現地14日からイタリア・ローマで開催中のテニスATPマスターズ1000『イタリア国際』で、予選を上がりベスト16へ進出し、驚きの大活躍を見せたイタリア出身のティーンエージャー、ロレンツォ・ムゼッティ。彗星のごとく現れた18歳は、活気が戻りつつあるテニス界をさらに盛り上げてくれる存在になりそうだ。

 ムゼッティは、イタリアの巨匠ミケランジェロが彫刻の大理石を調達したことで知られるトスカーナ州カッラーラ生まれ。テニスを始めたのは、4歳の頃。祖母の家の地下室でボールを打っていたという。その後、地元のテニススクールを経て、8歳の時に通い始めたイタリアテニス協会認定のテニスクラブで、現コーチのシモーネ・タルタリーニ氏と出会ったそうだ。

 コーチとの二人三脚で頭角を現し始めたムゼッティは、ジュニア育成に力を入れる協会の目に留まり、強化選手に選抜。2016年に14歳で出場した18歳以下のハードコート国内大会で初優勝すると、翌2017年には、クレーの国際大会で優勝を果たすなど、以降、複数のジュニア大会で結果を残した。

 さらなる成長を続けるムゼッティは、2018年全米OPジュニアで準優勝を飾ると、2019年6月にジュニアランキングで首位に。同年の全豪OPジュニアで、イタリア人選手として初の優勝を果たしてプロに転向した。

 同国メディア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のインタビューでタルタリーニ氏について、「僕にとって物さしのような存在。その視線や一言が、試合や大会で分岐点になることがある。家で過ごす時間が少ないこともあり、僕にとって第2の父親。一緒に、プロテニス界でトップレベルに上り詰めたい。達成できたなら、それはすべてコーチのお陰だ」と述べている。
  そして、身長185cm、体重75kgの若者は、母国開催の今大会で快進撃を見せる。世界ランク249位ながら、安定したサーブと正確なショット、18歳とは思えない判断力と冷静さを武器に1回戦で第10シードのスタン・ワウリンカを6−0、7−6で、続く2回戦では錦織圭を3−6、4−6で、ともにストレートで退けた。

 錦織戦後、イタリア語でインタビューに答えたムゼッティは、「最高の戦いだった。スタン・ワウリンカ戦より、厳しい戦いになるとわかっていた。(錦織に)テンポを崩され、やりづらかった。ベースライン付近にポジションを取られたが、冷静さと判断力をキープできた。試合を通してサーブが良かったので、攻撃的な戦略と平常心を保て、勝利を引き寄せることができた」とコメントしている。

 技術はもちろん、新人とは思えぬメンタルを持つ同選手だが、同国メディア『スカイスポーツ』が公開した動画では、おちゃめな一面を披露している。「僕について皆さんが知らない、3つの事を教えるね。1つ目! 僕は、80年代の音楽が好きで、特にレッド・ツェッペリン、ガンズ・アンド・ローゼズやAC/DC などのクラシック・ロックがお気に入りなんだ。2つ目は、彼女はいません。募集してま〜す。これは、ジョーク!3つ目。ATPツアーで優勝するまでは、髪の毛を切らないと決めています!」と、微笑ましい素顔を見せている。

 テニス界に新風を巻き起こした同選手は、現地18日に行なわれた準々決勝で、予選から連戦の疲労か、ドミニク・コプファーに6−4、6−0のストレートで敗れ、快進撃はストップした。

 子どもの頃から憧れ、お手本にしているのは、ロジャー・フェデラーと明かしたムゼッティ。テニス界の偉大なレジェンドにインスパイアされた、あの右腕1本から繰り出すバックハンドに磨きをかけ、さらなる躍進を見せてくれることに期待したい。

構成●THE DIGEST編集部

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