう中でペットフードにサメ肉を使用したらどうなんだろうということで」
自身も大の犬好きだという石渡さん。ペットフードが、サメのまち気仙沼を代表する新たな地場産品になればと考えています。
石渡商店 石渡久師社長:
「イヌ連れの旅行客もたくさんいますので、気仙沼をひとつの休憩場所にしてもらっておいしいもの食べたり海をみてもらったり、気仙沼にきてもらってひとつでもイヌの喜ぶ顔と飼い主の喜ぶ顔が増えればいいなとおもっている」

海の恵みを余すことなく活用し、人にもイヌにも笑顔を生み出す新たな挑戦が始まっています。
石渡商店のペットフードは、ドッグカフェウィズドッグのほか、南三陸さんさん商店街などで販売しています。7月には工場のとなりにドッグランも開業する予定だということです。