パトリック・ユーイングは、言わずと知れたニューヨーク・ニックスのレジェンドだ。1985年のNBA入りから大黒柱として君臨し続け、通算得点(2万3665得点)、リバウンド(1万759本)、ブロック(2758本)のフランチャイズ記録を持つ。その一方で、最後まで優勝には手が届かず、晩年はシアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)、オーランド・マジックを渡り歩いて2002年限りで現役を退いた。

 2000年にトレードで放出されるまで15年間、ニックスに忠誠を誓い続けたが、他球団で“スーパーカルテット”を形成する可能性があったという。

 ユーイングは元NBA選手のブレイダン・ヘイウッドとライアン・ホリンズがホストを務めるポッドキャスト『Opinionated 7-Footers』に出演。シカゴ・ブルズやボストン・セルティックス、デトロイト・ピストンズとしのぎを削るなかで、ニックスはユーイングの“単独エース時代”が長く続いたことに関して、ヘイウッドから「あなたにはもっと手助けが必要だったと思う」と質問が飛んだ。
 「(ブルズの)マイケル・ジョーダンにはスコッティ・ピッペンがいて、(セルティックスの)ラリー・バードにはケビン・マクヘイル、(ピストンズの)アイザイア・トーマスにはジョー・デュマースがいた。あなたのチームメイトに敬意を欠くわけではないけど、ニックスには第2のスターがいなかった。ハードにプレーするハードワーカーが多かった。どこか(別のチーム)に行くつもりはなかったの?」

 するとユーイングは、キャリア序盤に移籍を考え、実現寸前までいった過去を明かした。

「私はリーグで4番目に高額年俸の選手でなければならないと思っていた。セルティックスは私の獲得を考えていたが、結局、条件面で折り合わなかった。私はゴールデンステイト・ウォリアーズに行くことを考えていた。クリス・マリン、ミッチ・リッチモンド、ティム・ハーダウェイがいることを想像してみてほしい。実現させようとしたが、うまくいかなかったからニューヨークに残った」

 ティム・ハーダウェイ、ミッチ・リッチモンド、クリス・マリンは1989年からの2シーズン、ウォリアーズで共闘。速攻で攻めるラン&ガンスタイルで旋風を巻き起こし、“ランTMC”の異名を取った。そこにユーイングが加わっていたとなれば、今でいう“ビッグ3”ならぬ“ビッグ4”が結成されていたことになる。幻に終わった夢のカルテットに、ヘイウッドとホリンズからは「もはや反則レベルだ!」と驚きの声が上がった。
  ユーイングはインタビューの中で、キャリアで最も優勝に近づいた1993−94シーズン、98−99シーズンについても回顧している。

「私たちはファイナルに2回出場した。そのうち1回(1998−99シーズン)は、不幸にも(アキレス腱の)ケガで試合に出られなかった。でも、私たちは良いチームだったし、素晴らしい戦いをしていた。実際には対戦していないから“おそらく”と言わざるを得ないけど、マイケル擁するブルズを倒せるチャンスがあった年(1996−97シーズン)にチャーリー・ウォードとPJ・ブラウンの乱闘が起こった。私はコートに足を踏み入れたあとに、すぐに戻ったけど、第6戦を出場停止になった。正直、腹が立ったよ」

 ニックスは97年のカンファレンス準決勝でマイアミ・ヒートと対戦。3勝1敗と王手をかけて迎えた第5戦、ウォードとブラウンのもみ合いをきっかけに両チームの選手が入り乱れる大乱闘に発展した。ヒートはブラウンのみが出場停止となったが、ニックス側はユーイングやアラン・ヒューストンら主力がベンチを離れたために第6戦を出場停止となり、最終的に第7戦で敗れて逆転での敗退を喫した。
 「パット・ライリーはニューヨークを去って、マイアミに行った。知っての通り、私とアロンゾ(モーニング)は友人だ。だけどひとたびコートに立てば、激しくやり合っていた。パット・ライリーはニューヨークで、最もタフでフィジカルに強いチームを作ろうとしていた。そして、マイアミでも同じことをしようとしていた。同じアイデンティティーを持つチームが激突するんだ。何が起こってもおかしくない。チャーリー・ウォードがPJ・ブラウンをボックスアウトしようとして、それに苛立って掴んでコートに投げ飛ばした。でも、私たちはシカゴやインディアナともやり合っていた。今とは違うが、当時はリーグ全体でもそれが当たり前だった。チームには究極のヒットマン(チャールズ・オークリー)がいたしね」

 もし、乱闘が起こらず、ニックスがカンファレンス決勝でジョーダン擁するブルズと対戦していたら――。ユーイングのキャリアは違ったものになっていたかもしれない。

構成●ダンクシュート編集部

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