借金は今季最大の「6」。

 リーグ2連覇中の西武が苦境に喘いでいる。3年連続して主力選手が移籍したことに同情の余地はあるが、それを差し引いても現在のチーム状況は悪い。

 とはいえ、現有戦力の質が悪いかというと決してそうではない。力を発揮さえすれば、高いパフォーマンスを見せる選手は少なくない。秋山翔吾が去った外野陣では、同い年の木村文紀が去年と見違えるようになっているし、高卒4年目の鈴木将平、打者転向2年目にして長打力を見せる川越誠司など好素材はいる。

 西武を低迷させている大きな要因が、過去2年に続いて今季もリーグワーストの防御率と苦しんでいる投手陣だ。

 山賊打線なら去年と一昨年のように、リーグ最低の投手陣であってもそれを補うだけの破壊力で勝つことはできた。しかし、「打線は水物」とも言われるように、CSで敗戦時のような戦い方になった場合、防御率4点台で勝てるほど世間は甘くない。
  今井達也、高橋光成、松本航、本田圭佑。これまで、防御率が悪くても温情的采配で守られてきた若手先発投手が成長していないことが何よりの問題だ。強力打線の存在の中、経験を積んだ若手投手が少なくとも防御率を1点落とせるくらいになっていないのは、昨年の経験が生かされていないと言っていい。

 加えて投手陣を苦しめているのがサウスポー不足だ。先発では8月になって榎田大樹や内海哲也、今週にはノリンが登板機会を得ているが、ブルペンで頼れるサウスポーがいないバランスの悪い構成こそ、現在の西武の最大のウィークポイントだろう。

 対戦相手もこのことを熟知していて、西武と対戦する際は左打者中心のオーダーを組んでくる。たとえば、7月28日〜8月1日に対戦したソフトバンクはクリーンアップに全員左打者(柳田悠岐、中村晃、栗原陵矢)を据え、日本ハムも1番・西川遥輝、2番・中島卓也(あるいは杉谷拳士)、3番・近藤健介という並びにしていた。打順の巡りは常に1番から始まるわけでない。日本ハムは8番に宇佐美真吾、9番に石井一成を入れることで8番から5人連続左打者という打順を組んだこともあった。同様に、他のチームも西武戦ならではの布陣で戦うことが多くなっている。
  これほど極端な打線を組んでくるのは、西武が勝負どころで投入してくる左投手に怖さがないということでもある。特に7回以降は、ビハインドの展開以外では左投手がマウンドに立つこと自体が少ないから、左打者が並んでいても、打線が分断されることがない。

 先発投手陣が対左打者を得意としていれば、起用も変わるだろうが、むしろ逆だ。高橋光成、ニール、與座海斗はいずれも対左打者の被打率が右より高い。現在、中継ぎに配置転換中の今井達也に至っては、対右打者の被打率.198に対し、対左は.371にまで跳ね上がる。各チームが優秀な左打者を揃える中、この現状では苦戦するのもやむを得ない。

 さらにその歪みは、「勝利の方程式」と呼ばれる勝ちパターン継投を担う投手たちにも影響を与えている。なぜなら、西武がリード時に左投手を投入してくることはほとんどないわけだから、平良海馬、ギャレット、増田達至の右腕は徹底的に研究される。左が並ぶケースは左投手に任せるなどの起用ができれば、彼らの負担は減るだろうが、常に相手に研究された上でのピッチングをしなければいけないのだ。
  現状の西武はほとんど手詰まりに近い状態だ。今から先発投手の対左打者成績を改善するのは至難の業。かと言って、現有戦力の中でリリーフ左腕として適性がありそうな投手も見当たらない。オリックスのような首脳陣の大粛清を敢行したところで、状況は変わらないだろう。
 
 手を打てるとしたら一つだけ。主力クラスを放出する大出血覚悟のトレードで左投手を補強するしかないのではないか。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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