パスワークを芸術の域にまで高めた「ティキタカ」をベースに、数々のタイトルを獲得してきたスペイン代表。その歴史の中から「名勝負」をピックアップするとしたら、どの試合になるのか。欧州サッカーに精通する識者に、とりわけ強烈なインパクトを残した「5試合」を選んでもらった。

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2000年6月21日 EUROグループステージ3節
vsユーゴスラビア戦 〇4−3
得点者/スペイン=アルフォンソ②、ムニティス、メンディエタ
    ユーゴスラビア=ミロシェビッチ、ゴベダリツァ、コムリエノビッチ

 初戦でノルウェー相手に苦杯を喫したスペインにとって、決勝トーナメントに勝ち上がるには勝点3の獲得が絶対条件だったが、タレント軍団のユーゴスラビアに苦戦を強いられた。

 ジョゼップ・グアルディオラを中心にスペインが試合を支配するも、ユーゴスラビアの強力攻撃陣がワンチャンスをものにし、常に先行される厳しい展開に。相手の1点リードで迎えた終盤、スペインが一方的に攻め立て、それこそハーフコートゲーム状態になるも、ゴールを割れず時間だけが過ぎていく。

 しかし90分にPKから同点。スペインはその後も猛攻を仕掛け、そしてラストプレーだった。アルフォンソ・ペレスの全身全霊を込めた左足の一撃でついに勝ち越した。トップ通過を果たしたスペインは“いつもの通り”ベスト8で姿を消すが、劇的なゴールの価値は決して色褪せることはない。
 2008年6月22日 EURO準々決勝
vsイタリア 0延長0(4PK2)
得点者/なし

 グループリーグ全勝で首位通過を決めたが、準々決勝の相手は試合巧者のイタリア。幾度もベスト8の壁に阻まれてきたスペインにとってもっとも当たりたくないチームだった。

 その予想通り序盤からスペインが優勢に試合を進めるも、じりじりした展開に。フィニッシュの精度の悪さに加え、相手GKのジャンルイジ・ブッフォンが大きな壁として立ちはだかった。結局120分間では決着がつかず、スコアレスドローのままPK戦に突入。PK戦はスペインにとって、メジャー大会の大事なところで何度も涙をのんできたこれまた鬼門だった。

 しかし、ここでイケル・カシージャスが2本ストップし、セスク・ファブレガスが最後に決め熱戦を制した。このEUROを境にスペインは前人未到のメジャー大会3連覇を達成するが、選手たちは後年口を揃えてこの一戦がターニングポイントとなったと振り返っている。
 2008年 EURO準決勝
vsロシア 3−0
得点者/スペイン=シャビ、グイサ、D・シルバ

 ベスト8の呪縛から解き放たれたスペインに立ちはだかった、新たな刺客はロシア。アンドレイ・アルシャービンの活躍で優勝候補の一角だったオランダを下し、勢いに乗っていた。しかもスペインは、前半にエースのダビド・ビジャが負傷で退場。しかし、このアクシデントが逆にスペインの闘志に火をつけた。

 後半に入ると、面白いようにパスが回り始め、50分にシャビのゴールで先制。その後もシャビ、ビジャの代わりに出場したセスク、アンドレス・イニエスタ、ダビド・シルバが形成する”クアトロ・フゴーネス”を中心に攻撃陣が躍動。後方に構えるマルコス・セナの攻守に気の利いたプレーも光り、ダニ・グイサとD・シルバが加点した。

 この後、決勝でもドイツを下し、スペインの黄金時代が幕を開けるが、このロシア戦、とりわけ後半に見せた息を呑む流れるようなパスサッカーは、今なお鮮烈な印象を残している。

2010年7月11日 南アフリカW杯決勝
vsオランダ 〇1延長0
得点者/スペイン=イニエスタ

 相手のオランダは、準決勝で対戦したドイツとは対照的に守備を固め、ファウルも辞さずにスペインに食らいつく戦いをしてきた。だが、この大会で苦戦の連続だったスペインは、その過程で培った粘り強さを発揮。攻撃の糸口を探そうとパスを捌き続けた司令塔のシャビを筆頭とした攻撃陣、相手エースのアリエン・ロッベンとの2度にわたる1対1をストップした守護神カシージャスら守備陣が一体となって難敵に立ち向かった。

 90分間で勝負がつかず、延長戦にまでもつれ込んだ激戦は、116分のイニエスタのゴールで決着を見た。あの痺れる場面でワンバウンドさせたボールの上がり際を足の甲にしっかりミートし、相手GKの脇をぶち抜いたその技術の高さとメンタルの強靭さに常勝軍団の底力を見る思いがした。
 2012年7月1日 EURO決勝
vsイタリア 4−0
得点者/スペイン=D・シルバ、J・アルバ、F・トーレス、マタ

 グループリーグ初戦で1−1の痛み分けに終わったイタリア相手に会心の勝利。文字通り王様のように中盤に君臨するシャビと、その最高の相棒のイニエスタが試合をコントロールしながら、D・シルバとセスクが前線でパスを引き出し、セルヒオ・ブスケッツとシャビ・アロンソが背後で攻守のバランスを取った。

 イニエスタのスルーパスからセスクが折り返し、D・シルバが頭で合わせた1点目、シャビのスルーパスからジョルディ・アルバが快足を飛ばして裏に抜けてGKブッフォンとの1対1を制した2点目、シャビのスルーパスからフェルナンド・トーレスが右足で流し込んだ3点目、ファン・マヌエル・マタがトドメを刺した4点目。スペインらしい多彩な崩しから大量得点を奪い、"ティキタカ"がその集大成を見せた試合だった。

文●下村正幸