
※写真はイメージです
回転寿司チェーン「スシロー」での迷惑行為をはじめ、飲食店の客による迷惑行為が相次いで発覚しています。この影響により店舗側も対応を迫られ、自由に取ったり使ったりできる卓上の料理や調味料をなくす動きが広がっています。
◆相次ぐ飲食店での迷惑行為
ユージ:塚越さん、改めて今回の騒動について教えてください。
塚越:回転寿司チェーンの「スシロー」を始めとして、先月末から飲食店の客による迷惑行為が相次いで発覚しているということで、連日いろいろな報道がありますよね。SNSのTwitterやTikTok、Instagramなどで(迷惑行為をしている様を撮影した)動画を公開して、それらが拡散されて問題になるという典型的なケースです。
他にも「くら寿司」や「はま寿司」「すし銚子丸」といった回転寿司チェーン、さらには北九州を中心とするうどんチェーンの「資さんうどん(すけさんうどん)」、牛丼チェーンの「吉野家」などで迷惑動画が発覚するなど、これらの事例は数え切れないほどたくさんあります。
ユージ:そうした影響もあって、各店が対応を始めているということですよね?
塚越:そうですね。一連の問題のなかでも一番大きいのは「スシロー」です。警察に被害届を提出し、厳正に対処すると述べています。特にこの問題でスシローの株価が下がりまして、一時、168億円の損失を出したとも言われています。訴訟することで、“お客さんを守る”という姿勢を見せるとともに“企業イメージの回復”もおこなおうということですよね。
さまざまな企業で今回の件を受けて店舗対応を始めており、「スシロー」では、注文された商品以外の提供を取りやめるといった対応をおこなうほか、回転寿司ならではの楽しみが減ってしまいますが、テーブルとレーンの間の一部にアクリル板の設置も進め、衛生管理を徹底しようということです。
そして「くら寿司」では、3月上旬にもこれまで利用していたAIカメラを改良して、不自然に皿のカバーを外す行為などの、いわゆる不正行為の検知可能にし、「はま寿司」でもレーン上にカメラやセンサーを設置する検討をしています。
回転寿司以外でも、例えば「餃子の王将」は、テーブルに置いていた調味料を撤去して、注文後に提供する方法に切り変えているということで、飲食業界全体に影響が出ているという感じです。
◆SNSでの極端なバッシングや“晒し行為”はいけない
吉田:一方で、迷惑行為をおこなった少年を(SNS上などで)“晒す”行為も広がっていますね。
塚越:特にスシローの件は大きく取り上げられていまして、迷惑行為をおこなった少年の個人情報がネットで晒され、拡散されてしまったという状況です。最近は“暴露系”と言われる“問題行為を発見して拡散するアカウント”の動きも活発化していまして、その影響で拡散されやすいんですよね。少年の通う高校にも苦情が殺到して、報道によりますと、少年は高校を自主退学したと言われています。
こういう行為は、一般の人がやっている行為で“私刑”“私的制裁”になり、これも問題です。あとは、(自身のおこないや、それによって晒されてしまった個人情報などが)半永久的に情報がネットに残ってしまう「デジタルタトゥー」と呼ばれる問題もあると思います。
これを受けまして、スシローは「加害者に直接危害となるような行為を控えてください」と求めています。企業としても、お客さんを守る姿勢を見せることは大事ですが、加害者への“私刑”があると、逆にイメージ悪化にもなりますし、そこまでは望んでいないというところもあるかなと思います。
ユージ:なんで迷惑動画って拡散されちゃうんでしょうか?
塚越:まずは「ネット炎上の問題」。この手の話は10年ほど前からあります。例えば、従業員による迷惑行為が「バイトテロ」と呼ばれたこともありました。この10年の間で、ますます炎上・注目されるようになっています。
先ほど申し上げましたように、それを発見して、拡散するアカウントもけっこう多くなっていますし、根本にはやっぱり、それを我々が楽しんでしまうという点もあるのかなと思うんですよね。そして同時に、私たちメディアもこうした事件を煽り目的で報道してしまうこともあるので、ここは我々も自戒を込めて、慎みをもって報道する責任があると思います。
もう1つは「日本的な“内輪ノリ”の問題」があると思っています。この手の話だと、「SNSは誰でも(投稿を)見られることを若者はわかっていない」といった“リテラシー”の話題にされがちですが、若い人もそれは知っていると思うんです。わかってはいるけど、内輪のノリで面白いことしようということで、社会のルールを超えてしまう。「内輪ルールの優位性」と呼んでいるのですが、そういうものがあるのかな、と……。
仲間内での空気だけで考えて、社会ルールを超えてしまうこともあるので、リテラシー教育も大事ですが、本質的にはそういった狭いコミュニティの“内輪のルールが公共性より優先される習慣”を変える必要もあります。
あとは、やはり「デジタルタトゥーの問題」です。加害者のその場のノリで悪いことをするのも問題ですが、同時に“これは悪いことだから、なにかを言うのが正義なんだ”という気持ちになって、極端な私刑やバッシング行為に走ってしまうと、公共的な観点がお互いに削がれてしまうので、“みんな(=公共性)って何なんだろう?”ということを考えるのが重要かなと思います。
ユージ:確かにこういう迷惑行為をしている人って、ある種SNSを活用して「ちょっと注目されてみたい」とか「どんなリアクションが来るのかな?」っていう、先が読めていない状態での注目されたい意識というのはあると思うんです。ただ、その動画を「なんだこいつ!」って、自分のSNSで晒すのも、ある種その動画を使って自分が注目されたいというか、似ている部分がある気がするので、やっぱり慎重にいきたいですよね。
塚越:そうですね、いたちごっこみたいになっちゃっているのはダメだと思いますね。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/