東北大学には100年前の関東大震災に関する貴重な「波形記録」が残っています。過去の「記録」から見えたこと、いまに繋がる教訓とは?

東北大学地震・噴火予知研究観測センター 松澤暢教授:
「これが関東地震の波形記録です。(波形が)振り切れずに記録されているのは、非常に珍しいと思います」

TBC

煤を塗った紙に刻まれた曲線。100年前、関東大震災の揺れを正確に捉えた「波形記録」です。震源から300キロ以上離れた仙台市向山の観象所で記録されたものです。地震の揺れが大きすぎて地震計が振り切れてしまうと正確な波形記録が残らないといいます。

TBC

東北大学地震・噴火予知研究観測センター 松澤暢教授:
「(当時の宮城県で記録された)強震計でこれだけの振幅が出るのは、なかなかないことなので、いかに巨大な地震だったのかが分かります」

TBC

東京や神奈川などで震度6を観測し10万5000人以上が犠牲となった関東大震災。北海道から四国まで広範囲にわたって揺れを観測しました。マグニチュードは「7.9」と推定されていたものの、東京などの地震計が振り切れたり破損したため解析に耐えうる記録が少なく根拠に乏しいと言われていました。

TBC

こうした中、地震の規模を突き止めた研究者がいます。

関東大震災のマグニチュードを突き止めた男

名古屋大学減災連携研究センター 武村雅之特任教授:
「私が調べた記録でも岐阜の測候所と(仙台市)向山観象所の記録は一番きれい」

TBC

名古屋大学の武村雅之特任教授です。仙台や岐阜、徳島など数か所に残る波形記録に着目。気象台や大学を訪ね歩いて資料を集め地震の規模を「マグニチュード8.1±0.2」と割り出し、地震の規模としては1995年の阪神・淡路大震災を上回ることを裏付けました。

TBC

名古屋大学減災連携研究センター 武村雅之特任教授:
「関東大震災で一番教えてくれる教訓というのは、次世代にきちんとした記録を残していく。何十年もたって学問レベルが進んだ時点でもやっぱり新しいことを発見することができる」

TBC

関東大震災の波形記録が残る宮城では当時、震度3程度の揺れを観測したとされていますが、この100年で、街並みは大きく変わりました。

高層ビルが影響を受ける長周期地震動

小笠原悠記者:
「100年前の街並みと大きく異なるのが建物です。仙台の中心部などでも、高層ビルやマンションが立ち並びます。特に懸念されるのが大きい建造物ほど影響を受けやすいとされる長周期地震動です」

TBC

ビルの高層階を大きく長く揺らす「長周期地震動」。12年前の東日本大震災では震源から700キロ以上離れ「震度3」だった大阪市でも55階建てのビルが揺れに見舞われました。

TBC

名古屋大学減災連携研究センター 武村雅之特任教授:
「(長周期地震動は)一応予測はされているが、必ずしも完璧に分かっているわけではない。予想もしないような揺れになってしまうと被害が出ない保障はない」

高層マンションに住む人の備え

仙台市内のマンションの12階に住むこちらの男性。

12階の部屋に住む男性:
「揺れ方とすると、ゆらゆらというよりは一気にきてそれが長く続いた」

TBC

去年3月、市内で震度5強を観測した地震で、家具や書棚が倒れ部屋中に物が散乱しました。

12階の部屋に住む男性:
「滑り止め。テレビとかレンジとか上に置いているものが滑らないように。あとは対策とすると、外泊で部屋を空けるときはテレビだけ下に降ろしておきます」

TBC

マンションの防災組織も物資の備蓄や避難訓練など対策に力を入れています。

びゅうパルク南仙台防災倶楽部 小島浩明代表:
「(2011年の)震災当時、電気がないことに非常に苦労しましたので、簡単に操作できる発電機です」

地震への備え、それは「記録」

合わせて取り組んでいるのが「記録」です。東日本大震災当時の各部屋の写真や居住者へのアンケートなど、これまでに起きた災害について細かくまとめています。

TBC

びゅうパルク南仙台防災倶楽部 小島浩明代表:
「人は変わっても建物は残っていきますから、自分の住まいがどういう特性があるのかを把握するのは大変重要だと思います。皆さんの声を聴いて何に困ったかを踏まえ防災対策を整えています」

TBC

「記録」が果たす役割。100年前の地震の規模を明らかにした名古屋大の武村特任教授は、過去の記録を辿ることは未来の防災につながると考えています。

名古屋大学減災連携研究センター 武村雅之特任教授:
「過去に起きた災害をきちんと勉強しておくことは(次の災害を)予測するときのヒントになる。(現代では)地道に調査をしたりデータを残す人は非常に少ない。そこは我々はきちんと反省をして、関東大震災の直後の人たちに学ぶ必要があるのではないか」

TBC

関東大震災について研究を続ける名古屋大学の武村特任教授は「過去の災害を学び、一人一人がいま置かれている環境を把握し、リスクを減らす努力をすることが大切」と話していました。