暑さの記録が続出した今年の夏。宮城県内の野菜農家は猛暑の影響を受けています。出荷量に大きな打撃を受けながらも前に進むネギ農家を取材しました。
特産品のネギに異変
「ダメですね。いや~ダメです。もったいない廃棄です」
石巻市の農家、高橋真也さん。石巻の特産品「スリムネギ」を栽培して10年になります。

年間を通して出荷していますが、この夏の猛暑で出荷量が減少しているといいます。
農家 高橋真也さん:
「今回の猛暑の関係で(ネギが)焼けてしまった。今回のように(被害の出たハウスが)1棟2棟と続けて何棟もなるようなことは今まではなかった」

高橋さんによると普段は、ビニールハウス1棟で、およそ150キロのネギを収穫できるということですが、このハウスでの今回の収穫はほぼゼロだということです。
農家 高橋真也さん:
「7月からの猛暑で7月・8月の出荷量がガクっとさがっている

高橋さんが部会長を務めるJAいしのまきスリムネギ部会の出荷量です。6月は平年を上回ったものの、その後徐々に落ち込み、8月は平年の57.7%に留まりました。
この夏、県内は暑さの記録が次々に出ました。6月から8月の仙台の平均気温は、25.6度と観測史上最も高くなりました。地球温暖化や太平洋高気圧の張り出しが、記録的に強まったことが原因とみられます。
仙台朝市の野菜にも猛暑の影響が
仙台市民の「台所」、仙台朝市。店頭に並ぶ野菜にも猛暑の影響が出ています。

客:
「野菜の出来が悪いと思う。水気が足りない野菜」
居酒屋勤務の男性:
「(レシート見て)なんでも高くなってきてるね。地球自体が異常な感じで、今年は特に暑かった」
こちらの青果店も販売する野菜の取り扱いに苦労しているといいます。
今庄青果東四市場店 庄子阿佐緒店長:
「ある程度見本で出しておいて、(在庫は)冷蔵庫にしまっておいたり、客から注文を受けてから冷蔵庫から出す。野菜の出荷量自体もかなり少なくなってきてる。秋のはじめから中盤くらいまではかなり野菜が少ない状態が続くと思う」

仙台市中央卸売市場の9月の野菜の入荷量は、主な野菜14品目のうち、ネギやナスなど半数の7品目が平年を下回る見通しです。
石巻市の農家、高橋真也さんもネギの栽培に頭を痛めています。
ビニールハウスの気温は55度以上
農家 高橋真也さん:
「根っこが全部乾燥してしまって、全く根っこがはってない状態になってしまう」

高温によって土が乾燥。ネギの根も乾いてしまい、成長が止まってしまうのです。この日(8月31日)、石巻の最高気温は30.6度でしたが、ビニールハウスの中の気温は55度以上にもなっていました。

ネギの根を高温や乾燥から守るために「水かけ」は欠かせません。しかし、水かけのタイミングを間違えると葉を傷めてしまうといいます。
農家 高橋真也さん:
「ネギの表面に水滴がつくんですよ。この水滴が蒸発する場合もあれば、水滴自体が(虫眼鏡の)レンズみたいになって、(水滴に入った日光が)葉っぱ自体を焼いてしまう。水をかけても立っている状態が一番いい。これが常に曲がってるような状態の時に(水を)かけてしまうと、水の重さで地面に葉先が着いてしまう」

水かけは日差しが弱い朝や夕方、もしくは曇りの日に行います。さらには、成長具合を見てタイミングや量を調節しなければならない繊細な作業なのです。
例年は、1日から2日おきに水かけをしますが今年は、毎朝・毎晩行って出荷できるネギがようやく確保できました。
収穫したネギは検品した後、出荷まで冷蔵庫で保管されます。
今後のネギの出荷、巻き返しはできるのか
この日、出荷をすることができたのはスリムネギ部会28人のうち17人。出荷量は、およそ930キロと例年の6割に留まりました。
JAいしのまきスリムネギ部会 佐々木広行さん:
「(今年は)生育ステージのバランスが完全に崩れている。今播種したものは10月末から11月頃収穫。そのころまでとにかく生産量が下がっていく。本当に厳しい状況です」

高橋さんは、今後の出荷量の巻き返しを狙っています。
農家 高橋真也さん:
「朝・晩は若干冷えてきてますので、生産量をそろそろ戻せるんじゃないかなと思います。季節問わず、出荷数量を増やせるように頑張りたい」

最新の1か月予報によると、向こう1か月の気温は平年より高い日が多い見込みです。もうしばらく、ネギの栽培には厳しい暑さになりそうですが、高橋さんらの奮闘は続きます。
高橋さんによると、スリムネギは通年出荷することができ、ある程度暑さにも強いということです。それでも真夏のビニールハウス内の気温は40度くらいまでが理想で、今年はそれをはるかに上回る気温の日が多く生育が非常に難しくなりました。高橋さんは、今後も例年以上にネギの管理に注意することで、安定したネギの出荷を目指したいと語っています。