「冬至」は昼の時間が一年で一番短くなる日。太陽の高さが最も低くなるところから、昇った太陽も長く空にあることなく沈んでいきます。この日を境にして日脚は伸びていきます。新暦の現代ではクリスマスや忘年会と活気づき、年の瀬から新年へ移り変わる忙しい時期と重なっています。旧暦では人々の生活の中に根付いた文化がありました。それは現代の私たちにとっても季節を感じる大切な節目であることには変わりありません。ひとしきり歩みを緩めて、今年は「冬至」をていねいに過ごしてみませんか?

「復活」の意味が込められています

「冬至」は江戸時代に出版された『暦便覧』によると「日南の限りを行きて、日の短きの至りなればなり」とあります。太陽の南中高度が最も低くなることを「南の限りを行く」としているのが暦らしい表現です。新暦では12月22日頃ですが旧暦では11月中頃にあたります。師走を迎える前の仲冬の後半「冬至」は、厳しい寒さが始まる晩冬への節目となるのです。
「一陽来復」は陰陽説からきている「冬至」を表すもう一つの言葉です。陰陽説は神羅万象を陰と陽の相互作用と捉えた中国古来の考え方。「夏至」を陽気の極みとするならば「冬至」は陰気の極み。すべてが陰気となった中にたった一つの陽気が生じる「一陽来復」を「冬至」と呼応させるようになりました。
「冬至」が終われば季節は晩冬。「小寒」「大寒」と寒さはこれからが本番です。厳しい寒さの中ではカケラほどの陽気を感じるのも難しいかもしれません。しかし春に向かって確かにその芽は用意されている、というのが「一陽来復」の意味するところでしょう。
寒さの中で太陽の暖かさほどありがたいものはありません。陰である夜の長さが極まり、陽である昼の時間が延び始めることから「冬至」は生命力が復活する節目として祝う習慣があるのです。

冬至梅の蕾
冬至梅の蕾


「冬至」は祝いながら厄除けも、人々の祈りとなっています

新暦の中で生活している私たちにとって12月といえば、赤や白・緑に金をあしらったクリスマス飾りやイルミネーションの輝きではないでしょうか。「冬至だから…」といって街中が賑やかになることはありません。それでも八百屋やスーパーの野菜売り場にいけば、柚子の鮮やかな黄色が目に飛び込んできます。南瓜も普段よりもゴロゴロと数が増えオレンジ色の切り口を見せて色を放ち、家庭で「冬至」をささやかに祝う様子が感じられるのは嬉しいことです。
「冬至」の食卓に上がる代表は南瓜でしょうか。
南瓜が日本に到来したのは安土桃山時代の天正年間で、中国を経て九州に渡来したといわれています(諸説あり)。カンボジアからやってきたからカボチャ、という語源は既に知られるところですが、なぜ「冬至」に食べられるようになったのかは定かではありません。「冬至南瓜」は俳句の季語にもなっており生活に親しく溶け込んでいることがわかります。南瓜は保存がきくため冬の栄養源として大切にされていたということです。その大切な南瓜を「冬至」の日にとり出して食べるのが習慣になったのかもしれません。これまでの厄を払って、厳しい冬をのり越えていく祈りにも感じられます。
「本送る底荷の冬至南瓜かな」 黒田杏子
「縞目濃き冬至南瓜に刃を入れる」 木内彰志
「濡縁の南瓜に冬至近づきぬ」 大星たかし
現代の俳人たちの眼差しはささやかな日常に向けられています。一年の終わりを目の前に迎えた「冬至」を大切に、そっと生活の中に取りこむ心のぬくもりが込められているようです。
参考:
『日本国語大辞典』小学館
『角川俳句大歳時記』角川学芸出版

冬至といえば南瓜
冬至といえば南瓜

柚子を浮かべたら「冬至」は総仕上げ!

「冬至」に行われる風習はやってくる寒さに備えるための準備といえます。柚子を丸ごとお風呂に入れるだけの柚子湯は最も手軽な「冬至」の風習でしょう。
「ひと年のつかれとおもふ柚子湯かな」 成瀬桜桃子
広がる香りの中で温まった身体から静かに疲れが去っていく心地よさが感じられます。
柚子は果実にクエン酸や酒石酸などを含み、果皮にヘスペリジンや精油成分のピネン、シトラール、リモネンなどを含んでいるとのこと。これらの成分がお湯に溶けだし香りが大脳を刺激して気分を和らげたり、また毛細血管にも働きかけ血液の循環を促すことで、新陳代謝を盛んにしてくれるでしょう。寒くなると特に辛く感じる神経痛や腰痛、筋肉痛を和らげてもらえるのではと期待できそうです。
柚子湯の楽しみ方はさまざまです。柚子をそのままお湯に浮かべるほかに、皮だけ剥いて浮かべれば果皮の成分が、櫛形や輪に切って浮かべた時は果実からの成分がお湯に流れ出し、肌へあたるお湯の具合も変わってくることでしょう。ふだんは入浴剤を使っている方も、この日は生の柚子を存分に楽しんではいかがでしょうか。
「冬至」は時の流れの中の季節の節目。気に留めなければそのまま過ぎてしまう一日ですが、自然の中に生きていることを確認できる大切な日、と捉えれば向かう寒さへの気構えもおのずと湧いてきませんか。あなたらしいひとつのアイディアがあれば、この日が充実した特別な一日になることに間違いはありません。
参考:
鈴木昶著『身近な「くすり」歳時記』東京書籍

冬至といえば柚子湯
冬至といえば柚子湯