Amazonが「プライマリケア」に本格進出した。米国の有料会員が対象で、月額たったの9ドルで好きな時に、好きなだけ、専用アプリを通じたプライマリケアにアクセスできる新サービス。オンラインで処方薬が買える「Amazon Pharmacy」も3年前に始まっており、薬の販売を含むヘルスケア領域でのエコシステム構築をにらんだ動きだ。プライマリケアを巡っては、世界各国で医師不足が顕在化しており、ヘルステックを活用した課題解決への期待感が大きい。

有料会員サービス「Prime」のメンバーはOne Medicalを格安料金で利用できる(Amazon提供)

プライマリケアとは:
家庭医(一般医)などによって日常的に提供されるヘルスケア関連のサービス。一般的には初期診療および継続的なケアを担う役割を持ち、咳や発熱、腹痛、吐き気などの急性疾患や、高血圧や糖尿病などの慢性疾患まで幅広く対応する。各国の医療保険制度によって運用は異なるが、例えばNHS(国民保健サービス)が有名な英国では、専門医による病院での診療は、基本的に家庭医からの紹介でしか利用できない。 日本でも、医療需要がピークを迎えると言われる「2040年問題」の解決に向けてプライマリケアの重要性が高まっており、関連スタートアップも登場している。

<目次>
・Amazon、有料会員対象に月額9ドルでプライマリケア
・NHS、ヘルステック導入でコスト削減を実現
・TECHBLITZが選ぶ、プライマリケア関連のスタートアップ5選
 Sensely(米国)
 TytoCare(米国)
 Patient 21(ドイツ)
 Patina(米国)
 ファストドクター(日本)

Amazon、有料会員対象に月額9ドルでプライマリケア

 Amazonは2023年11月、米国の有料会員を対象に、サブスクリプション型の医療サービス企業であるOne Medicalが提供するプライマリケアを月額9ドルで利用できる新サービスを打ち出した*。通常は年間199ドルのところ、Amazonの有料会員であれば月額9ドルまたは年間99ドルで利用できる。*Amazonは今年2月、One Medicalを39億ドルで買収した

 サービスの利用者は、ビデオ通話を利用したバーチャルケアに24時間いつでもアクセスできる。診察待ちの時間などが大幅に短縮されると好評で、対面での診察を希望する場合は全米に約220カ所展開する診療所で別料金で対応も可能。発熱や肌トラブル、アレルギーといった一般的な症状に関しては、アプリを通じた問診で処方箋を出してもらえる。

NHS、ヘルステック導入でコスト削減を実現

 英国のNHS(国民健康サービス)は、慢性的な医師不足や長時間にわたる診察待ちが長年の課題となっているが、リモート問診技術を提供するSenslyと手を組み、「AskFirst」を導入してサービス水準の向上に取り組んでいる。

 AskFirstは、NHSが提供する医療サービスへの「最初の一歩」という位置付け。アバターとチャットボットを用いたプラットフォームを通じて、医者にかかる前の対処などに活用されている。登録者は50万人を超え、AskFirst導入後に14%のコスト削減に成功したという。

「症状チェッカー」や診察予約などの機能が備わったAskFirst(NHS提供)

TECHBLITZが選ぶ、プライマリケア関連のスタートアップ5選

 TECHBLITZ編集部が選ぶ、プライマリケア関連のサービスや技術を提供するスタートアップ5社はこちら。

Sensely

Sensely
NHSも採用したAIアバター問診
設立年 2013年
所在地 米国カリフォルニア州サンフランシスコ
 Senselyは、対話型プラットフォームを用いた健康管理ソリューションなどを提供。日本語を含む30カ国語に対応している。代表的なサービスの「症状チェッカー」は、ナースアバターに症状を伝え、複数の質問に答えることで、適切な対処法が提示される。アバターとチャットボットを用いたプラットフォームは、健康管理ソリューションに限らず、保険会社の加入手続きや問い合わせ対応など、顧客支援の入口となるサービスに活用されている。
image: Sensely

TytoCare

TytoCare
自宅で受診できる小型デバイス
設立年 2010年
所在地 米国ニューヨーク州ニューヨーク
 TytoCareは、誰でも自宅から診察を受けることができる遠隔医療用小型デバイスやプラットフォームを開発。同社の検査デバイスを使うことで自宅などから簡単に体温や喉、耳、皮膚、心拍や肺音などの状態を確認できる。検査データはアプリで医師に送られ、医師はビデオ通話で患者のモニタリングやデータに基づいた診断を行う。
image: TytoCare

Patient 21

Patient 21
通院による患者の負担を軽減
設立年 2019年
所在地 ドイツ・ベルリン
 Patient 21は、通院による患者の負担や医師の事務管理の手間を削減する、プライマリケア向けのデータ連携プラットフォームを提供。慢性病の遠隔での治療や状態管理といった、通院の手間を省く新しいサービスが続々と登場している中、通院が必須となる歯科などの領域においては未だにDX化が進んでいないという課題の解決に取り組む。
image: Patient 21

Patina

Patina
65歳以上の高齢者向けプライマリケア
設立年 2020年
所在地 米国ペンシルベニア州フィラデルフィア
 Patinaは、65歳以上の高齢者に特化したプライマリケアのスタートアップ。信頼性や関係性を重視したサービスで、専門チームによるバーチャル訪問を提供する。サービス利用者は、対象となる現状のヘルスプランを維持したまま、専門家や各種サービスへのアクセスが得られる。
image: Patina

ファストドクター

ファストドクター
日本のプライマリケアを考える
設立年 2016年
所在地 東京都港区
 ファストドクターは、全国7,000万人に対応する日本最大級のプライマリケア医療プラットフォーム「ファストドクター」を運営するヘルステック企業。主な事業として「救急往診・オンライン診療事業」「在宅医療支援事業」「自治体支援事業」「企業連携・支援」を手がける。経済産業省による政府公認のスタートアップ企業支援プログラム「J-Startup」の選出企業。
image: ファストドクター