1985年以降、ドラフト1位指名権はプレーオフを逃したチームによる抽選で決定することになった。現在は、成績の悪いチームの方が、より1位指名権を獲得しやすいシステムになっているが、思惑通りに事が運ばないのが世の常。確率わずか1.52%から1位指名権を獲得したチームがある一方、1度も指名順をアップさせたことのない嘘のようなチームも存在する。

 毎年、悲喜劇が繰り広げられるドラフトロッタリー。この筋書きのないドラマにおける勝者と敗者をピックアップしてみた。

 なお、データは2018年掲載時のものであり、追記事項は(※)として加筆した。
 ■ドラフトロッタリーでの幸運&不運なチームは?

 “Lottery”という単語には、“くじ引き、抽選、宝くじ”といった一般的な意味以外に、“運”という意味もある。現在のNBAドラフトロッタリーは、レギュラーシーズンの成績が悪かったチームに対し、上位指名権獲得のチャンスを与えるという仕組みになっている。成績が悪ければ悪いほど、より高い指名順位を獲得できる確率が増すわけだが、抽選である以上、そこには科学で説明することのできない“運”も大きく作用する。

 黎明期のNBAドラフトには、運の要素はさほどなかった。第1回のドラフトがデトロイトで開催されたのは、NBAの前身、BAAが創設された翌年の1947年。集客に苦しんだリーグは、地元の大学や街からの観客を取り込もうと、1949年から“テリトリアル・ピック(地域指名)”の制度を導入する。ホームアリーナを中心に、半径50マイル(約80㎞)内にある大学の生徒や、地元出身選手を優先的に獲得できるというものだった。

 1966年から、両ディビジョン(1970−71シーズン以降はカンファレンス制)の最下位チームがコインの裏表で1位指名権を争う“コインフリップ”が導入される。ここでようやく運の要素が入り込んでくるわけだが、最下位になりさえすれば50%の確率で1位指名権を獲得できることから、試合にわざと負ける“タンキング”が横行。業を煮やしたリーグは、1985年のパトリック・ユーイング争奪戦を防止するため、ロッタリー制度の導入に踏み切った。1990年にはピンポンボールマシンによる確率調整システムが採り入れられるなど、メジャー&マイナーチェンジを加えながら、現在に至っている。
  ロッタリー制度の導入により、運の要素はますます大きくなっていった。「運は平等にやってくる」はずなのだが、残念ながら現実はそうじゃない。これまで行なわれた都合36回のロッタリーにおいても、ラッキーなチームとアンラッキーなチームは歴然と存在し、明と暗の分かれ方が思いのほかはっきりとしている。今回はそれら両極端なチームに焦点を当て、“運”によってもたらされた勝者と敗者の悲喜劇を振り返ってみたい。

 まず最初に、ラッキーか否かを判断する材料のひとつとして、今回参考にした情報の説明を少々。アメリカでスポーツデータサイトのライターをしているベン・リーボウィッツ氏が、2年前に『スポーツイラストレイテッド』誌に寄稿したストーリーの中で使用していたデータを更新し、その考察とともに参考にさせてもらった。

 内容は至ってシンプル。ロッタリーによって順位がどれだけ上げ下げしたか。例えば、元々持っていた順位が3位だったとして、ロッタリーによって1位にジャンプアップしたらプラス2、変動なしの場合は±0、4位に落ちたらマイナス1。過去の±を合算すれば、 各チームのラッキーレベルが見えてくるというもの。便宜的に“ラッキー指数”と呼ばせていただく。
 【ラッキーチーム】
1位:サンアントニオ・スパーズ

 栄えある第1位は、ダントツでスパーズ。現存するフランチャイズで最高勝率を誇るだけあって、1985年のロッタリー導入以降、参加した回数はわずか3回。だが、その3回すべてにおいて、元々の指名順よりジャンプアップし、なんと1位指名権を2回も奪取している。さらには、獲得に成功したのが歴代屈指のビッグマン2人。

 1987年、ラッキー指数プラス3でデイビッド・ロビンソンを獲得し、その10年後にはプラス2でティム・ダンカンを獲得。この2回のドラフトだけで、33年間のうち25年はプレーオフ進出が約束されたようなもの。残る1人は、スパーズに11シーズン在籍し、バイプ レーヤーとしてチームに欠かせない存在だったショーン・エリオット(1989年3位)。彼の獲得も、スパーズにとっては非常に大きかった。

 ロッタリー勝率100%、そのうえ確実に大物を射止めるというこの凄さ。黒の軍団スパーズ恐るべし。

(※今年23年ぶりに、球団史上4度目のロッタリーに参加した。結果は±0)
 2位:クリーブランド・キャバリアーズ

 このチームに関しては、長年NBAを観ているファンなら納得だろう。1986年にラッキー指数プラス5で1位指名権を奪取し、ブラッド・ドアティを獲得。その後、特にここ7年は神がかっている。2003、11、13、14年と1位指名権を立て続けに勝ち取り、そのうち2回はプラス7、プラス8と、とんでもない下克上をやってのけた。2014年などは、確率1.7%を覆しての1位獲得だ。

 いまだに1位指名権を手にしたことのないチームがいくつもあるなか、5回の獲得はちょっと異常である。レブロン・ジェームズやカイリー・アービング、アンドリュー・ウィギンズといったスター候補を射止め、ハズレ選手歴代No.1の呼び声高いアンソニー・ベネットに手を出すという大チョンボですら、ご愛嬌といったところか。キャブズのラッキー指数の合計はプラス15。ラッキーにもほどがある。
 3位:オーランド・マジック

 3番目のラッキーチームはマジック。創設間もない1990年代初頭、当時のGM(ゼネラルマネージャー/1996年に球団の親会社の上級副社長に昇進)、パット・ウィリアムズが、ロッタリー史上初となる2年連続での1位指名権獲得という離れ業をやってのけた。1回目の1992年が、ラッキー指数プラス1でシャキール・オニールを、翌年はなんとプラス10でクリス・ウェバーを獲得。確率1.52%からの1位指名権奪取は、ロッタリー史上最大のアップセットだった。さらには2004年にも1位指名権を順当に引き当て、ドワイト・ハワードを獲得している。

 とてつもない強運の持ち主、ウィリアムズがロッタリーに必ず持参するラッキーチャーム(アイテム)は、ラビッツフット(ウサギの後ろ足を乾燥させたもの。お守りの一種。最近は本物が使われることはあまりない)と四つ葉のクローバー、そして“ラッキーチャーム”という商品名のシリアルの箱だそうだ。

4位:ニューオリンズ・ペリカンズ

 ラッキー指数ランキング1位のペリカンズには、地味ながら非常に質の高い運が降り注いでいる。過去14回挑んだロッタリーで、プラスとマイナスを計上したのはそれぞれ4回だが、マイナスの合計が7に対しプラスは23とツキがある。1999年3位のバロン・デイビス獲得時に記録したプラス10は過去最高タイのジャンプアップ。さらには、プラスで獲得した選手全員がオールスターに成長するという効率の良さ(ラリー・ジョンソン、アロンゾ・モーニング、バロン・デイビス、アンソニー・デイビス)。派手さはないが、運を上手く味方につけている印象だ。

(※2019年にはラッキー指数プラス6で、ザイオン・ウィリアムソンを1位獲得。近年では最高の獲得劇だろう)
 【アンラッキーチーム】
1位:ミネソタ・ティンバーウルブズ

 ロッタリー史上最もアンラッキーなチームは、これまで何度も1位指名権を取り逃しているナゲッツだと漠然と思っていた。だが、リーボウィッツ氏のデータによると、目も当てられないほどのアンラッキーさを誇るチームが存在し衝撃を受けた。ウルブズである。

 1989年の球団創設以来21回ロッタリーに挑戦し、ただの1度も指名順位が上がったことがないという、にわかに信じ難い珍事がひっそりと進行していたのだ。0勝12敗9分け。ラッキー指数にプラスが1つもなく、あるのは±0とマイナスのみ。トータルはマイナス19。ブービーのキングス(マイナス13)に大差を付けてのダントツ最下位である。ラッキー指数プラス15のキャブズや、勝率100%のスパーズの運をできることなら分け与えてあげたい。
  1992年には、レギュラーシーズンを15勝67敗とぶっちぎりの最下位で終え、最も高い1位指名権獲得率を抱えて、期待に胸を躍らせながらロッタリーに臨んだ。その年の本命はシャック。だが、結果はご存知の通り。2011年にはトップの獲得率を持ちながらアービングを獲り逃がした。それでも、ロッタリーで過去最高の2位指名権を獲得。それで流れが変わったのか、2015年に悲願の1位指名権を手にし、新時代のビッグマン、カール・アンソニー・タウンズを獲得できたのがせめてもの救いか。

(※今年のロッタリーで、球団史上初めてラッキー指数にプラスが付いた。23回目にして初の快挙である。それも、プラス2で1位指名権を獲得。とはいえ、トータルでマイナス15は未だリーグ最下位)

2位:デンバー・ナゲッツ

 ナゲッツもまた、アンラッキーの荒野を突き進んでいる。ロッタリー運にまったく恵まれず、33年間で3回1位指名権獲得の最高確率を得ながら(1991、98、2003年)、1度もモノにできなかった。特に痛かったのが、同率1位の獲得率を持っていながらレブロンを獲り逃がした2003年。フランチャイズの未来を変える最大のチャンスだった。
 3位:メンフィス・グリズリーズ

 次いで運に見放されているのがグリズリーズ。1996、97、99、2007年とリーグ最下位の成績を記録したが、最初の2年はエクスパンションの規約で1位指名権を取得できず、2007年はロッタリーで順位を大きく落としている。各年の目玉選手は、順にアレン・アイバーソン、ティム・ダンカン、エルトン・ブランド、ケビン・デュラントと、まさしく逸材揃いだった。

 また、ナゲッツと同様に2003年のレブロン争奪戦では地獄を見ている。獲得率6番手の位置から奇跡的にジャンプアップを果たし、最後の2チームに残るも、夢は砕け散る。チーム代表として参加していたジェリー・ウエストGMの、本気で引きつった顔が忘れられない。
      ◇     ◇     ◇

 近年、フィラデルフィア・セブンティシクサーズのようにタンキングで上位指名権獲得を狙うチームが再び目立ち始めている。これを禁じるため、NBAは2019年のドラフトから、ロッタリーによる1位指名権獲得率に変更を加えることになった。これまでリーグ最下位からワースト3位までのチームには、それぞれ25%、19.9%、15.6%の確率が与えられていたが、14%に統一。ワースト4位のチームの確率も12.5%とほとんど差がなくなる。この改革により、ロッタリー時の悲喜劇は緩和されるのか、それとも……。

文●大井成義

※『ダンクシュート』2018年3月号掲載原稿に加筆・修正

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