チャンスは作っている。だが、思うようにゴールに結びついていない。

 ザーゴ新監督の下、新たな戦術に取り組む鹿島アントラーズが極端な決定力不足に悩んでいる。Jリーグの公式記録に基づくと、6節が終わった時点で、75本のシュートを放ちながら4得点。相手のオウンゴールを含めて、ここまで5得点にすぎないのだ。

 開幕のサンフレッチェ広島戦では、立ち上がり早々に新外国籍選手であるファン・アラーノのシュートが右ポストを叩いた。中断明けの川崎フロンターレ戦では、途中出場ながらJデビューとなった高卒ルーキーの染野唯月のシュートがクロスバーを直撃した。同じく川崎戦で、もうひとりの新外国籍選手であるエヴェラウドが、内田篤人からの右クロスに空振りするような形になってしまい、チャンスをふいにした。

 75本のうち、相手GKの好守に阻まれたシュートもあれば、決まってもおかしくないシュートもあった。だが、勝負の世界で“たら、れば”はご法度だ。現実に起こったことがすべて。“ないものねだり”をしても始まらない。兎にも角にもゴールという成果を上げて、この苦境から一刻も早く脱したいところだろう。

 ザーゴ監督は強気の姿勢を崩さず、こう言い続けていた。

「自分たちが目指しているサッカーに間違いはない。ゴールを決めるために必要なトレーニングも重ねている。ビッグクラブである鹿島にとって好ましい状況ではないが、自分たちの努力によって改善していくしかいない」
  継続は力なり。いや、継続こそ力なり。ボールを握って攻めきるサッカーというチームコンセプトを浸透させるべく、日々、邁進している。

 シーズン開幕当初は、どこかおぼつかなかった“ボールを握る力”も、今ではかなり改善されてきた。低い位置からパスをつなぎ、サイドチェンジを織り交ぜながら、最終局面に入っていくシーンは着実に増えている。

 ボールを握っているのか、握らされているのか。

 試合展開によって、また時間帯やスコアによって、その印象は異なるが、何はともあれ、最大の課題はポゼッションの先にあるのだろう。相手が後手に回るような崩しがあまり見られず、サイドからのクロスにしても守備組織がすでに整っているところに蹴り込む形が少なくない。アタッキングサードでの手詰まり感は否めない。
  こうした停滞ムードを一掃し、決定力アップの起爆剤となり得る存在の出現が待たれている。

 その有力候補がFWの上田綺世だった。2019年の途中、法政大3年時に1年半ほど前倒しする形で鹿島入り。同年7月31日の浦和戦でJデビューを飾り、8月10日の横浜戦ではJ初ゴールを決めている。

 年が改まって、タイで行われたU−23アジア選手権に参加。そこで負傷して、鹿島でのチーム合流が遅れてしまったが、中断明けから公式戦での出場機会を増やし、第5節の横浜戦で今季初スタメンを果たした。

 そこで2得点を挙げて、チームの勝利に貢献。公式戦での連敗を6で食い止めた。

「ゴールに絡んでいくのが僕の仕事。空中戦だったり、スペースへの動き出しだったり、もちろんシュートだったり、そういう自分のストロングポイントを濁してはいけないと思っている」

 点取り屋としての心意気を冷静に語る上田は、自身のプレースタイルについても次のように客観視する。

「僕はひとりでドリブル突破していくようなタイプじゃない。チームみんなで運んできたボールを、最後にゴール前で仕留める。味方に生かしてもらってこそのFWだと思うので、自分が(パスを)ほしいタイミングと状況、味方が(パスを)出したいタイミングと状況。ここを日ごろの練習からすり合わせるようにしている」
  横浜戦に続く6節の湘南戦もスタメン出場し、2試合連続ゴールの期待が膨らんだ。ところが、“さあ、これから”というときに負傷してしまう。60分、守備ラインの背後に抜け出し、ボールを受け、シュートに持ち込んだ際、相手選手と交錯し、右足関節挫創。治療期間が約1か月との診断を受けた。

 巻き返しのキーマンであるFWの上田の離脱は、チームにとって痛手にほかならない。Jリーグ6節を終えた時点で、17位に甘んじている鹿島。浮上のきっかけを作り、チームに活力をもたらす“救世主”は一体だれになるのか、今後の大きな関心事でもあるだろう。

取材・文●小室功(オフィスプリマベーラ)