病院の勤務医をやめ在宅医療を始めた医師がいます。高齢化が進む中、新型コロナの流行もあってニーズが高まっている「在宅医療」患者に寄り添いたいと診療を続ける医師の姿を追いました。
勤務医から在宅医療専門診療所の院長に
佐瀬友彦医師:
「足のむくみ見ますよひざとか痛くないですか?」
この日訪れたのは、仙台市内に住む88歳の男性の自宅。腰椎圧迫骨折で寝たきりの状態となった男性の血圧や心拍数などを診断しました。
佐瀬友彦医師:
「在宅医療というのは患者さんメインの治療になりますので、患者さんの希望に沿った治療を行います」

佐瀬友彦医師46歳。7月に仙台市内に開設された在宅医療専門の診療所の院長になりました。スタッフは、看護師や診療アシスタントなど5人。小さな診療所ですが、青葉区の全域や宮城野区、泉区の一部など広い範囲をカバーしています。
なぜ、佐瀬さんは在宅医療をはじめたのか
以前は、外科医として東北大学病院などで勤務していた佐瀬さん。在宅医療をはじめた理由があります。
佐瀬友彦医師:
「もっと患者さんの身近な医療をしたいと、よりそった医療を、各家族を巻き込んで、医療をしたい。さらにその先には患者さんの地域と一緒に医療をして患者さんの環境を変えていきたいと、気づいてそれが実現できるのが在宅医療だと思った」

若者が多いイメージのある仙台市ですが、高齢者のひとり暮らし世帯率は28.9%と県内で最も高くなっています。通院が難しい人もいる中、在宅医療のニーズは高まっています。

佐瀬さんは、看護師、診療アシスタントの3人一組で患者の自宅へ向かいます。この軽乗用車が在宅診療の足となります。
佐瀬さん、患者の自宅での流儀
佐瀬友彦医師:
「車の中では今から行く患者さんの病態を復習して、何をやるかとか」
訪問したのは、青葉区に住む草薙政人さん(90)の自宅。草薙さんは、今年3月に脳梗塞で倒れ入院しました。左半身に麻痺が残りましたが、退院し、1ヶ月ほど前から在宅医療を受けています。

看護師が体温や血圧を測定し、佐瀬さんが健康状態をチェックします。家族に前回訪問時からの変化を確認し、患者本人とのコミュニケーションも欠かさず行います。
草薙さんの妻・よう子さん(80):
「ぐっすり寝てるから、昼間寝せなければ」
佐瀬医師:
「デイサービス楽しくやられてるんですね」

草薙さんの妻・よう子さん(80):
「(記者:Q 入院生活よりこっちの方がいいですか?)いいですよ。入院されてると心配。うちに一緒にいて、こうしてお医者さんに来てもらえるのが一番ですね。何かあればすぐに連絡すればいいから」
仙台市の在宅医療の現実
ニーズが高まる一方、仙台市で在宅医療を行う診療所は、人口10万人に対して5.8施設と全国平均11.4のおよそ半分人手不足などが課題となっています。

佐瀬さんも緊急時は休みの日でも患者のもとにかけつけます。
佐瀬医師:
「快適な治療方法を一緒に考えていく。患者さんの思いをそれはダメだと切ってしまうことはしないように注意している」
看護師 志賀友裕さん:
「先生は患者さんとのコミュニケーションの取り方とか医院長の中で若い先生だと思うんですけど、すごく上手で、お話を聞く姿勢とかがすごく私も見習いたいなと思っています」

必要とする人に医療を届けるため、佐瀬さんはきょうも患者と向き合います。
佐瀬友彦医師:
「自分が生まれ育った仙台でどうしても働きたい、仙台でお世話になった方々に恩返しをしたいという思いがあります。それで自分ができることは訪問診療、在宅医療を通じて仙台の今後の医療を維持していければなという思いで今後も働いていきたいと思います」

佐瀬さんが訪問している患者は主に、高齢に加え、けがや病気で通院ができなくなった人たちで1人暮らしの方も多いということです。医師不足が指摘される中在宅医療の担い手をどのように増やしていくかも地域医療の課題となっています。