8月28日(日本時間29日、日付は以下同)、NBAコミッショナーのアダム・シルバーとNBA選手会(NBPA)のミシェル・ロバーツ事務局長が共同声明を発表。30日からプレーオフを再開させることが決定した。

 この日は1回戦敗退となったインディアナ・ペイサーズ、フィラデルフィア・セブンティシクサーズ、ブルックリン・ネッツを除く13チームが練習を行ない、ヒューストン・ロケッツの練習には右足大腿四頭筋の肉離れで欠場していたラッセル・ウエストブルックの姿があった。

「今日、彼は練習でできるところまでこなすことになる。我々は彼が準備できていると見ているからね。彼がずっと我慢してきたのは間違いない。まだそのことについては彼と話していないが、明日(試合日)までには話すことになるだろう。彼は今、プレーしたくてうずうずしていると思う」
  ロケッツのマイク・ダントーニ・ヘッドコーチ(HC)はこの日の練習前にそう話していたのだが、練習とスクリメージ(練習試合)をこなしたウエストブルックについて、リーグの情報筋は「これまでで最も爆発的な動きを見せていた」と『ESPN』へ伝えており、29日に行なわれるオクラホマシティ・サンダーとのシリーズ第5戦で復帰濃厚となった。

 ウエストブルックはロケッツ加入1年目の今季、57試合に平均35.9分出場し、27.2点、7.9リバウンド、7.0アシスト、1.6スティールをマーク。爆発的な身体能力とあふれんばかりの情熱を武器にコート上を暴れ回り、ディフェンダーが何人いようと強行突破するリムアタックは、依然として相手チームの脅威となっている。

 ここまでのプレーオフ1回戦において、ロケッツはジェームズ・ハーデンがいずれもシリーズトップとなる平均32.0点、8.8アシスト、2.0スティールを記録。エリック・ゴードン(平均19.3点)、ジェフ・グリーン(同17.3点)、ダヌエル・ハウスJr.(同16.0点)、PJ・タッカー(同10.3点)らも奮戦しているものの、スモールラインナップにおいて最も相手をかき乱す核弾頭を欠きながらの苦しい戦いを強いられていた。
  ウエストブルックがシリーズ復帰となれば、トラジションからのオフェンスは間違いなく活性化されるだろう。ハーフコートでもスイッチを多用して動き回り、ペイントエリアの得点やチームメイトへのアシストをもたらし、サンダーのディフェンスをかく乱することが期待できる。

 そのウエストブルックは、27日に行なわれた選手とオーナー陣による今後に向けた会談のなかで、自身が契約を結ぶナイキのジョーダンブランドのボス、マイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか/シャーロット・ホーネッツのオーナー)が果たしたことについて28日の『Zoom』会見でこう明かしている。
 「(ジョーダンは)コミュニティへ恩返ししようとするなかで、アフリカン・アメリカンのコミュニティにとってもものすごく大きな存在なんだ。選手やオーナーたちとのミーティングでも、彼の存在は大きかった。俺たちが手を取り合って、やり遂げる上で重要だったことを確かめられた。選手たちとオーナー陣との会話ではいくつかの点で話がまとまらなかったんだ。でもMJが正しい方向へと導くために、断固とした姿勢を見せてくれた」

 NBA全30チームのオーナーのなかで、ジョーダンは唯一黒人として筆頭オーナーを務めている。現役時代に数えきれないほどの素晴らしい功績を残してきただけに、リーグへ与える影響力は絶大。ボイコットによってプレーオフが延期となるなか、早期再開へと導いた最大の功労者と言っていい。

 そしてウエストブルックはこの日の練習後、「復帰できて興奮している。でもそれ以上に、正当な理由でプレーできることを楽しみにしているよ。俺たちは(NBAとNBA選手会による協定の下で)アクションを起こせるんだ。俺のような選手もそうだし、このリーグにいる選手たちはみんな、自らのユニフォームの後ろにメッセージを入れてプレーしている。それは何かを意味するものなんだ」とコメント。第二幕でユニフォームの後ろ側に“BLACK LIVES MATTER”というメッセージを入れてプレーするウエストブルックは、さらにこう続けた。
 「俺には個人的な行動を起こし、アフリカン・アメリカンのアスリートとして、社会のなかで黒人としてプレーすることに責任がある。俺には子どもがいるし、近所だけでなく世界中にいる子どもたちが俺のことを見てくれている。それこそが俺を最もワクワクさせてくれることなんだ。もちろん、バスケットボールは俺たちのプラットフォームであり、俺が大好きなもの、そして愛情を持っているもの。でもそれ(社会正義と戦うこと)は再びプレーする上で、最も重要な理由なんだよ」
  社会正義、そして人種差別に対して強い意志を持つウエストブルック。持ち前の超人的な闘争心に加え、社会正義と戦う人一倍強い思いを胸に、約3週間ぶりに復帰する男のパフォーマンスを是非とも注視していただきたい。

文●秋山裕之(フリーライター)

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