ミュージシャン、デザイナー、作家、俳優、職人など、異なるフィールドを舞台に活躍する“ふたり”が語らうTOKYO FMの番組「三井ホーム presents キュレーターズ〜マイスタイル×ユアスタイル〜」。10月2日(金)放送ゲストは、映画監督・黒沢清さんと女優・蒼井優さん。現在公開中の映画「スパイの妻」でタッグを組んだお2人。今年9月に開催された第77回「ヴェネチア国際映画祭」で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した同作を振り返りました。


<映画「スパイの妻」ストーリー>
舞台は1940年の太平洋戦争開戦間近の日本。満州で偶然、恐ろしい国家機密を知ってしまった優作(高橋一生さん)。彼は正義のため、事の顛末を世に知らしめようとします。妻の聡子(蒼井優さん)は、反逆者と疑われる夫を信じ、スパイの妻と罵られようとも、愛する夫とともに生きることを心に誓い、驚きの決断をすることに……。

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すでに共演経験のある蒼井さんと高橋さん。時代のうねりのなかで翻弄されながらも強い絆で結ばれた夫婦像を演じきりました。

◆黒沢監督が脱帽した“プロの俳優の瞬発力”

黒沢:お2人は何度か共演されていますが、僕は高橋さんとは初めてでした。信頼はしていたのですが、タイトな撮影スケジュールでしたから、うまく現場に馴染んでくるだろうか、と多少ヒヤヒヤしていたんです。

撮影2日目にして、最大の山場になるようなシーンがあったんですね。高橋さんは劇中で最も長いセリフをずっと言うようなシーンがあって、蒼井さん演じる聡子は、それを受けながら激しく返していく。ワンシーンのなかで、聡子もどんどん変化していく場面です。

映画の撮影では、最初に山場を撮るようなことは、実はけっこうあるんです。スタッフもまだまだ緊張していて、“ここを乗り切るんだ!”という意気込みで撮影に臨んだら、2人がサラサラと演じて、全然オッケーで。ちょっとドキドキしましたけど、それで手応えをいただいたので本当よかったです。

大変だったと思うのですが、お2人は絶妙のコンビネーションですね。演出は何もしていなくて、「このセリフはここで言って」とか、「このセリフを聞いているときは、ここまで来て座ってくれ」とか、僕はそういう指示を出すだけです。

ただ、そのシーンがすごく長いので、最後まで辿り着くのは、なかなか大変だったと思うのですが、2、3回やったらもうOKでしたね。すごいもんですね、ああいうときのプロの俳優の力量というのは。

蒼井:一生さんが完璧に準備して来られたので、私はその後ろを走って付いていった感じです。ただ、(山場のシーンを撮影開始)2日目に撮るのはつらかったですね。

(いつも役作りでは、撮影を重ねるごとに)これが正解、不正解、端を切り落として……という作業を、みなさんしていると思います。今回は、それができていないなかで、大事なシーンの撮影だったので、“わーっ”て思いながら、家に帰ってからも“あれで良かったのか?”と自分のなかで答え合わせをしていかないと間に合わないスケジュールでもあったので、一生さんが相手役で本当に助かりました。

黒沢:高橋さんに引きずられたとはいえ、蒼井さんの受けは完璧でした。あのシーンで高橋さんが満州で経験した恐ろしい出来事を見事に語って聞かせるのですが、映画を観た人は、あそこでそれを聞いている蒼井さんの方にも、ぐいぐい魅かれてくるみたいですよ。

蒼井:ありがとうございます。

▶▶番組Webサイトでは、この日の放送内容をPodcastで聴くことができます。ぜひお聴きください!

次回11月13日(金)放送のゲストは、河瀬直美さん(映画監督)×辻村深月さん(小説家)。どうぞお楽しみに!

<番組概要>
番組名:三井ホーム presents キュレーターズ〜マイスタイル×ユアスタイル〜
放送日時:毎週金曜 17:00〜17:25
ナビゲーター:田中麗奈
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/curators/