作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」。第22回目放送となる今回は、2月14日(日)に開催された配信ライブイベント「TOKYO FM開局50周年記念 村上春樹 produce「MURAKAMI JAM 〜いけないボサノヴァ Blame it on the Bossa Nova〜 supported by Salesforce」(以下、「村上JAM」)の模様を凝縮して、3月29 日(日)にオンエア。

音楽監督・大西順子さんが率いる「村上JAMボサノヴァバンド」をはじめ、ジャズピアニストの山下洋輔さんと坂本美雨さんのパフォーマンス、村治佳織さんのクラシックギターをバックに村上さんが朗読を披露するなど、盛りだくさんの内容でお送りしました。この記事では、第2部に登場した山下さんとのトークの模様を紹介します。


山下洋輔さん



美雨:「MURAKAMI JAM 〜いけないボサノヴァ〜」、いよいよ終盤です。今日最後のスペシャルゲストをご紹介します。ジャズピアニストの山下洋輔さんです。

美雨:よろしくお願いします。

山下:お久しぶりです。

美雨:演奏活動が、もう60年に及びますけれど。日本のジャズ界を率いていらっしゃいました。春樹さんも山下さんのレコードを何枚も持っていらっしゃるとか。

村上:もちろん、何枚も持ってます。僕は日本にボサノヴァが入ってきたころ、まだ高校生だったんですけど、山下さんはもうその頃ジャズミュージシャンとして活躍されていたんですよね。

山下:はい、ちょうどやっておりました。渡辺貞夫さん、ナベサダさんが1965年にアメリカから帰ってこられて、日本のミュージシャンを集めてセッションバンドをやったんです。そこに僕は招かれて、大変嬉しかったんですけど、そのとき貞夫さんが、最初のセットはバリバリのビバップをやって、セカンドでボサノヴァをやったんです。それが初めて生で聴くボサノヴァでした。

村上:それまではハードバップみたいのをやっていたんですよね?

山下:そうですね。

村上:急にボサノヴァやれって言われて、どうでした?

山下:難しかったです。独特の和音があって、ビル・エヴァンスみたいな、とてもしゃれた和音がありましてね。それが楽譜になっていて、こういうふうに弾きなさいと、ボサノヴァの楽譜になってるんです。ちょうど1962年に(アントニオ・カルロス・)ジョビンがニューヨークのカーネギーホールでやったんですね、その数年後ですからね。

村上:やっぱりコードが難しいんですか、ボサノヴァは。

山下:そうでもないですが、カルロス・ジョビンさんのコードというのは独特でね。すごくジャズの名曲そっくりなんですよ。だからみんなが「ジョビンさんはジャズに影響を受けたんでしょう」と言うのですが、「いいえ、わたくしはそういうことはしません」と最後まで言っておられました。

村上:お会いになったことがあるんですよね。

山下:そうなんです。実はヴァ―ヴ・レコード(Verve Records:1956年創立のアメリカのジャズレコード会社)の50周年のお祭りがカーネギーホールでありまして、わたくし日本から1人だけ呼ばれて行って、ジョビンさんも来ていて、記者会見があったときに座ったら隣がジョビンさんでした。みんなジョビンさんに質問するのですが、わたしには1つも質問がこなくて(笑)。

ヴァ―ヴ・レコードがジョビンさんに言わせたがるわけですよ。「ジャズの影響でこのような曲ができたんでしょう」と。するとジョビンさんは、「いいえ、わたくしはジャズは知りません」なんて、誰が聞いても変な答えを隣でしているのを、まざまざと目撃しました。もう歳を取られていて、すべてはブラジルでできたんだと言いたかったんでしょうね。

村上:歳をとると頑固になるんですね。

山下:そうですよ(笑)。

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◆「村上RADIO」4月25日(日)から月1レギュラー化!
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」。2021年4月より、これまでの不定期放送から毎月最終日曜日放送のレギュラー番組にリニューアル。月1レギュラーの第1回となる4月25日(日)の放送は、「村上RADIO〜花咲くメドレー特集〜」と題して、新旧さまざまなアーティストが演奏する「3曲以上が連なるメドレー音源」を村上さんの解説付きでオンエア。どうぞお楽しみに!

<番組概要>
番組名:村上RADIO〜花咲くメドレー特集〜
放送日時:2021年4月25日(日)19:00〜19:55(※放送日時が異なる局があります)
放送局:TOKYO FM/JFN全国38局フルネット
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/