『日本女子オープン』と『JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ』を制し、賞金ランキング3位(7072万2208円)で20年を終えた原英莉花。14試合の出場ながら、36試合出場した19年(7076万9927円)と獲得賞金額はほぼ変わらない。大きく成長した1年となったが、それを支えたものの一つが、現在使用している3本のウェッジだ。ミズノオリジナルのプロトタイプで、ロフトは48、52、58度となっている。

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 原といえばジャンボ尾崎の愛弟子として知られているが、15歳で入門した当初、ドライバーショットには光るものがあったものの、アプローチに関しては下手だと言われていた。バリエーションが少なく、ポンと上げるようなアプローチしか打てなかったという。そんな原にジャンボが与えたのが、マスダゴルフM425のウェッジだった。52度と58・5度の2本を渡されると同時に、低く打ち出してスピンが効く打ち方も教わり、少しずつ原のアプローチは上達していった。
  ジャンボのウェッジといえば、88年にブリヂストンから発売されたJumboMTNⅢプロモデルを思い浮かべる人もいるだろう。当時国内ツアーで最強だったジャンボが使用していることもあったが、グースネックのウェッジはアベレージゴルファーにも人気で大ヒット商品となっていた。M425は明らかにその流れを汲んでおり、しっかりとグースが入っていた。グースネックとはシャフトに対してリーディングエッジが少し後方にくるネック形状のことをいう。

 プロに転向してからも同タイプのウェッジを使い続けていた原だが、これを黙って見ているわけにいかなかったのが、用品契約を結んでいるミズノだ。何としてでも原に使ってもらおうと、19年から原に合わせたウェッジ作りを始める。M425を参考にデザインされたが、出来上がってみるとフィーリングが明らかに違っていた。同社ではグースネックのウェッジをあまり製作していなかったこともあり、何度も試行錯誤を繰り返したが、満足のいく仕上がりにはならなかった。そんなやりとりを横目に見ていたジャンボが、つい重い腰を上げる。「どれ、ちょっと貸してみろ」と、自らヘッドを削り始め、アドバイスをするようになったのだ。
  その後、担当者とジャンボの間で何度もやりとりがあり、ついにゴーサインが出で完成したのが現在使用しているウェッジだ。

「アプローチに関しては、ウェッジが合い始めたのが私にとっては大きくて、バンカーショット、フェアウェイ、ラフからのアプローチで自分の距離感を出せるようになったのが強みです。ウェッジがマッチしてから自信を持ってボールを打てるので、試合中でもいいプレーができるようになったと思います」と語るほど、原の信頼も厚い。
  実際、原の部門別記録を見ると、リカバリー率が19年は53・6%(65位)だったのが、20年は60・8%(41位)にまで上がっている。サンドセーブ率も33・1%(82位)から52・6%(14位)へ。パーセーブ率は84・8%(31位)から85・3%(20位)へと軒並みアップした。優勝した『日本女子オープン』や『JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ』では、勝負どころでチップインバーディを奪う場面もあり、失礼な話だが、素人目に見ても明らかに昨年よりアプローチの技術が上がっていた。

 師匠のジャンボはボールを遠くへ飛ばすだけでなく、アプローチでも群を抜いた技術を持っていたからこそ、他を圧倒する強さを見せた。原が今以上に結果を残すためには、パットを含めたショートゲームをさらに磨く必要がある。当然、そのことは本人も理解しているだけに、このオフは徹底した練習を行なうだろう。切れ味鋭いショットにショートゲームの安定感が加わったとき、賞金女王のタイトルも見えてくるのではないか。

文●山西英希
著者プロフィール/平成元年、出版社に入社し、ゴルフ雑誌編集部所属となる。主にレッスン、観戦記などのトーナメントの取材を担当。2000年に独立し、米PGAツアー、2007年から再び国内男子、女子ツアーを中心に取材する。現在はゴルフ雑誌、ネットを中心に寄稿する。

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