ユーロリーグは「ユーロカップと同様に、バスケットボール・チャンピオンズリーグ(BCL)の優勝チームに翌シーズンのユーロリーグ参戦権を」というFIBA側の要求だけは固辞した。よって実際は、欧州でのセカンドカテゴリーのコンペティションはユーロカップであり、BCLは“亜流の大会”との見方がもっぱらだ。

 ただ、BCLは“亜流”ではあるが、それは決してネガティブな意味ではなく、別の意義がある、ということ。現在、ユーロリーグにはレギュラーシーズンに18チームが参戦しているが、その内訳は以下の通り。

・ライセンスをもつ11チーム
 レアル・マドリー
 バルセロナ
 バスコニア
 CSKAモスクワ
 アルマーニ・ミラノ
 ジャルギリス・カウナス
 オリンピアコス
 パナシナイコス
 マッカビ・テルアビブ
 フェネルバフチェ
 アナドルー・エフェス

・前年のユーロカップ優勝チーム

・ドイツ、ロシア、スペインの国内リーグ優勝者(上記とかぶる場合は次点のクラブ)

・ABAリーグ(旧ユーゴスラビアのクラブ間の独立リーグ)優勝者

・ワイルドカード2クラブ
  ライセンスをもつ11チーム、つまり半数以上の参加チームは揺らがないため、毎年プレーオフに進出する顔ぶれも大差はない。しかしいずれも人気、実力ともに欧州トップクラスだから、多くのファンは、むしろ彼ら同士のバトルを観るのを楽しみにしている。いわば、所属クラブの国籍が違うだけで“ひとつの定着したリーグ”といった感覚だ。

 一方のBCLは、サッカーのチャンピオンズリーグと同じく、前年度の国内リーグの順位やカップ戦優勝で出場権が得られる。予選から参加するところも含めると、実に46カ国、48チームが参戦する幅広いコンペティションで、終盤まで勝ち残る常連はいても“その年ごとのトーナメント”という色が濃い。キプロス島、コソボ、ルーマニア、ベラルーシといった、馴染みのない国のクラブもいるため、広く様々なチームを観てみたい人や、思わぬ逸材を発見したいようなマニアックな人にも魅力的な大会だ。
  フォーマットは、ダイレクトに参戦権を得る24クラブに、予備予選を通過した8クラブを合わせた32クラブがレギュラーシーズンに参戦する。彼らが4つのグループに分かれ、ホーム&アウェー2試合ずつの総当たり戦を行ない、上位4チーム、計16チームが次ラウンドに勝ち抜け。そこから先のラウンド16と準々決勝は、2戦先勝で勝ち上がりの3回戦勝負で、残った4クラブがファイナル4に進出する

 2016−17シーズンの初代優勝者はスペインのテネリフェ。翌年はギリシャのAEK、昨年はイタリアの古豪ボローニャだった。

 今年はラウンド16の途中で新型コロナウイルスの拡大により中断されたため、システムを変更し、準々決勝以降はアテネでの一発勝負のファイナル8形式で行なわれることになった。ベスト8の対戦カードは次の通り。

・9月30日
チュルク・テレコム(トルコ)対JDAディジョン(フランス)
ハポエル・エルサレム(イスラエル)対サンパブロ・ブルゴス(スペイン)

・10月1日
カーサデモント・サラゴザ(スペイン)対イベロスター・テネリフェ(スペイン)
ERAニュンブルク(チェコ)対AEK(ギリシャ)

 そして10月2日にセミファイナル、4日にファイナルが行なわれる。
  スペインから3チームが勝ち残っているのは流石だ。サラゴサには、2008年のドラフトでサクラメント・キングスに12位指名を受け、NBAで8年間プレーしたパワーフォワード(PF)のジェイソン・トンプソンが在籍。対するテネリフェの先発ガード、タイラー・キャバノーも、かつてアトランタ・ホークスなどに所属したNBA経験のある実力者だ。

 AEKアテネのシューティングガード、キース・ラングフォードは、2014年(アルマーニ・ミラノ/平均17.6点)と2017年(ウニクス・カザン/平均21.8点)の2度ユーロリーグの年間得点王に輝いた、欧州では名の知れた点取り屋。チュルク・テレコムのスモールフォワード、サム・デッカーは、2015年のドラフトでヒューストン・ロケッツから18位指名されてNBAデビューしている。

 そして今季の年間MVP候補の1人が、豪快なブロックショットやダンクで会場を沸かせるハポエル・エルサレムのPFタショーン・トーマスだ。今季のスタッツは平均15.6点、6.0リバウンド。毎年のようにNBAのサマーリーグに参加している彼は現在27歳、NBAデビューを目指して懸命に踏ん張っている。
  各チームともアメリカ人選手を抱えているが、各国の規定に関係なく、BCLの試合ではロースターが10人以下なら最低4人、11、12人であれば5人以上は自国出身選手を登録する、という制約を設けている。タレント育成を柱に掲げるFIBAの管轄らしいルールだ。

 FIBAヨーロッパのアンドレアス・ザグクリス事務局長は、インタビューで「上を目指す重要さと同じだけ、我々にとってはグラスルーツのケアも大切なこと。我々の最大のミッションは、この競技を発展させることにあるからね」と発言。そのために、今後もユーロリーグと協力できる余地はまだまだあると考えているという。

「収益を上げることと、スポーツ自体の質を向上させること。このふたつのストラテジーを上手い具合に両立させていくことが理想だ。(ユーロリーグと)協力し、共通の地場をより多くもつことで、可能性はますます広がるだろう」(ザグクリス氏)
  対して『ESPN』に寄稿する欧州在住のバスケットボール記者マーク・ウッズは、「BCLが成功しているとは言い難い。FIBAはこの大会のために莫大な資金を投じているが、もっと別の、より良い形で資金を使う方法があるように思える」と私見を語ってくれたが、参戦クラブのファンにとっては、単純に国を跨いだコンペティションは面白いはずだ。

 それに選手たちにとっても、いろいろな国の選手やチームと対戦できる国際大会は研鑽の場になるし、キャリアアップにもなる。BCLで活躍して、ユーロリーグ出場クラブに移籍を叶える選手も少なくない。今季平均11.6点、7.7リバウンドをマークし、チュルク・テレコムのインサイドを支えたフランス人センター、ムスタファ・フォールはこの夏、トニー・パーカー(元サンアントニオ・スパーズほか)のいるアスヴェルに引き抜かれ、来たる新シーズンはユーロリーグに初挑戦する。

 ともあれ、欧州で最もバスケットボール熱が高い都市と言っても過言ではないアテネが会場なら、盛り上がることは間違いない。『livebasketball.tv』でライブ視聴も可能だから、これを読んでもし興味が沸いたなら、ぜひチェックしてみてほしい。

文●小川由紀子

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