「ミドルレンジジャンパーは、カワイにとってレイアップなんだ。初めて会ったのは彼が14歳の時だったけど、すでに練習熱心な選手だったね。それは今でも変わらない。どれだけ成功を収めようと、彼は毎年レギュラーを奪うつもりで取り組む。決して満足する選手じゃないのさ」

 4月下旬、カワイ・レナード(ロサンゼルス・クリッパーズ)のトレーナーを務めるクリント・パークスは、レナードの代名詞とも言えるミドルレンジジャンパー、そして彼のマインドについて『ClutchPoints』にこう語った。

 昨季トロント・ラプターズをフランチャイズ史上初のNBAチャンピオンへと導いたレナードは、プレーオフを通じて平均30.5点、9.1リバウンド、3.9アシスト、1.7スティールの活躍を見せ、自身2度目のファイナルMVPを獲得。

 そして新天地クリッパーズで迎えた今年のプレーオフ。彼はここまで全7試合で29得点以上を記録し、平均32.3点、9.0リバウンド、4.9アシスト、2.3スティールに、フィールドゴール(FG)成功率56.2%と高位安定のパフォーマンスでチームを牽引している。
 「ただ練習するのみさ。自分のゲームを磨いて、自分のショットに自信を持つこと。自分のスポットへと向かい、自分のゲームの全てにおいて高い集中力を維持してきた。今は得意とするスポットへ行けるし、ショットを決めることができている」

 9月4日(日本時間5日)に地元メディア『Los Angeles Times』へ掲載された記事の中でそう語ったレナードは、自身のプレーへの絶対的な自信と充実感を覗かせた。

 4勝2敗で突破したダラス・マーベリックスとの1回戦、そしてデンバー・ナゲッツとのカンファレンス・セミファイナル初戦を終えた時点で、レナードは延長を含む全クォーターでFG成功率51.5%以上を記録。とりわけ第4クォーターでは59.3%(16/27)と6割に迫る数字を叩き出している。

『Synergy data』によると、今年のプレーオフでアイソレーションの状況下になった際、レナードは左へドライブしてから放ったプルアップジャンパーを66.7%の確率で沈めており、右側でも55.6%という高い成功率を誇っている。

 そしてミドルレンジ全体では76.5%(26/34)、リング下は88.0%(22/25)と、その数字はさらに跳ね上がる。より多くの3ポイントを打つことが主流となりつつある現代バスケのなかで、さらに高確率のミドルレンジからのシュートで試合を支配しているのだ。
 「私はサンアントニオ(スパーズ)からトロントまで、彼が見せてきた全てのオフェンシブセットを見てきた。そこには多くの共通点があった」。クリッパーズのドック・リバースHCは、ボストン・セルティックスを指揮していた当時のエース、ポール・ピアースにレナードの姿を重ねているという。

 確かに、レナードとピアースの2人は、ポジション、プレースタイル、勝負強さなど似通った部分が多い。ともに世代を代表する実力者であり、エースとしてファイナルMVPを獲得している。一方で、現役時代から饒舌家として知られるピアースに対し、レナードは口数の少なさでは現役有数。Twitterでも最後の投稿は2015年、インスタグラムも自身のファミリーが運営するなど、SNS全盛の現代では珍しい、寡黙なリーダーとして知られている。

 リバースHCにとって、レナードのようなタイプのリーダーを見るのは現役時代までさかのぼるという。

「パトリック・ユーイング(元ニューヨーク・ニックスほか)が少し似ていた。チームメイトにはすごくオープンなんだが、彼が自らその輪に入り込むことはなかった」
  キャリア晩年の1992〜94年にニックスでプレーしたリバースは、“ニューヨークの摩天楼”と称されたユーイングと約2シーズン、チームメイトとして共闘した経験を持つ。レナードとユーイングに共通するリーダーシップとはどういったものなのか。

「彼らは自分たちが話す時、決まって一生懸命プレーすることにフォーカスする点がすごく似ている。正しいことをこなし、正しいプレーを続ける、そしてそれを遂行するということだ。特にカワイの場合、話す時には多くのことを要求してくる。だから重みがあるんだと思う。普段あまり多くのことを話さないからなおさらね」

 リバースHCの言う通り、ここぞという時の発言と自らのプレーでチームメイトを引っ張るレナード。プレーオフに入ってからはさらに集中力が増しており、ナゲッツとの初戦ではFG成功率75%(12/16)の29得点を稼ぎ出して120−97の快勝に導いている。

 それでも、「彼ら(ナゲッツ)は第7戦までもつれたシリーズを勝ち抜いてきたんだ。次はもっと入念に準備して戻ってくるに違いない」と、現地5日に行なわれる第2戦を前に、短い言葉でチーム全体の気を引き締め直している。

 クリッパーズにはパトリック・ベバリーやルー・ウィリアムズといった発言力のあるベテランがいるため、なおのことレナードのような寡黙なリーダーがマッチするのかもしれない。フランチャイズ史上初のカンファレンス・ファイナル進出、そしてNBAチャンピオンを目指すチームにとって、この男が誰より頼れるリーダーであることは間違いない。

文●秋山裕之(フリーライター)

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