6月4日(日本時間5日、日付は以下同)、NBAはオーナー会議で22チームによる2019−20レギュラーシーズン再開プランに関する投票を行ない、ポートランド・トレイルブレイザーズを除く29チームから賛成票が集まったため、承認を得ることとなった。

 実際のシーズン再開には、5日に行なわれるNBA選手会(NBPA)との話し合いでの承認も必要となるのだが、“ここまできて再開を断念する展開にはならないだろう”というのが大方の予想だ。

 選手たちは今後、6月30日からトレーニングキャンプを行ない、7月7日に開催地となるフロリダ州オーランドへと移動。31日からレギュラーシーズン8試合を戦うことになる。

 そんななか、フィラデルフィア・セブンティシクサーズのオールスターセンター、ジョエル・エンビードが地元メディア『NBC Sports Philadelphia』へ「第一に、俺はみんなに今後も安全でいてほしいと思っている。これから先も何が起こるかわからないからな」と現状について語った。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、NBAがレギュラーシーズン中断を決めた後に、エンビードは医療救護に携わる人たちへ50万ドル(約5450万円)を寄付。あれから約3か月が経過した今、シクサーズの本拠地ウェルズ・ファーゴ・センターに集まった大勢のファンの前でプレーできないことを寂しく思いつつ、依然として安全性に重きを置いているという。
  シーズン中断時点で、シクサーズはイースタン・カンファレンス6位の39勝26敗。プレーオフまでに8試合戦うとはいえ、7位のネッツ(30勝34敗)とは8.5ゲーム差もあるため、順位が下がる可能性は皆無であり、むしろ順位を上げることができるかもしれない。

 26歳のエンビードは、今季ここまで平均23.4点、11.8リバウンド、3.1アシスト、1.3ブロックをマークしており、3年連続でオールスターのスターターの座を獲得。ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)がキャプテンを務める「チーム・ヤニス」の一員として出場し、結果的に敗れはしたものの、第4クォーターにはポストアップからゴールを積み重ね、22得点、10リバウンドと存在感を見せた。

 そして本人が「特にオールスターゲームの後、俺はメンタル面で完全に切り替えることができた。それまでは自分の一定の基準にも達していなかった」と振り返ったように、球宴後に調子が上向きに。左肩を痛めて5試合に欠場したが、出場5試合で平均27.6点、11.0リバウンド、2.4アシスト、1.4スティール、1.0ブロックと攻守に暴れ回った。

 プレースタイルの変更も数字に表われ、3ポイントの試投数を1試合あたり3.9本から1.8本へと減らした一方で、フリースロー試投数を同8.3本から11.4本へと増加させるなどペイントエリアを制圧。2月24日のアトランタ・ホークス戦では、フィールドゴール成功率70.8%(17/24)、フリースロー成功率93.3%(14/15)とショットを高確率で沈め、キャリアハイの49得点を叩き出した。
  シクサーズは5月27日からニュージャージー州カムデンにある練習施設を解禁。ブレット・ブラウン・ヘッドコーチ(HC)はエンビードに対し「プレーオフでは平均38分くらいプレーしてほしい」と語っていたと『The Philadelphia Inquirer』が報じており、指揮官から全幅の信頼を寄せられていることがわかる。

 2月下旬から背中の神経圧迫に悩まされてきたベン・シモンズも順調に回復し、シーズン再開後は再びプレーできる見込み。シモンズ、ジョシュ・リチャードソン、トバイアス・ハリス、エンビードの4人に、2年目のガードのシェイク・ミルトンを加えたスターター陣で臨むことになりそうだ。

 シクサーズは過去2年というもの、プレーオフではいずれもイースタン・カンファレンス準決勝で敗れてきた。昨年はチャンピオンとなったトロント・ラプターズ相手に第7戦まで持ち込むも、カワイ・レナード(現ロサンゼルス・クリッパーズ)の歴史的なブザービーターの前に惜敗。のちの王者を最も苦しめながらもあと一歩及ばなかっただけに、今季にかける思いは強い。
  また、5月中旬まで配信されていたドキュメンタリー『ザ・ラストダンス』がエンビードにポジティブな影響を与えており、マイケル・ジョーダンがシカゴ・ブルズのチームメイトたちをチャンピオンチームの選手へと押し上げたように、自身もシクサーズで同じようなことができると信じているという。

「俺は『ザ・ラストダンス』を真剣に観ていた。あれは面白かったよ。(ジョーダンと)いくつもの共通点があることがわかったし、たくさんの人たちが俺に対して『お前だってあの男になれるぞ』と言ってくれた。俺はこれからも努力を続けていくだけであり、それこそ今やっていることなんだ」

 ハリス、シモンズ、リチャードソンなど、シクサーズには優秀なタレントが何人も揃っているが、勝負所でチームをリードし、勝利をもぎ取るためにはエンビードの奮起が不可欠。シクサーズがリーグ制覇を成し遂げるかどうかは、リーグ有数の万能型ビッグマンのさらなる飛躍にかかっている。

文●秋山裕之(フリーライター)

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