先日、女子テニス世界1位のアシュリー・バーティー(オーストラリア)が新型コロナウイルスの影響を懸念して、全米オープン欠場を発表した。それに追従する形で同郷の世界40位、ニック・キリオスも欠場を決めたという。

 キリオスは2日、メディアプラットフォーム「Uninterrupted」でビデオメッセージを発信。「親愛なるテニスへ」と始まるこのメッセージでは、「アーサー・アッシュ・スタジアム(全米オープンのセンターコート)でプレーできないのは何とも言えない寂しさがある」とした上で、「オーストラリア国民や命を失った多くのアメリカ国民のことを想うと、全米オープンに出場することはできない。それが僕の決断だ」と、欠場の意思を語った。

 ここ数ヵ月、コロナ禍で無責任な行動を取るトップ選手たちに、一石を投じるような発言を続けてきたキリオス。一貫して感染対策の重要性を発信してきた姿勢が、今回の全米オープン欠場に大きく表れていると考えられる。

 6月には、クロアチアで開催されたエキジビション大会「アドリア・ツアー」で、不十分な感染対策により、出場選手に多くの感染者を発生させた。キリオスはその際、「(あんな大会を開いたのは)間抜けな決断だった」と強く非難。また、同大会に参加していたアレクサンダー・ズべレフ(ドイツ)が14日間の自主隔離を経ずにパーティーへ参加したことについても、「なんて自己中なやつだ!」と語気を強めていた。
  さらに先月30日。ツイッター上で「君が人の振る舞いを指摘できる立場なのか?相当暇してるのか、酔っ払ってるんだな」と投げかけるチョリッチに対し、キリオスは「たしかに、君のつまらないテニスと、スポーツ界に何も影響を与えないような人間性には退屈しているよ」と応戦。「言いすぎだ」という声も中にはあるが、普段の破天荒な振る舞いとは裏腹に、コロナの恐ろしさを伝え続けようとする一貫した姿勢には、称賛の声も多く上がっている。

 キリオスは動画で「テニス選手は皆、人のことを考えて行動しなければならない。バーでダンスをするとか、お金を集めてエキジビションを開催するとか、今はそんなことをしている場合ではない。それはただの自分勝手だ」と主張。

 続けて、「今一度、他人のことをよく考えよう。それがこのウイルスが持つ意味なんだ。世界ランクとかお金をどれだけ稼いでいるかなんてどうでもいい。責任感を持って行動するんだ」とした。

 一方で、全米オープンの開催自体に異論はないと語るキリオス。あくまで選手個人の責任感の問題だとして、テニス界全体に呼び掛けた形だ。静かながらも熱のこもった彼のメッセージが、一体どのように人々の心に届くのか。ツアー再開後に明らかとなるだろう。

文●中村光佑

【動画】「何が大切なのかを思い出そう」キリオスの心のこもったビデオメッセージ