東日本大震災で津波被害から再建を果たし、手作りのケーキとパンで笑顔を届け続ける老舗の洋菓子店が宮城県気仙沼市にあります。ガレキの中から奇跡的に見つかった「宝物」とともに菓子作りに励み続けるベテラン職人の姿を追いました。小笠原記者の報告です。

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去年12月、クリスマスを前にうっすら雪化粧した気仙沼市の内湾地区。洋菓子店「ブリアン」では、職人たちがケーキ作りに追われていました。

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店主の千葉秀男さん82歳。15歳から洋菓子づくりを学び、腕を磨いてきた大ベテランです。

ブリアン店主・千葉秀男さん(82):
「昔は1000個ぐらい作ったけど、いま半分もいかない(Qケーキのこだわりは)スポンジが美味しいか美味しくないかで決まるんだよ(Q千葉さんにとってのクリスマスは)苦しみます!」

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店を構えて45年以上。クリスマスの期間は、思わずブラックジョークが飛び出すほどの忙しさです。しかし、2011年は厨房に立つことができませんでした。

再起を後押しした泥まみれの「レシピ」

2011年3月11日、東日本大震災の津波で千葉さんの店舗兼住宅は全壊。奇しくも、3月11日は千葉さんの70歳の誕生日でした。

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ブリアン 千葉秀男さん:
「誕生日だから早くあがって寿司でも食うかなんて言ってたのさ」

変わり果てた店を見て「引退」も考えたという千葉さん。震災発生から1ヶ月後、ガレキの中からあるものを見つけます。

千葉秀男さん(当時71):【2012年12月取材】
「泥まみれになって(作業台の引出しに)入ったままだった」

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見つかったのは、手書きのレシピ。30年以上書き溜めたもので、一枚一枚、泥を拭いて修復しました。

千葉秀男さん(当時71):【2012年12月取材】
「宝物みたいな感じ。これがなかったら(また店を)やらなかったかも」

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改修工事や調理器具を一新し、2012年10月、気仙沼市内湾地区の震災前とほぼ同じ場所で店を再開させました。

お客さん:
「いつも子どもと来ていてオープンするの待っていた。うれしい」
千葉秀男さん:
「儲けなくてもいいから、まずお客さんに喜んでもらえるように」

82歳になった今も現役の洋菓子職人

ブリアン 千葉秀男さん(82):【2023年8月取材】
「ここでカメラ向けられるとね、オレ手が震えてダメだ(笑)」

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東日本大震災の発生から間もなく13年。千葉さん、80歳を超えても技は衰えません。

千葉秀男さん(82):【2023年8月取材】
「焼き菓子だけでも70~80種類、ケーキも冷凍のお菓子も100は軽く超えてる。大手と違ってさ、手作りの良さを出さないと」

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創業当初からの看板商品があります。特注のアーモンドを使った「けせんぬまちゃん」です。

千葉秀男さん(82):【2023年8月取材】
「本当の名前はチュイールっていうのさ。屋根の瓦の意味。気仙沼でやるから、けせんぬまちゃん」

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けせんぬまちゃんを購入した客:【2023年8月取材】
「お盆のお客さん用に買いました」

この日は、お盆の集まりや帰省する家族のためにお菓子やパンを買い求める人が次々訪れていました。

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購入した客:【2023年8月取材】
「東京に行った妹が帰省するので大好きなパンを買ってお迎えしようと。揚げ生モンブランパン」

千葉さんをそばで支え続けてきた人がいます。

82歳の洋菓子職人を支え続けた人

千葉さんの妻、三和子さん76歳です。

妻・三和子さん(76):【2023年8月取材】
「お盆はね結構忙しいの。私の顔を見に来るお客さんもいるからね(結婚して)53年。楽しみ半分、苦しみ半分」

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一年で一番忙しいクリスマスの時期を迎えました。去年12月24日、クリスマスイヴの午後、子どもたちを連れて来店した女性がいます。佐藤菜美子さんです。自分も子どもの頃からブリアンに通っているといいます。

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大きな箱を受け取って気仙沼市内の自宅へ。注文したのは、一番大きいサイズの生クリームデコレーション。

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待ちきれない子どもたちが一足先にいただきます。

子ども:「おいしい!」

佐藤さんにとって「ブリアン」は、亡き母との思い出の場所でした。

亡き母と通った「ブリアン」

佐藤菜美子さん:
「ブリアンさんに行くと母の事を思いながら懐かしいなと。震災でいろんなものが無くなって消えてしまった中で再建してやっていただけるのは嬉しい」

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一方、たくさんの人に笑顔を届けた千葉さん。外がすっかり暗くなった頃、ようやく仕事を終えほっと一息ついていました。

千葉秀男さん:「疲れたんだ…」

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怒涛のクリスマスから1週間。2024年、夫婦で過ごす静かな正月。

千葉秀男さん:
「(今年の)目標?何もねえ。1日1日、お客さんに負けないように作るだけでございます」

その言葉通り、1月3日の初売りからフル回転です。

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千葉秀男さん:「感謝、感謝の気持ちでね。儲けなくていいから従業員の給料とお客さんさサービスすればいいと思ってやってんだ」

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大震災を乗り越え、厨房に立ち続けてきた千葉さん。これからも手作りの味で地域に笑顔を届けます。

千葉さん、津波被害から店を再建した後、もう一つの岐路に立ちました。区画整理事業のため3年の休業を経て2020年の夏に営業を再開しました。まだまだ現役のベテラン職人、2月はバレンタイン、忙しい日々が続きます。