2020年度のJRA賞受賞馬選考委員会から6日、各賞が発表された。注目の年度代表馬には、史上初となる芝のGⅠ・9勝という偉業を成し遂げたアーモンドアイ(牝6歳/美浦・国枝栄厩舎)が選出された。注:馬齢の表記は今年のものに統一。

 JRA賞は記者クラブ所属の記者(クラブ所属歴3年以上、会友を含む)の投票によって決められるもので、3分の1以上の票を得た1位馬が受賞し、3分の1に達しなかった場合は選考委員会が授賞馬に関する審議を行う。2020年度の投票総数は283票だった。

 ともに無敗で三冠制覇を達成したコントレイル(牡4歳/栗東・矢作芳人厩舎)の最優秀3歳牡馬、デアリングタクト(牝4歳/栗東・杉山晴紀厩舎)の最優秀3歳牝馬授賞は満票で決定。281票を獲得して最優秀4歳以上牝馬に選出されたアーモンドアイを加え、この年にGⅠ・3勝を挙げた”3強”でタイトルを争ったが、次々と中央競馬の歴史に刻まれる記録を残し続けたアーモンドアイが、2位で44票のコントレイルらを抑え、史上8頭目となる複数回(2018年に次ぎ自身2度目)の年度代表馬に輝いた。やはり3頭が直接対決を果たして”史上最大の決戦”とまで呼ばれた天皇賞(秋)で年下の2頭を降したことが決め手となったのは間違いない。
  2006−2007年にディープインパクトが連続受賞し、2008年にアドマイヤムーンが選出されて以降、中央競馬の潮流は大きく変わった。2008−2009年のウオッカを皮切りに、ブエナビスタ、ジェンティルドンナ(2回)、リスグラシューと、牝馬が牡馬と互角以上の授賞馬を出している。アーモンドアイの2度目の授賞を聴いても、もう誰も驚かない。そんな時代になった…そんな思いを強くするような結果であった。

 チュウワウィザード(牡5歳/栗東・大久保龍志厩舎)が選ばれた最優秀ダートホース部門以外は極めて順当な結果となったが、その他に目を引いたのは、クロノジェネシス(牝5歳/栗東・斉藤崇史厩舎)が特別賞を受賞したことだ。
  JRA賞特別賞は常設の部門ではなく、特別に表彰すべき対象が存在した場合にのみ臨時に設けられるもの。古くはハイセイコー(73年)、テンポイント(78年)、オグリキャップ(89年)から、天皇賞(秋)と香港でGⅠレース二つを制した2016年のモーリスなど、常設の部門賞は受賞できなかったものの、それに比肩する優秀な成績を残したり、ファンに大きな支持を受けた馬に対して”救済措置的”に与えられるという印象が強い。

 クロノジェネシスの2020年の成績を振り返ると、宝塚記念、有馬記念という二つのビッグタイトルと京都記念(GⅡ)を制したほか、GⅠの大阪杯で2着、天皇賞(秋)で3着という、ふだんの年であれば最優秀4歳以上牝馬はもちろん、年度代表馬争いに加わっても不思議がない秀逸な内容である。選考委員会による今回のクロノジェネシスの選出には大いに拍手を送りたい。
  また、JRA史上二人目となる通算1500勝を達成した藤沢和雄調教師(69歳/美浦)にも特別賞が授与された。

 アーモンドアイがジャパンカップの勝利を最後にターフを去り、最優秀4歳以上牡馬を受賞したフィエールマン(牡5歳/美浦・手塚貴久厩舎)も天皇賞(秋)ののちに脚部の故障が判明して引退、種牡馬入りした。中央競馬シーンにも着々と世代交代の波が押し寄せている。

 迎えた2021年。クラシック戦線はすでに活発化し、GⅠシーズンの開幕も、もうそんなに遠いことではない。また楽しみな春が来る。

文●三好達彦(フリーライター)