新型コロナウイルスの影響により、北京で開催される予定だった今年のグランプリ・ファイナルは延期もしくは中止となることが発表された。しかし、世界各地で行なわれるグランプリシリーズは、条件付きで開催される。直近で開かれるのは、10月23日〜25日の第1戦アメリカ大会(ラスベガス)だ。

 同大会の参加者はアメリカの出身者や同国を拠点に練習している選手に限られる。そのため、マライア・ベルやキーガン・メッシング、ビンセント・ジョウらに加え、アメリカを練習拠点としている樋渡知樹も参加する予定だ。

 そして、昨シーズンのグランプリ・ファイナルを制したネイサン・チェンもこの大会から国際舞台に復帰する。

 そんななか、米国スケート連盟は、コロナ禍で有人の大会を実施できなくなった代わりに「インターナショナル・セレクション・プール(ISP)ポイントチャレンジ」という“バーチャル大会”を実施している。同連盟に所属する選手がショートプログラムおよびフリープログラムのビデオ動画を送り、国際審判の資格を有する審査員が採点するという方式だ。

 第1戦は9月中旬、第2戦は9月下旬から順次行なわれ、総合結果で順位を争う。その模様は同連盟の公式ファンサイトで公開されており、10月6日には第2戦の男子SP、フリーの動画が公開された。
  このバーチャル大会で、チェンは新シーズンのプログラムを披露している。

 SPはフラメンコ音楽の『Desperado』にのせ、白いシャツと黒いボトムに身を包み、情熱的な音楽にあわせて舞うプログラムだ。第2戦では、冒頭に4回転ー3回転トゥループ、トリプルアクセル、2回転フリップを着氷。3本目は珍しくジャンプのミスとなったが、動揺することなく滑り切った。

 フリーは、作曲家フィリップ・グラス氏のピアノ曲をアレンジしたオリジナル曲を選択。第2戦は前半に4回転フリップ+3回転トゥループ、3回転ループ、3回転ルッツ、4回転サルコーを盛り込み、後半は4回転トゥループ+シングルオイラー+3回転フリップ、4回転+3回転トゥループ、トリプルアクセルというクワド4本を含むジャンプの構成。ラストのトリプルアクセルはやや着氷が乱れたものの、息をつかせない滑りを披露した。

 この様子を見守っていた米フィギュアの名物記者ジャッキー・ウォン氏は「このフリーは彼の代表的なプログラムになるかもしれない。美しくて複雑に入り組んでいて驚異的」と絶賛している。

 結果、チェンは、SP91・77点、フリーで211・86点、総合303・63点を獲得。一部の構成の異なる第1戦(SP105・53点、フリー209・79点の総合315・32点)に続き、300点台の大台に乗せ、​シングルシニア男子部門を制した。2位にはジェイソン・ブラウン(268・31点/第1回)、3位には樋渡知樹(244・76点/第2回)が入っている。

 チェンはシーズンが進むにつれてプログラムの難易度を上げていくのが恒例なだけに、果たして、最終形態で彼は何本の4回転ジャンプを披露することになるのだろうか。まもなく開催されるアメリカ大会でも、進化し続けるその演技に、フィギュアファンの注目が集まりそうだ。

構成●THE DIGEST編集部